■失われゆく沖縄の「ぬちぐすい」
松本料理学院では沖縄の伝統的な料理を「琉球料理」と位置づけ、カリキュラムに琉球料理コースを設けています。それは、食の欧米化によって失われてゆく琉球料理を、家庭で作ってもらいたいからです。
実は最新の調査によると、沖縄県の健康寿命(平均寿命のうち、介護を受けたり寝たきりになったりせず、健康に日常生活を過ごせる期間)は、男性はなんと全国最下位、女性は46位であることが判明しています。
松本先生はアメリカ統治下時代の影響で、ファストフードや脂肪の多い食事習慣が根付き、反対に島野菜を多用した伝統的な琉球料理を食べなくなったことが、その一因だと考えています。その上で、沖縄の食が置かれている現実を強く憂慮しています。
「琉球料理の本質は美味しさもさることながら、食べて健康になるという医食同源的な考え方です。沖縄の言葉では、“命薬(ぬちぐすい)”といいます。文字通り、食は命の薬なのです」
沖縄の人が危機感を持って、現在の食生活を改善する必要がありますが、果たしてこの先どうなることでしょう。食をめぐる沖縄の未来が明るいものとなることを、切に願うだけです。
文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。