取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

人気店の厨房を出て4年。今、自らの食事は1回9品目を念頭に献立を立てる。この食事法で、第二の人生を歩み始めた。

【斉風瑞さんの定番・朝めし自慢】

 前列中央から時計回りに、白粥、干し大根入りニラ玉、春キャベツと干し海老の炒め物(にんにく)、しらす干し、ピーナッツ、豚バラ肉の梅干し煮(にんにく)。白粥は米1に対して水20ぐらいの三分粥。干し大根は台湾の知人が送ってくれるものを常備していて、水で戻して塩抜きをしてから使用。薬膳では、ニラには免疫力を高める効果があるという。春キャベツに代えて白菜を炒め物にすることもある。豚バラ肉の梅干し煮は『ふーみん』の人気メニューで、通称「梅豚」。昨夜の残りが朝食にも登場する。

前列中央から時計回りに、白粥、干し大根入りニラ玉、春キャベツと干し海老の炒め物(にんにく)、しらす干し、ピーナッツ、豚バラ肉の梅干し煮(にんにく)。白粥は米1に対して水20ぐらいの三分粥。干し大根は台湾の知人が送ってくれるものを常備していて、水で戻して塩抜きをしてから使用。薬膳では、ニラには免疫力を高める効果があるという。春キャベツに代えて白菜を炒め物にすることもある。豚バラ肉の梅干し煮は『ふーみん』の人気メニューで、通称「梅豚」。昨夜の残りが朝食にも登場する。

基本的に1日2食で、ブランチは午前11時頃。夕食は午後6時前後で、それ以降は寝るまでお腹に何も入れません」と、ブランチの食卓に着く斉風瑞さん。酒は嗜まないが、甘党で3時のおやつを欠かさない。

基本的に1日2食で、ブランチは午前11時頃。夕食は午後6時前後で、それ以降は寝るまでお腹に何も入れません」と、ブランチの食卓に着く斉風瑞さん。酒は嗜まないが、甘党で3時のおやつを欠かさない。

東京・南青山に、オリジナルの“ねぎワンタン”や“納豆チャーハン”で評判の店がある。中華風家庭料理『ふーみん』である。オーナーシェフとして45年間厨房に立ち続けた斉風瑞さんが語る。

「“ねぎワンタン”はある日、イラストレーターの和田誠さんが“ねぎそばの長ねぎをワンタンの上にのせてみたら”、と提案してくださったことから生まれた料理。“納豆チャーハン”も、炒めた納豆が美味しいという常連様のひと言から誕生しました」

昭和21年、台湾人の両親のもと東京に生まれた。高校卒業後、美容師として8年頑張ったが、接客のむずかしさから断念。そんなある日、友人を招いて家庭料理をふるまったところ、“こんな美味しい料理を私たちだけで食べるのはもったいない”という嬉しい評価。これが、転機となった。

昭和46年、東京・神宮前に中華風家庭料理『ふーみん』を開店。25歳だった。当時の東京は原宿や渋谷を中心に、新しい文化が発信されていた時代。『ふーみん』は、この地域に集う若き文化人らの憩いの場となっていった。

昭和61年、現在の南青山に移転。玄関のドアには、最初の店から贔屓にしてくれたイラストレーターの灘本唯人さんのロゴと、五味太郎さんのにんにくの絵が並ぶ。

幾多の客から愛された『ふーみん』だが、70歳を機に、店長だった甥に店を任せることを決意。第二の人生を選んだのである。

昭和61年、東京・南青山に移転。再スタートを切った。手前が40歳の風瑞さんで、右3人は高校時代の同級生。 中華風家庭料理ふーみん/東京都港区南青山5-7-17 小原流会館地下1階 電話:03・3948・4466

昭和61年、東京・南青山に移転。再スタートを切った。手前が40歳の風瑞さんで、右3人は高校時代の同級生。
中華風家庭料理ふーみん/東京都港区南青山5-7-17 小原流会館地下1階 電話:03・3948・4466

9品目健康法を実践

起床後、ブランチまでの間に食べるひと皿が、韓国海苔を挟んだスライスチーズ。このひと皿で9品目の中の海藻と乳製品を摂取できる。

起床後、ブランチまでの間に食べるひと皿が、韓国海苔を挟んだスライスチーズ。このひと皿で9品目の中の海藻と乳製品を摂取できる。

厨房を出て4年。多忙を極めた“ふーみんママ”時代と違って、今はゆったりと時間が流れる。朝食は、母の味を受け継いだ白粥に数種のおかずが並ぶが、

「バランスよく食べることが健康の基本。献立は、お客様で美容体育研究家の和田要子さんから教わった9品目をヒントに考えます」

和田式食事法の9品目とは、肉・魚・貝・海藻・卵・乳製品・野菜・豆類・油脂のこと。1食ごとにこの9品目を食べることで栄養のバランスが保たれ、無理のないダイエットもできるというものだ。

青菜のお浸しは醤油洗いし、「にしきごま」をふる。「にしきごま」は京都・錦に しきいちば市場の『島本海苔乾物』(電話:075・231・1887)製で、南瓜・人参・ほうれん草・トマト・梅肉の各パウダー、青のり粉と抹茶で着色された彩りのいい胡麻。塩味がついている。

青菜のお浸しは醤油洗いし、「にしきごま」をふる。「にしきごま」は京都・錦にしきいちば市場の『島本海苔乾物』(電話:075・231・1887)製で、南瓜・人参・ほうれん草・トマト・梅肉の各パウダー、青のり粉と抹茶で着色された彩りのいい胡麻。塩味がついている。

手作りの新玉たま葱ね ぎと新生しようが姜の酢醤油漬け。冷奴にのせる他、素麺のつゆやしゃぶしゃぶのたれにしても美味。作り方は酒100mlを煮切り、火を止めて酢50mlと醤油250mlを加えて粗熱を取る。これに新玉葱1個、新生姜40gの各せん切りを漬ける。

手作りの新玉葱と新生姜の酢醤油漬け。冷奴にのせる他、素麺のつゆやしゃぶしゃぶのたれにしても美味。作り方は酒100mlを煮切り、火を止めて酢50mlと醤油250mlを加えて粗熱を取る。これに新玉葱1個、新生姜40gの各せん切りを漬ける。

「今朝は貝が入っていないので、代わりに調味料としてオイスター(牡蠣)ソースを使っています」

9品目健康法で新たな道を歩む。

1日ひと組だけのサロンのような おもてなし空間をもちたい

時間に余裕ができた今、96歳になる実母の介護をしながら、食の知識の吸収と実践に努めている。

「年齢を重ねるにつれて美味しいだけではない、栄養学的にも体にいい料理を考えるようになった。美味プラス滋味とでもいうのかしら。だから、先に薬膳を学んでいた妹と一緒に私も勉強を始めた。学んだことはすぐ日替わりランチに取り入れました」

引退した直後は、客の要望に応えて時々『ふーみん』の厨房に立った。小柄な風瑞さんには、45年間愛用の中華鍋が重く感じられるようになり後進に。撮影/キッチンミノル

引退した直後は、客の要望に応えて時々『ふーみん』の厨房に立った。小柄な風瑞さんには、45年間愛用の中華鍋が重く感じられるようになり後進に。
撮影/キッチンミノル

今は薬膳だけではない。2年前からはフレンチジャポネーゼ『鳴神』の料理教室にも通い始めた。

「『鳴神』さんの箸で食べるフランス料理が気に入って、以前からお邪魔していたけれど、料理教室があると聞いて申し込んだの。これがとても楽しいの」

今の楽しみは月に1回、フレンチジャポネーゼ『鳴神』の料理教室(電話:03・6447・4866)に通うこと。和とフレンチの融合を追求している鳴神正量シェフとは共鳴するところが多く、数々の発見があるという。毎回、生徒は10人前後と和気藹々の料理教室だ。

今の楽しみは月に1回、フレンチジャポネーゼ『鳴神』の料理教室(電話:03・6447・4866)に通うこと。和とフレンチの融合を追求している鳴神正量シェフとは共鳴するところが多く、数々の発見があるという。毎回、生徒は10人前後と和気藹々の料理教室だ。

学ぶ貌と、教える貌。今は料理研究家として教室や出張料理などでも活躍する。

「私は“食”を通して人と繋がってきた。食べるって大事なこと。第二の人生も出会う人すべてに、食べることで元気を与えたい」

目標は、1日ひと組だけの客をもてなすサロンのような食空間を作ること。その時を、そのおもてなし料理を待つ人は多い。

不定期だが、『アトリエシュシュ』(電話:03・3429・5889)の若手シェフ・野村裕亮さんと組んで、料理教室を開いている。仔羊や鴨肉など、テーマを決めて料理を紹介。フレンチと中国料理を同時に学べるのが特徴だ。

不定期だが、『アトリエシュシュ』(電話:03・3429・5889)の若手シェフ・野村裕亮さんと組んで、料理教室を開いている。仔羊や鴨肉など、テーマを決めて料理を紹介。フレンチと中国料理を同時に学べるのが特徴だ。

著書『青山「ふーみん」の和食材でつくる絶品台湾料理』(小学館)。食べなれた和食材を生かした台湾風家庭料理を紹介。ねぎワンタン、豚バラ肉の梅干し煮、納豆チャーハンなどの3大伝説メニューのレシピも公開している。

著書『青山「ふーみん」の和食材でつくる絶品台湾料理』(小学館)。食べなれた和食材を生かした台湾風家庭料理を紹介。ねぎワンタン、豚バラ肉の梅干し煮、納豆チャーハンなどの3大伝説メニューのレシピも公開している。

取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

※この記事は『サライ』本誌2020年7月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。

 

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