30代~40代前半のプレ更年期や、40半ば~50代の更年期の女性は「なんとなくの不調」「ちょっとした違和感」を抱くことが多くなります。なかでも多くの人が困っている悩みは更年期のイライラの症状です。
実は、その不調には漢方薬が役立つことをご存知でしたか?
私の悩みにも漢方薬が役立つのか知りたい! 根本解消する方法が知りたい!
そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。
今回は「更年期のイライラ」の原因や対処法について、あんしん漢方の薬剤師で、漢方薬製剤の開発研究に携わる碇純子さんに教えてもらいました。
Q.止まらないイライラ、家族にもつらく当たってしまい……これって更年期?
紗代さん、50歳からご質問をいただきました。
「最近、ささいなことでもイライラが止まりません。本当に大したことでないのに怒ってしまい、主人や娘に感情をストレートにぶつけて、後悔することもたびたびです。
また、怒りの感情だけでなく、将来のことを考えると漠然とした不安に襲われます。
昔は穏やかな性格で、こんなことなかったのに……。自分でも戸惑うくらい、感情の起伏が激しくて困っています。
主人には『更年期症状じゃないの?』と言われたのですが、更年期ってこんなに精神的な変化をもたらすのでしょうか?」
ご質問ありがとうございます。更年期のイライラの症状は周囲からの理解を得づらい面があるので、つらいですよね。
きちんと適切な治療やセルフケアを行えば、更年期のイライラの症状は緩和を目指せます。まずは、更年期のイライラの原因をしっかり把握して対処しましょう。
更年期のイライラの原因
更年期のイライラの主な原因は以下の3つです。
1.セロトニン不足
脳内物質のセロトニンが不足すると精神が不安定になります。
セロトニンは通称「幸せホルモン」と呼ばれ、抗ストレス作用があります。また、セロトニンの効果はそれだけでなく、平常心を保ち、心を落ち着ける作用も。
セロトニンが足りなくなることで感情の起伏が激しくなり、些細なことで怒ったり、意欲が低下したりと、様々な不調の原因になります。
2.ストレス
様々な要因により、心身に負荷がかかっている状態だと、副腎皮質ホルモンが増加。血流や心拍数をアップさせる交感神経が優位な状態になり、これはイライラの原因になります。
ストレスの要因は仕事、家庭問題、病気、環境など多種多様ですが、とくに慢性的なストレスの要因があると心身に大きな影響を及ぼします。
3.ホルモンバランスの崩れ
閉経前後の約10年間を更年期といいますが、更年期はホルモンバランスが崩れる時期です。とくに女性ホルモンのエストロゲンの急減は、心と体に大きな影響を与えます。
エストロゲンの分泌が不安定になると、自律神経が乱れ、怒りやすい、感情がコントロールしにくいという状況が起こるのです。
また、エストロゲンの低下は寝付きの悪さ、睡眠不足などの別の不調の原因にもなり、それがイライラを引き起こす原因になることがあります。
ホルモンバランスの崩れが原因で起こるイライラは一度診療を
ホルモンバランスの崩れの疑いがある場合は、まずは病院を受診しましょう。
一般的に、更年期症状の疑いがある場合は、まずは婦人科を受診します。かかりつけ医がいるなら相談してもいいでしょう。
もしイライラの原因が更年期症状だった場合、ホルモン補充療法や、生活習慣の改善などを行い、不調を緩和していきます。
更年期のイライラを改善するセルフケア
更年期のイライラの改善には、生活習慣の改善も有効です。代表的な4つの方法についてご紹介します。
1.バランスのよい食事
食事バランスを見直し、主食、主菜、副菜など、まんべんなく様々な栄養を摂取できる食事を心がけましょう。
とくに、女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンは積極的に摂取しましょう。大豆イソフラボンは、納豆、豆腐、豆乳など、一般的な大豆製品に多く含まれています。
2.睡眠時間の確保
精神状態を安定させるには十分な睡眠をとることが大事です。人によって個人差はありますが、7時間前後が適切な睡眠時間といわれます。
また、毎朝きちんと太陽を浴びて、体内時計を切り替えることも大事です。睡眠ホルモンのメラトニンの材料になるセロトニンの分泌を活発にさせましょう。
体内時計をリセットするには2,500ルクスの光が必要です。曇りの日でも、屋外なら十分必要な光は得られ、セロトニン分泌の効果を期待できます。
3.ウォーキング
習慣的な運動は、生活習慣病の予防だけでなく、ストレスの発散にもなります。毎日少しの時間でもウォーキングを行えば、気分が晴れ、健やかに過ごせるでしょう。
室内でランニングマシンを使うよりも、新鮮な空気を吸い、景色の変化を楽しめる屋外での運動のほうが気分転換になります。
また、前述のように、外で太陽の光を浴びることは、体内時計のリズムを保つことにもつながります。
4.漢方薬を試す
「更年期のイライラを根本から改善したい」
「いろいろと試したが症状が改善しない」
「西洋薬は一度飲み始めたら、やめられないのではないかと不安」
そんな方には、医薬品として効果が認められている漢方薬がおすすめです。
漢方薬は自然にある植物や鉱物などの「生薬」を組み合わせて作られているため、 一般的に西洋薬よりも副作用が少ないといわれています。
また、漢方薬が目指すのは苦痛を和らげるための対症療法ではなく、根本的な解決です。体質の改善に働きかけることのできる漢方薬は、「同じ症状を繰り返したくない」という思いに応えてくれます。
「バランスの取れた食事や運動などを毎日続けるのは苦手」という方も、症状や体質に合った漢方薬を毎日飲むだけなので、手間なく気軽に継続できます。
漢方薬でイライラの解消をするには「ホルモンバランスの乱れやストレスによる自律神経の乱れを整える」「鎮静作用で心を鎮める」「消化吸収機能を高め、心と体を元気にする」といった作用が期待できるものを使用しましょう。
更年期のイライラ対策におすすめの漢方薬
・加味逍遙散(かみしょうようさん):緊張を緩め、精神の高ぶりを抑えます。のぼせ感がある方に適しています。
・柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):たまった熱を冷まし、動悸を改善します。イライラや不安のほかに、不眠傾向の方にも向いています。
ただし、漢方薬はご自身の体質に合ったものを選ぶことが大切です。体質に合っていない場合は、効果が出ないだけでなく、副作用が起こることがあります。
購入時には、できる限り漢方に精通した医師や薬剤師等にご相談ください。
「お手頃価格で不調を改善したい」という方には、医薬品の漢方薬がおすすめ。スマホで気軽に相談できる「あんしん漢方」のような新しいサービスも登場しています。
AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」サービスでは、漢方のプロが体質に合った漢方を見極めてくれます。お手頃価格で自宅まで郵送してくれるため、手軽で便利です。
更年期に向き合い、上手に付き合っていく
更年期のイライラは、女性ホルモンのバランスの変化によるものや、セロトニン不足、ストレスなど、様々な原因があります。
更年期は誰にでもやって来るもの。あまり深刻に物事を捉えすぎず、おおらかな気持ちで過ごすことも大事です。
<この記事の監修者>
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イラスト:にゃたり