
日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)

「主食がないと寂しい」と思い込まない
米飯やパン、麺類などの主食は炭水化物です。炭水化物は多糖類で、液体の糖質や、砂糖の二糖類よりも消化に時間がかかるため、血糖値の上昇度合いは比較的緩やかです。
しかしながら、最終的にはすべてブドウ糖に分解されます。
ですから、炭水化物である主食をたくさん摂れば、血糖値の乱高下が起きて疲れるし、糖尿病にもなるし、なにより太ります。
私は、肥満の患者さんをたくさん診てきましたが、ひどく太っている人は、たいてい米飯好きです。甘い物は我慢できても、米飯は食べずにいられない人が多くいます。
彼らもまた、深刻な糖質中毒でしょう。
糖質中毒は、薬物やニコチンの中毒(依存症)と同様、脱出するのが大変です。
太っている人が糖質制限で体重を落としても、リバウンドしてしまうのは中毒だから。
そうした状態にならないためにも、日頃から主食の摂りすぎには注意が必要です。
ちなみに、お茶碗1膳の米飯(約150グラム)には、角砂糖にして約13個分に相当する53.4グラムの糖質が含まれています。つまり、しっかり働くためのエネルギー源として考えても、米飯は1膳も食べれば充分なのです。
ところが、実際には、ランチの定食でおかわりしたり、大盛りを注文したりする人がたくさんいます。最初は「そのほうがお得だから」くらいの軽い気持ちであっても、いつのまにか、「1膳では物足りない体」となっていきます。
その原因について誤解してならないのは、胃が広がったからではなく、糖質中毒に陥ったからという点。つまり脳がやられているのです。
こうして、大量の炭水化物を日常的に摂っているのが、疲れを溜めやすい人や太っている人の食生活なのです。
とくに、夕食に炭水化物を摂りすぎると、後は寝るだけで脳を使ったり体を動かしたりして糖を消費する機会があまりありません。炭水化物は、できるだけ朝食や昼食に摂るようにしましょう。
お酒を飲む人なら、夕食はつまみ代わりにおかずを食べれば、主食なしでも満足できるはずです。
ただ、お酒を飲まない人たちは、おかずだけだとなんとも物足りない気分になるかもしれません。そんなときに試してほしいのが、主食の「代替品」です。
私の患者さんには、茶碗に豆腐をよそい、白米に見立てて食べている人がいます。
ラーメンや鍋のシメの麺として、シラタキを用いている人もいます。
白米を入れるスペースに、別料金でブロッコリーを入れてくれるお弁当屋さんもあります。実際に、そのブロッコリー弁当は人気があるようです。
ほかにも、カリフラワーなどの野菜、蒸し大豆などを主食代わりにすれば、炭水化物の摂取量を減らせます。
「主食がないと寂しい」と思い込まず、いろいろ工夫して食事を楽しみましょう。
なお、炭水化物を食べるときには、そのまま単体で口にするより、ほかのものと食べ合わせることで、ブドウ糖の取り込みを遅らせることができます。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。

牧田善二/著 四六判208ページ 小学館刊 1650円(税込)
