日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)
100歳を過ぎても元気な人の好物
チョコと赤ワインの健康効果
人類史上、最も長生きしたとされるのが、フランス人女性のジャンヌ・カルマンさんです。1875年2月21日生まれの彼女は、1997年8月4日に122歳で亡くなるまで、寝たきりにもならずハツラツと暮らしていました。
生前の写真を見てみると、車椅子こそ使っているものの、100歳を過ぎてもおしゃれで快活に過ごす様子が伝わってきます。
南仏アルルに在住していたため、生前のゴッホに会ったことがあるというくらいですから、その長寿のほどがわかるでしょう。
あまりにも健康で長生きだったので、晩年のカルマンさんについて「娘が本人になりすましていたのではないか」という疑念が囁かれたことがあります。しかし、フランス国立保健医学研究所の専門家たちがデータを精査し、本人であることが確認されています。
このカルマンさんが、大好きでよく口にしていたのが、赤ワインとチョコレートです。チョコレートは1週間に1キロ食べたこともあったそうです。
もう一人、あと少しで120歳というところまで生きたアメリカ人女性、サラ・ナウスさんもチョコレート好きで有名でした。
また、長寿者が多い地域として有名なイタリアのサルデーニャ島には、肉体労働をこなしながら一日に1リットルものワインを飲む元気な高齢者がたくさんいます。
赤ワインにもチョコレートにもポリフェノールという健康にいい成分が豊富に含まれています。そうした成分が、疲れ知らずの体をつくり、健康長寿に寄与していることは確かでしょう。
私たちの体は、食べたものでつくられ、食べたもので変わっていきます。
口から入れたものは、胃に送られて消化され、腸を経由して便として肛門から出てきます。その過程で私たちは、「美味しかった」とか「お腹がいっぱいになった」という満足感を得ます。
しかし、そうした満足感のためだけに食事をしていたのでは、いつまで経っても慢性疲労から抜け出せません。
大事なのは「生化学」です。嚙み砕いて言うならば、食べたものがどういう成分に分解され、血液を通して体の中に吸収されていくかということです。
ブドウ糖は、エネルギー源としては大事だけれど、現代人が余らせすぎている成分の代表格です。
そして、余れば血糖値の乱高下を呼び、疲れを促進してしまう成分でもあります。
疲れ知らずの丈夫な体をつくるのに、食事の変革は必須で、それは、いくつになってからでも遅すぎるということはありません。
食事を変えれば最後まで人生を謳歌できる
たとえば、血液中のタンパク質は、数分から長くても数か月で入れ替わります。悪性物質の入れ替わりが行われた後に、AGEという悪性物質を溜めないよう食生活に気を配れば、血管が脆く硬くなることを阻止できます。
血管の状態が良くなれば、全身に栄養が行き渡り、内臓から皮膚まで若返らせることが可能です。
一方で、なにも手を打たず、おかしな食事を続けていたら、倍速で体の老化は進みます。
みなさんが今「疲れやすい」と感じているのは、食事についてなにも手を打っていないからです。
あるいは、手を打っているつもりでも間違っているからです。
食事を根本から正しいものに変えて、疲れにくい体をつくりましょう。
そういう体を手に入れられれば、カルマンさんたちのように、最後の一日までハツラツと人生を謳歌できるようになるのです。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。