日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)
慢性腎臓病の人の死亡率が跳ね上がる理由
新型コロナの流行時も重症化
厚生労働省が発表している日本人の死因(2019年)について見てみると、1位がん、2位心疾患、3位老衰、4位脳血管疾患、5位肺炎、6位誤嚥性肺炎、7位不慮の事故、8位腎不全となっています(図8参照)。
ここで言う「腎不全」とは、腎臓の血液検査であるクレアチニンが異常値になった状態です。腎不全が進行してクレアチニンが8(mg/dL)以上で透析が必要になります。
それほど慢性腎臓病は怖いのですが、「死因8位ならたいしたことはないじゃないか」と感じる人がいるかもしれません。
しかし、それは誤った見方です。
実は、慢性腎臓病があると、心筋梗塞、脳卒中、がんなどのさまざまな病気に罹りやすくなることや、その進行・悪化を早めることが医学的に明らかになっています。
つまり、慢性腎臓病がある人は、腎不全で亡くなる前に、ほかの病気に罹り進行・悪化させ、命を失っている可能性が高いのです。
実際に、慢性腎臓病になると、それだけで死亡率が4倍跳ね上がることがわかっています。がんや心疾患、脳卒中などを心配するならなおさら、腎臓について注意をはらう必要があります。
また、慢性腎臓病があると、感染症にも弱くなります。
新型コロナウイルス感染症が流行した当初、世界中で多くの命が失われました。そのなかには、著名人も大金持ちもいました。一方で、感染しても症状が出ない人や、治療を受けられなくても軽症で済んだ人がたくさんいました。
慢性腎臓病は見逃されがち
この違いはどこにあるのかについて、今後も研究は進むでしょう。
ただ、「持病があるかないか」が、一つの大きな分かれ目であったことは今のところ間違いないようです。
新型コロナに限らず、ほとんどの感染症において、「高齢であること」と「持病があること」は重症化の大きな要因となります。
では、「持病」とは具体的にどんなものを指すのでしょうか。
新型コロナの場合、テレビの解説などでは、真っ先に糖尿病や高血圧が危険因子として指摘されていました。
たしかに、糖尿病や高血圧の患者さんに重症化の傾向が高く見られました。
しかし、私は糖尿病や高血圧自体よりも、むしろ糖尿病や高血圧によって腎臓の働きが悪くなっていることこそが重症化を進めたと考えています。
また、腎臓が働かなくなって透析を受けている患者さんたちは、最大のリスクにさらされました。新型コロナが2類から5類に移行した後も、透析患者さんが感染した際の致死率は約2%と非常に高くなっています。
このように、非常に恐ろしい慢性腎臓病は、最初はなんの症状もありません。
だからこそ、多くの人が「疲れが溜まっているんだろう」などと見逃してしまうことが多いのです。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。