日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)
痛くも痒くもない糖尿病の何が怖いのか
合併症で死に至る病気を患う
糖質過多の食生活を送っていれば、血糖値が上がり「糖尿病」になりやすいというのは想像がつくでしょう。現在、日本には約1000万人の糖尿病患者がおり、その予備群も含めると2000万人を突破すると言われています。
予備群の段階で適切な手を打てば健康体に戻ることも可能ですが、多くの人が「血糖値が高い」と指摘されても放置します。
それどころか、明らかな糖尿病で「今すぐ治療が必要ですよ」と言われても、病院に行かない人がたくさんいるのです。
というのも、糖尿病自体は痛くも痒くもないからです。血糖値が300を超えるくらいから喉の渇きなどを感じ、500を超えてしまうと意識障害などを起こして命に関わります。しかし、200くらいまでならなんの自覚症状もありません。
だからといって治療しないでいると、糖尿病は確実に進行し、やがて合併症を起こします。糖尿病が怖いのは、糖尿病自体ではなく合併症です。
主な糖尿病合併症として、網膜症、神経障害、腎症などがあります。
網膜症がひどくなれば失明してしまいます。
神経障害によって痛みを感じなくなれば、壊疽や心筋梗塞などが起きていても気づかず悪化させてしまいます。
しかし、それらに増して腎症は深刻です。網膜症や神経障害は予防対策も進んでいて、重症になる患者さんは減っていますが、逆に腎症は重症者が激増しています。
今、日本では透析を必要とする慢性腎臓病の患者さんが30万人を超えていて、そのうち約4割が糖尿病の合併症によるものです。
透析とは、腎臓がまったく働かなくなってしまった患者さんの血液を専門の器機に通すことで、老廃物や毒素を排出する治療です。糖尿病の合併症などで慢性腎臓病が進行すると、透析が不可欠となります。さもなければ、老廃物や毒素が溜まって、即、命に関わるからです。
しかしながら、透析はとても過酷な治療です。1回5時間ほどかかり、その間ずっと腕に針を刺し、横になっていなくてはなりません。以前は1回4時間ほどで終えていたものの、少しでも長く時間をかけたほうが患者さんの体にとっていいことがわかり、今は5時間がスタンダードになっています。
ひとたび発症すれば健康体には戻らない
しかも、そうした治療を1日おきに週に3回受けねばなりません。かつ、この治療は、一度始めたらやめることはできません。
当然、仕事や家事を今までのようにやるのは不可能だし、旅行にもほとんど行けません。それほど大変な思いをしても、透析に入ると4割くらいの患者さんが5年以内に亡くなってしまいます。
こうした事態に繫がりかねない糖尿病は、みなさんが想像しているよりもずっとやっかいな病気です。
糖尿病をひとたび発症すると、糖質への感受性コントロールがきかなくなります。少し糖質を摂っただけで血糖値が急激に上がってしまい、もう健康な状態には戻りません。
糖質制限をすれば、そのときの血糖値は正常に保たれますが、それは糖尿病が治ったのではありません。糖尿病は一度罹ったら、ずっとつきあっていかなければなりません。
また、前述した3つの合併症だけでなく、糖尿病があるとがんや心筋梗塞、脳卒中、認知症、骨粗鬆症、歯周病などのリスクが上がることがわかっています。
ですから、糖尿病には罹らないのが一番。そのために、自分の血糖値の状態と、そこからくる疲労について無関心でいてはなりません。
血糖値の乱高下が理由の慢性疲労があるのに、その根本原因に気づかずにいたらどうでしょう。「疲れを取るため」と、さらに甘い物を食べたり、エナジードリンクを飲んだりすることでしょう。
その結果、本格的な糖尿病になり、やがてそれをひどくして腎臓をダメにしかねません。
慢性疲労の原因を正しく理解し、対処することが絶対に必要なのです。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。