日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)
糖質過多は老化や病気にまっしぐら
老化を促進するAGEの正体
糖質過多の疲れる食生活は、老化を促進します。
米飯やパン、麺類など炭水化物の多糖類も、砂糖のような二糖類も、消化の過程で全部ブドウ糖に分解されます。
ブドウ糖は、果物に多い果糖と並んで単糖類と呼ばれます。
この単糖類は、体の中のタンパク質とくっついて変性することがわかっています。その作用を「糖化」といいます。
そして、糖化によってAGEという極めて悪性の老化促進物質がつくられるのです。
私たちの全身の細胞には、AGEをキャッチするRAGEという「AGEの受容体」があるのですが、AGEがRAGEに結合すると、その部位には炎症が起き、活性酸素の発生も盛んになります。
活性酸素が発生すれば、細胞などが傷つき、機能が阻害される「酸化」が進行します。
実は、糖化と酸化は同時に起きる反応だということが、最近の研究でわかってきました。そのため、別々に扱うのではなく「酸化糖化反応(glycoxidation)」と呼ぶべきだという提唱がなされています。
こうした酸化糖化反応は、体を内側から疲れさせ、あちこちに慢性の炎症を持続させます。そうした変化は体のどこでも起きますが、目で見てわかりやすいのは、皮膚の疲れの象徴であるシワやシミです。
年齢を重ねると皮膚にハリがなくなってシワやシミが増えるのは、老化促進物質でもあるAGEがたくさんつくられているからです。
皮膚に限らず、筋肉も血管も内臓も骨も……私たちの体は、ほぼタンパク質でできています。
つまり、ブドウ糖が余分にあれば、あちこちでAGEがつくられる環境にあり、酸化糖化反応が起き、慢性炎症がどこでも生じるわけです。
慢性炎症は急性の炎症と違い、痛みや腫れなどの自覚症状がほとんどありません。
しかし、慢性炎症が持続することが、がん、心筋梗塞、脳卒中、アルツハイマー病、糖尿病、腎臓病、動脈硬化、骨粗鬆症などの恐ろしい生活習慣病を引き起こすことが明らかになっています。
ですから、糖質過多の食生活は、疲労を溜めるだけでなく、老化まっしぐらであり、あらゆる命に関わる病気への近道となるのです(図5参照)。
なお、AGEは糖質の多いものを食べることで体内でつくられるだけでなく、AGEを含んだ食品を食べることで外からも取り込んでしまいます。
とくに、高温で食材を調理することでAGEが増えることがわかっています。
***
世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。