日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)
血糖値の乱高下で体がボロボロになる
命に関わる低血糖の大問題
血糖値は上がりすぎてもいけないけれど、下がりすぎるのも大問題です。
図2に、「低血糖」と呼ばれる、血糖値が下がりすぎたときの主な症状を載せたので見てください。
血糖値が60(mg/dL、以下同)を切ると空腹感やだるさ、動悸、不安感など心身の不快な症状が現れ始め、45くらいから集中力が低下したり、視覚や言語にもおかしなところが出てきたりします。30を切れば昏睡やけいれんなどを起こし、命に関わります。
さすがにみなさんは30を切るようなことはないでしょうが、60より低くなる事態は、たびたび生じている可能性があります。ただ、それに気づかず、「疲れたな」「だるいな」で済ませているだけなのです。
こうした危ない低血糖は、意外なことに高血糖が引き起こします。
血糖値が異常に上がってしまったために、インスリンがたくさん出て、今度は異常に下がるのです。この症状を「反応性低血糖」と呼びます。
本来、血糖値は70から140くらいの範囲に留まっているのが理想です。
そして、なるべく乱高下しないようにするのが、疲れ知らず、病気知らずの体を保つ秘訣です。
しかし、健康診断の血液検査では「正常値」に収まっている人でも、実は血糖値が激しく変動しているケースが多々あります。健康診断のときは空腹だから低いけれど、食後にドカンと上がっているのです。これを「食後高血糖」と言いますが、測定していないからわからないわけです。
わからないままに、糖質過多の食事をして血糖値を大きく上げ、その反応として今度は血糖値を大きく下げる。このように、「食後高血糖」と「反応性低血糖」を繰り返して体をボロボロにしているのが現代人です(図3参照)。
なお、食後高血糖は、「AGE」(終末糖化産物)という悪性物質の産生を促すため、さらに疲れやすくなり、さまざまな病気を引き寄せてしまいます。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。