腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛では、腰からお尻、脚にかけて痛みやしびれなどの症状があらわれます。
このような症状は、股関節周辺や深部の筋肉をほぐすことで改善できる場合があります。
今回は自分で簡単にできる方法を解説します。
腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛では様々な症状があらわれますが、腰からお尻、脚にかけての痛みやしびれなどはその典型です。
これらの症状が出ると、歩くことが非常に辛くなったり、立っているだけでも痛んだり、ひどい場合は寝ていても痛みやしびれに悩まされたりします。
いずれにしろ辛い症状に違いはありません。
痛み止めの薬や湿布などで症状が緩和すればいいのですが、なかなか効かないことも多いのが実情です。
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)には、このような症状でお悩みの方がたくさん訪ねてこられますが、股関節周囲の筋肉をほぐすことでこれらの症状が改善することがあります。
専門家の施術などを受けることができるのならベターですが、自分でほぐして改善することも可能です。
その方法を少しくわしく解説していきます。
痛みやしびれの原因は筋肉
腰から足にかけての痛みやしびれの原因には様々なものがありますが、股関節周囲の筋肉の緊張がその原因になってしまうことがあります。
次の2つの画像を見てください。
【中殿筋のトリガーポイントと症状の好発部位】
【小殿筋のトリガーポイントと症状の好発部位】
あなたの痛みやしびれは、これらの図のように赤い部分に出ることが多いのではないでしょうか?
まさに坐骨神経痛の典型的な症状の出方に見えると思いますが、実はこれは中殿筋と小殿筋という股関節の奥の筋肉が原因でおこる、痛みやしびれのあらわれ方の典型的なパターン図です。
これらの図の×印の部分が、発痛点=トリガーポイント(後述)の好発部位で、そこから赤い範囲に痛みやしびれなどの症状があらわれやすくなります。
原因となるトリガーポイントからすごく離れた部位にまで症状があらわれることが特徴で、このために神経痛と誤認されることがあります。
しかし背骨や神経は関係なく、筋肉が原因の症状なのです。
脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの診断を受けた方でも、よくよくみてみると実はトリガーポイントが原因ということは少なくありません。
トリガーポイントとは
中殿筋や小殿筋だけでなく、筋肉は、
■座りっぱなしや立ちっぱなしなど、同じ姿勢が長時間続く
■運動不足、または運動のし過ぎ
■筋力低下
■過労や睡眠不足
■ストレス
などが続くと徐々に緊張してこり固まってしまいます。
そうすると筋肉の中にしこり状の発痛点=トリガーポイントができてしまい、そこから強い痛みやしびれなどの症状が出てきます。
症状が広範囲であったり離れた場所にあらわれたりするため、一見神経痛のような症状に思い、病院でもそのように説明、診断されることが多いのですが、背骨や神経は全く関係なく、筋肉自体からおこる症状です。
このような“発痛点=トリガーポイント”からおこる痛みやしびれの症状を“筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)”といいます。
トリガーポイントについては本連載でもおなじみですが、より詳しくお知りになりたい方は以下のページもご覧ください。
腰痛や坐骨神経痛の原因にもなる「トリガーポイント」とは?【川口陽海の腰痛改善教室 第103回】(https://serai.jp/health/1104848)
トリガーポイントを改善するには
中殿筋や小殿筋のトリガーポイント、つまりこり固まった筋肉が、腰から足にかけての痛みやしびれの原因であれば、そこをほぐすことで改善することができます。
股関節の筋肉をほぐすには様々な方法がありますが、筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)では、テニスボールでほぐす方法をおすすめしています。
以下を参考におこなってみましょう。
硬式のテニスボールをひとつご用意ください。または最近は同じような大きさのマッサージボールが多数市販されていますので、それを使っていただいても大丈夫です。
中殿筋をほぐす
まず中殿筋をほぐす方法ですが、以下の図でおおよその場所をイメージしてください。
図は殿部(お尻)を後ろから見たところです。テニスボールマークの部分が当てたい場所です。
一番上の赤い線が、だいたいベルトのラインくらい、一番下の赤い線がお尻の下のライン、真ん中の線がその中間です。
黒い点線は腸骨稜という骨盤の上側の骨の際のラインです。当てたい場所は、この腸骨稜の骨の際のやや下のあたりとなります。
腰や股関節がつらいと、この辺りをトントンと叩きたくなるのではないでしょうか?
この図では右だけにマークをつけていますが、もちろん左も同じです。
ご注意)実際に使うボールはひとつだけです。
では実際にやってみましょう! あお向けになり膝を立ててください。
お尻のあたりにボールを当てようとすると、つい腰を持ち上げて上から乗っかってしまうかもしれませんが、この方法だといきなり強い刺激がかかりますので、あまりおすすめできません。
下の画像のように身体を傾けるようにして、ゆっくりとボールに体重を乗せるようにしましょう。
自宅で出来る! 腰痛トレーニングDVDより(https://re-studio.jp/dvd/)
この場合、身体を右に少し傾けてお尻の左側の中殿筋にボールを当てています。
ボールを骨盤の骨際のやや下あたりに入れ、ゆっくりと身体を戻してボールに体重をかけてみましょう。
グリグリと転がすように刺激することは、痛みがある時にやると逆に痛みが増したりしますので、やらないようにしましょう。
ツボを押されているような、痛気持ちいいくらいの感覚がベストです。
そして息を吐いて身体の力を抜いていきます。とくにボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。
多少痛みがあったりすると、つい当てている部分に力が入ってしまうと思いますが、そうすると筋肉が固まってうまくほぐれません。
あえて力を抜くようにすることで、奥の方までほぐすことができます。
その状態で10~20秒ほど当てたら、また身体をかたむけて体重をはずし、少しボールをずらします。
1cmずつくらいずらして、効くところを探してみましょう。ちょっとした位置やボールを当てる角度により効く感じが変わると思いますので、「どのへんが効くかな?」とボールを細かくずらしながら探してみてください。
最初に図で説明したポイントと、違うところに効くポイントがある場合ももちろんあります。ご自身で効果を感じるところがあれば、そこに当てていただいても全く問題ありません。
少しずつ場所をずらしながら、左をひととおりほぐしたら、次は右側を同じようにほぐしていきます。そうして左右の中殿筋をまんべんなくほぐしてみてください。
ひととおりほぐしたら、一旦ボールを外して楽にしましょう。
ボールを当てたところを中心に、そこから腰や骨盤まわりにかけてホカホカする感じや軽くなる感じなどはあるでしょうか。
ある場合は、この時に中殿筋やその周囲の血行が良くなり、筋肉がゆるんでいきます。
逆に重だるい感じや不快な感じが残る場合は、刺激が強すぎるかもしれません。
体重のかけ方を軽くして、あくまで痛気持ち良い程度におこなってみましょう。
それでも痛過ぎたり、かえって痛みが強くなるようであれば中止してください。
小殿筋をほぐす
次に小殿筋をほぐしていきます。
小殿筋のポイントですが、以下を参考に探してみましょう。
仰向けになった時に、上の図のように足のつけ根で骨盤の骨の飛び出ているところを探してください。
そこから斜め下(体の真横)のところが小殿筋をねらうポイントになります。
おおよそズボンのポケットの入口があるあたりですが、ここが股関節の隙間の部分になり、その奥に小殿筋があります。
そこにボールを当てながら、下の画のように、膝を開くようにして優しく体重をかけていきます。
これだけでもかなり効く感じがあるかもしれません。
これで痛みが強いようなら、脚を戻したりまた体重をかけたりと繰り返して刺激してみましょう。
大丈夫な場合は、上の画のように、横向きに寝るようにしてテニスボールにより体重をかけてみましょう。
できるのであれば、完全に真横になって体重を乗せてみます。
ボールがあたっているところや、そこから脚にかけてじんわり痛気持ち良い感じがあればベストです。
そのまま息を吐いて身体の力を抜きます。とくにボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。
多少痛みがあったりすると、つい当てている部分に力が入ってしまうと思いますが、そうすると筋肉が固まってうまくほぐれません。
あえて力を抜くようにすることで、奥の方までほぐすことができます。
グリグリと転がすように刺激するのは、痛みがある時にやると逆に痛みが増したりしますので、やらないようにしましょう。
10~20秒くらい刺激したら元に戻ります。
すると、ボールを当てたところや足全体にホカホカする感じや軽くなる感じなどがあるでしょう。
この時に小殿筋やその周囲の血行が良くなり、筋肉がゆるんでいきます。
逆に重だるい感じや不快な感じが残る場合は、刺激が強すぎるかもしれません。
体重のかけ方を軽くして、あくまで痛気持ち良い程度におこなってみましょう。
それでも痛過ぎたり、かえって痛みが強くなるようであれば中止してください。
ホカホカと血行が良くなる感じが少し落ち着いたら、またおこなってみましょう。
これを何度か繰り返していきます。
終わったあとに腰やお尻や脚にかけて軽くなる感じなどがあればOKです。
やりすぎると逆に痛みが増すことがあるので注意してください。
これを1日に2~3回、週に3~4回ほどを目安に続けてみましょう。
うまくほぐすことができれば、少しずつ痛みやしびれが改善し、腰から脚が軽くなってくるでしょう。
この記事があなたの腰や脚の痛みを改善する一助になりましたら幸いです。
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
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