文/印南敦史
インターネットやテレビ、雑誌などのメディアでは、さまざまな「健康法」が紹介されている。しかし、それらすべてに明確な効果が期待できるわけでは当然なく、そもそも続けられなければなんの意味もない。
だとすれば、“たしかな効果が期待でき、しかも続けやすいなにか”を知りたいところだ。どこかに通う必要もなく、筋力や体力に自信がなくてもでき、ケガをするリスクも少なく、時間も場所も選ばないものを。
そんな都合のいい健康法があるものかと思いたくもなるが、あるようなのだ。『ひざたたき 世界一かんたんな健康法』(中村光伸 著、アスコム)の著者によれば、それは「ひざたたき」だというのである。
ヒントは「骨」にありました。
私は整形外科医、美容外科医として日々患者さんと接しています。高齢の患者さんは筋力や骨が衰えていることが多いので、「骨が健康の土台ですよ」「少しでも骨を鍛えましょうね」とお話ししています。(中略)
骨を鍛えるには軽くたたいたりして衝撃を加えるのが効果的です。(本書「はじめに」より)
この「たたくだけ」という方法は骨を鍛えるだけでなく、認知症や糖尿病を予防したり、脂肪を減らすなど、非常に幅広い効果が期待できることがわかってきたのだそうだ。
効果の秘密は「若返りホルモン」といわれる「オステオカルシン」「オステオポンチン」にあり、これらが多くのポジティブな効果をもたらすことが最近の研究で明らかになってきているというのである。
運動やストレッチは無理だとしても、ただ座っているだけの時間を少しだけ「ひざたたき」の時間に費やす程度なら、無理なく続けることができそうだ。しかも以下の図のように、それはとても簡単なのである。
ひざをたたくことの大切な意味は、骨に刺激を与えることにあります。どうして骨への刺激が身体によいのかというと、その刺激が若返りホルモンを出すスイッチになるからです。(本書60〜61ページより)
重要なポイントは、骨も臓器や皮膚や筋肉と同じように細胞でできているという点にあるようだ。細胞が常につくり替えられているように、骨も、大人になって硬くなったらそのままというわけではなく、常に新しい骨につくり替えられているのだという。
これを骨の新陳代謝(骨づくり)といいます。古い骨が溶かされ削られる「骨吸収」と、新しい骨がつくられる「骨形成」の繰り返しによって、骨折しにくい強度を保っているのです。(本書62ページより)
弾力のある丈夫な骨でも、古くなると次第に弾力を失い、弱くもろくなってくる。そのため、古くなったところは新しくつくり替え、もとの元気な骨に若返らせる作業が必要になるということだ。
ちなみに骨の状態を目で見ることはできないものの、約5年で新しい骨に生まれ変わっているとされているそうだ。そのために「ひざたたき」が効果的なのだとすれば、ぜひとも続けてみたいところではある。
なにしろ、簡単なのだから。
文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。