文/印南敦史

些細なことで感情的になり、必要以上に大きな怒鳴り声を上げるような老人を、スーパーやコンビニなどで目にする機会が増えてきたように思う。実際にどれだけ増えたのか“数字”で確認したわけではないが、「老害」などということばが一般化していることは、その数が増加していることの証明であるとも考られるだろう。

事実、脳科学者である『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(西剛志 著、アスコム)の著者も、次のように述べている。

周りが気にならなくなる、記憶が曖昧になる、同じ主張をくり返す、感情的になる。年齢とともにそういう傾向になる人がかなりいます。こういう行動を知らず知らずにとってしまうのは脳の老化現象の一種です。私はこれを「老人脳」と呼んでいます。(本書「はじめに」より)

だが、そうした人が目立つ一方、まったく逆の人がいることも事実だ。80代や90代になっても新しいことに積極的に挑戦し、前向きに元気に、若々しく過ごしているというようなタイプがそれにあたり、一般的にそういう人は「スーパーエイジャー」と呼ばれたりもしている。

だとすれば、両者の差がどこにあるのかを知りたいところではある。

ちなみに著者によれば、人間の脳が生活習慣や思考習慣によってどう変わるのか、成果を上げる人と上げられない人は脳にどのような差があるのかなど、多岐にわたる研究をしてきた結果、わかってきたことがあるのだそうだ。

老人脳は後天的なものであり、日々のさまざまな習慣(思考×行動)の積み重ねによって変えられるということ。また習慣を変えることによって、老人脳を遠ざけることができるということ。

そこで本書では、世界中の脳の老化研究からわかってきた真実をベースに、老人脳にならないためのさまざまな方法を紹介しているのである。

たとえばここでは、「65歳からのスマホとのつきあい方」についても触れられている。スマホと関わる時間は生活のなかでどんどん増えているが、使い方を間違えると脳にとってマイナス効果になることもありうるわけだ。それはどの世代にも当てはまることだろうが、年齢を重ねるほどそのリスクは高まっていくかもしれない。

だからこそ、プラス面とマイナス面を考えながら、「脳にマイナスにならないスマホとのつきあい方」を実践するべきだということである。

まずプラスの面として注目すべきは、最新のテクノロジーに触れて新しいことをやってみることが、脳を活性化させる最高の方法のひとつだという点だ。事実、パソコンの趣味がある人は認知症になりにくいというデータもあるようだ。

インターネットで検索したり、パソコン上で写真を整理することは認知機能を高める効果があるのです。また、SNSを利用すると世代や男女間を超えてつながれるため、知り合いができやすくなったり、つながりを感じやすくなったりするメリットもあります。(本書170〜171ページより)

ただし忘れるべきでないのは、「なにごともやりすぎると害がある」ということ。もちろんスマホも同じで、片時も手放せなくなるようだと、当然のことながらいろいろマイナス面が出てきてしまうわけである。

そのひとつとして、すぐに思い浮かぶのが「通知」だ。ご存じのとおり、日常生活のなかではSNSやネットニュース、LINEなど、さまざまな通知がしょっちゅう届く。そのたび気になり、意識が散漫になったり、人との会話に集中できなくなったりするというようなことは、スマホを持っていれば誰でも経験したことがあるはずだ。

こういうことは、実はストレスになっているのです。自律神経のバランスが崩れる原因にもなり、リラックスできずに体内で炎症を起こしやすくなる可能性もあります。
「通知」の設定はやめたほうがいいですし、特に睡眠中や休息中は音が出ないようにしておくことをおすすめします。(本書171ページより)

それだけでなく、「脳の短絡化」が起きる可能性もある。情報がスマホですぐに入手でき、答えがすぐにわかってしまうのであれば、試行錯誤をする機会は必然的に少なくなる。だが試行錯誤することは、脳を活性化していることとイコールなのである。

もちろんストレスがかかりすぎる試行錯誤であればマイナスだが、“健全な試行錯誤”は脳の働きを高めてくれるわけだ。

例を挙げよう。漢字を書こうとしたとき、思い出せないことがあるのではないだろうか。メールなどで文章を書くと勝手に漢字に変換されてしまうため、“思い出す”というプロセスが省略されてしまう。そのため思い出せなくなるのである。脳に負荷がかからないため、脳を使わない状態になっていて、脳の老化が進むということだ。

また、寝る前にスマホを見ると睡眠の質が下がるというのも有名な話。睡眠は脳と密接に結びついているので、睡眠の質が悪いと認知症のリスクも上がってしまうのだ。

ですから、寝るとき以外でも、「スマホ断ち」する時間を設定してみてください。目につくと、ついつい見たくなるので、家のどこかの引き出しに一時的にしまってしまうのは有効です。人の脳は面白くて、ひと手間を加えるとやらなくなりやすいのですね。たとえば、机の上にお菓子があるとついつい食べすぎてしまうので、ダイエットをしたければ、どこか見えないところにしまっておく。それだけで、衝動的に食べてしまうという行為が起きにくくなります。(本書175〜176ページより)

スマホの場合もお菓子と同じで、そこにあることを確認すると、つい見たくなってしまう。見たものがそのあとの行動に影響を与えるというわけで、これは意識しておきたいところである。

『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
西剛志 著
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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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