中学生や高校生など、10代以下で腰や脚の痛みで苦しんでいる子供たちは、実はたくさんいます。
しかし適切な対処をすれば、早ければ1か月程度で痛みやしびれは良くなり、部活などスポーツに復帰したりすることも十分に可能です。
もしあなたやあなたのお子さんが、椎間板ヘルニア、腰椎分離すべり症などによる腰や脚の痛みでお悩みでしたら、ぜひこの記事を読んでほしいと思います。

腰痛・坐骨神経痛に悩む子供たち、またそのご家族へ

椎間板ヘルニア、腰椎分離すべり症、腰痛、坐骨神経痛などに悩んでいる中学生や高校生のあなた。

痛みやしびれにより長期間学校を休まざるをえなかったり、部活やスポーツをあきらめたり、進路を変更しなければならなくなったり……。

病院に行ってもなかなか治らない痛み、先の見えない不安でとてもつらい思いをしていますね。

私もかつてその一人でしたので、絶望的なその気持ちはよくわかるのです。

またそのようなお子さんをケアするご家族の方も、つらい思いをしているお子さんに対して何もできないのは、身を切るようなつらさがあると思います。

でも大丈夫! その痛みは必ず良くなります。

手術をしたりする必要もありません。自分自身でセルフケアや簡単な体操をしたり、お子さんをマッサージしたりすることでも良くなるのです。

若年性腰痛のエビデンス

10代の子どもに腰痛がみられるのは日本だけではありません。

海外での研究データがいくつかありますのでご紹介したいと思います。

◆11歳の子ども216名を対象にした5年間におよぶ前向き研究によると、腰痛の年間発症率は12歳で11.8%から15歳で21.5%へ、生涯有病率は11歳で11.6%から15歳で50.4%へと年齢と共に上昇する。http://goo.gl/n94jwf

◆青少年の腰痛はきわめてありふれた症状で、年齢と共に増加するだけでなく再発性もあるものの、一般的に時が経つにつれて悪化することはない。大部分の症状は成人の活動障害性腰痛に発展することはなく、普通の生活上の出来事と考えるべきとされている。

◆未成年者806名(8歳~10歳481名・14歳~16歳325名)を対象に行なわれたデンマークの横断的研究によると、小学生の腰痛有病率は30%以上、中学生の有病率は約50%、被験者の26%が医師を受診していた。http://goo.gl/VP0OcW

◆子どもの腰痛は稀で重篤な障害を意味するという伝統的な医学的仮説は、ここ10年間の科学的研究により一蹴されている。背中や腰の痛みは小児期の初めから見られ、とりわけ腰痛は思春期ころから急増することが明らかになっている。

◆1999年に行なわれた小児および青少年の非特異的腰痛に関するレビューによると、研究により差はあるものの未成年の腰痛有病率は30%~51%、外傷歴・家族歴・身長の伸び・激しいスポーツ・抑うつやストレスなどが危険因子。http://goo.gl/V3VkeZ

◆脊椎分離症または脊椎分離すべり症のあるアスリートを約5年間追跡調査した結果、連日の過酷なトレーニングにもかかわらず症状を訴えた者は皆無だった。若者にアスリートの道を諦めさせたり激しい運動をさけさせたりする必要はない。

このように、多くの場合若年性腰痛に大きな危険性はなく、生活や運動を制限したりする必要はないのです。

中学生、高校生の腰痛・坐骨神経痛の原因は主に3つ

病院では椎間板ヘルニアや腰椎分離すべり症など、背骨の問題を指摘されることが多いと思います。

筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)にも、そのような診断を受けた中高生の患者が訪ねて来られますが、ほとんどの場合、ヘルニアやすべり症など背骨の異常はそのままでも、手術をせずに治っていきます。

中高生の腰痛・坐骨神経痛の原因は、主に次の3つだと筆者は考えています。

(1)オーバーユース(使いすぎ症候群)
(2)急な運動量の減少
(3)ストレス

オーバーユース(使いすぎ症候群)とは、運動のし過ぎで身体(筋肉や関節)が耐え切れずに痛みや障害をおこす症状のことです。

小学校から中学校に上がって運動部に入ると、急に運動量が上がって身体がついていかず、腰や脚、その他関節などに痛みがおこったりするのが典型的なパターンです。

また逆に、中学3年生や高校3年生が受験のために部活を引退すると、急に運動量が減少したうえに長時間の勉強で筋力や体力が落ちてしまい、腰や脚などに痛みがおこることがあります。

またこのように中学生から高校、大学くらいまでにかけては、数年で生活環境や周囲の人間関係が激変したり、勉強や進路、人間関係などで悩んだりすることが多い時期です。

そのようなストレスが原因で腰や脚、その他の痛み症状がおこることもあります。

今まで治療に当たった中高生子どもの患者のうち、(1)オーバーユースが5割前後、(2)急な運動量の減少が2割前後、(3)ストレスが2割前後、というのがおおよその割合でしょうか。

またこれら複数の要因が混ざっていることも少なくありません。

例えば、

『中学3年生まで運動部で激しい練習に明け暮れ、少々腰に痛みがあったが、なんとか部活や勉強はこなせていた。しかし部活を引退して受験勉強に専念するようになって腰痛が悪化した』

というようなケースがよくあります。

この場合、

『オーバーユースで腰に問題があったが、運動で筋力体力が維持できていたためひどくならずにすんでいた。しかし運動をやめたことで筋力体力が落ち、さらに受験のストレスが重なって腰痛がひどくなった』

というオーバーユース+急激な運動量の減少+ストレスが原因と考えられるケースです。

対処法(1) オーバーユースには『マッサージやストレッチ』

オーバーユースが原因の場合、筋肉や関節が極度に疲労している状態ですから、その疲労を回復させてあげれば、もともとは体力旺盛なわけなので、速やかに症状も回復していきます。

筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)における今までの事例では、1~2か月で症状が改善し、部活やスポーツに復帰するようなケースが多いです。

オーバーユースの場合、マッサージやストレッチが効果的です。

痛みが出ている腰から脚にかけて、筋肉がガチガチにこわばり、こり固まっていると思います。

もし可能であれば、親御さんはそこを優しく気持ちよく感じるレベルでマッサージしてほぐしてあげてください。

お子さんご自身は、自分でその部分を無理のない程度にストレッチしましょう。

ストレッチについては以前の記事が参考になると思いますので、リンクを貼っておきます。

慢性腰痛を改善!誰でも簡単にできて効果的な6つのストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第21回】(https://serai.jp/health/373174

対処法(2) 運動量を減らし過ぎない

部活の引退などで急に運動量が減ってしまって痛みが出てきた場合は、まずはオーバーユースと同じようにマッサージやストレッチなどでこわばった筋肉をほぐすようにしましょう。

そのうえで運動量を減らし過ぎないことが大事です。

例えばウォーキングやジョギングなどの軽い運動をおこなって、少しずつ運動量を増やしていきましょう。

痛みがある場合は無理をする必要はありませんが、できる範囲でおこなってください。

また通学やその他日常生活もできるだけそれまでどおり続けてください。

痛みが強くて動けない場合はしかたありませんが、大事にして安静にしすぎると筋力や体力がさらに落ちてしまい、かえって痛みがひどくなったり治りが悪くなったりしてしまいます。

対処法(3) ストレスには『安心させる』

受験の前後などプレッシャーが続いた時期や、それが終わってほっとした時期、または新生活がはじまり環境が変わった時期などに、ストレス性の腰痛があらわれることがあります。

また、痛みに対して思春期特有の感情的な反応が加わると、痛みが悪化したり長引いたりします。

ストレス性腰痛の対処は少々難しい面もありますが、原則的には『安心させる』ということが最も大事になります。

『安心させる』ためには、『必ず良くなるよ』と繰り返し伝えてあげてください。

またストレスを軽減することや発散することもとても大事です。気分転換や息抜き、リラクゼーションをするようにしてください。

趣味や好きなこと、楽しめることがあるのであれば、どんどんおこないましょう。

身体的なリラクゼーションには、マッサージやストレッチも有効です。

親御さんがマッサージしてあげたり、自分でテニスボールを使ってほぐしたりしてみましょう。

リモートワーク腰痛を解消するにはトリガーポイントマッサージ!【川口陽海の腰痛改善教室 第68回】(https://serai.jp/health/1030955

中学生高校生の腰痛坐骨神経痛は必ず良くなる

最もお伝えしたいことは、『必ず良くなる』ということです。

私が腰痛坐骨神経痛になったのは、18歳、高校3年生の秋でした。

まわりの同級生はみんな大学受験に頑張っているのに、自分は学校にも行けずほぼ寝たきりのような生活。

痛み止めの薬も効かず、病院でもあとは手術しかないと言われましたが、それは絶対したくない……。

当時はネットもありませんから情報も少なく、有効な治療がみつからず、このままで自分の人生はどうなるのか? と不安と痛みに苛まれる絶望的な毎日でした。

今思えばそのようなストレスや身体を動かさない状態が、症状をより悪化させていたとわかります。

しかし、当時は何の知識もありませんでしたが、『このままじゃいけない』と自分なりに思って、少しずつ運動をしはじめました。

自転車に乗ることは比較的楽にできましたので、自転車で遠乗りしたり、部屋の掃除をすることで身体を動かしたり、腹筋や背筋をしたり、と少しずつ身体を動かしたのです。

すると、少しずつ少しずつ回復の兆しが出てきました。

時期的にも良かったのかもしれませんが、春頃にはかなり回復がみられ、夏には以前していたアルバイトに復帰できるまでになりました。

発症してから1年弱はかかりましたが、ほとんど人の手を借りずに、治すことができたのです。

ですから、あなたの症状も『必ず良くなる』と言い切ることができるのです。

今回の記事を参考に、少しでもあなたの症状が良くなれば幸いです。

文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html

腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(健康プレミアムシリーズ)川口陽海(著/文) 永澤守(監修) 発行:アスコム
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