文/中村康宏、内本菜穂
これまでの健康診断でLDL(悪玉)コレステロールが基準値を超えた経験のある方も多いのではないでしょうか。
今回は、LDL(悪玉)コレステロールが及ぼす体への影響と、上がる原因、改善方法について解説します。
LDL(悪玉)コレステロールとは
血中脂質と呼ばれる血中に含まれる脂肪分を示し、一般的に「LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪」などに分けられます。
LDL(悪玉)コレステロールは、細胞内に取り込まれ、ホルモンの産生、細胞膜の形成など体に必要不可欠な働きをしていますが、血中に過剰に存在すると血管壁に蓄積し、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を誘引する可能性があることが知られています。
LDLコレステロールの基準値は、140 mg/dL以上で脂質異常症と診断されますが、それはあくまで高血圧や糖尿病などがなく、動脈硬化性の疾患を引き起こすリスクが低い方に当てはまる診断基準であり、高血圧などのリスク因子のある方はより厳格なコントロールが必要と言えます。(一般社団法人日本動脈硬化学会)
LDLコレステロールが上がる原因は?
1.食事
LDLコレステロールを上げる原因のひとつに脂質に偏った食事があげられます。脂質の中でも飽和脂肪酸やトランス脂肪酸(https://serai.jp/health/273504)の過剰摂取に注意が必要です。
ダイエットしているから大丈夫! というわけではありません。近年、様々あるダイエット方法の中でも糖質制限ダイエットが主流となりました。
糖質を制限する代わりに脂質からエネルギー補給をする為、中には「肉ならいくらでも食べてOK」などといった過剰な表現の記事も散見されます。
飽和脂肪酸は肉の脂身部分やバター等に多く含まれる為、「糖質制限ダイエットで痩せられたがLDLコレステロール値が上がってしまい、健康診断で引っかかってしまった」という方も多く見受けられるようになりました。
また、マーガリンや菓子類に使われるショートニングにはトランス脂肪酸が多く含まれ、健康的な食事を心がけている方でも、間食が多いことがLDLコレステロールを上げてしまう原因になっている方もいらっしゃいます。
2.肥満、運動不足
肥満は体内の中性脂肪を増加させ、脂質代謝を乱してしまうため、LDLコレステロールを上昇させる原因となります。
運動不足も過剰なエネルギーを消費できず中性脂肪を増加させる原因となることから、結果的にLDLコレステロールを上げることに繋がります。
3.遺伝
遺伝によってLDLコレステロールが増えてしまう疾患を「家族性高コレステロール血症」と言います。日本人の約8割はこの遺伝子を持つとされていますので、「ほとんどの方が早かれ遅かれコレステロールが高くなる」と考える必要があります。
通常であれば肝臓でLDLコレステロールは処理されますが、遺伝子の異常によって肝臓での処理がうまく行われず、LDLコレステロール値が高くなります。
家族性高コレステロール血症の方の中には、若い頃からLDLコレステロールが高い人もいらっしゃいます。放置すると動脈硬化が進み、若くして脳梗塞や心筋梗塞等を発症する方もいらっしゃいますので注意が必要です。
4.ホルモンバランスの変化
女性ホルモンであるエストロゲンは、血管壁に溜まったコレステロールを運び排泄させるHDL(善玉)コレステロールの生成を促し、LDL(悪玉)コレステロールの生成を抑える働きがあります。閉経を迎える更年期の女性は、エストロゲンの分泌量が急激に低下するため、LDL(悪玉)コレステロールが増加するリスクが高まります。
LDLコレステロールを下げる為に
1.肉類よりも魚類や植物性のたんぱく質を摂る
鯖や鰯などの青魚に多く含まれるEPAやDHAにはLDLコレステロールや中性脂肪の生成を抑えて血液をサラサラにする働きがあります。肉類ばかりに偏りがちな場合は、魚類や大豆等の植物性のたんぱく質を主菜として選ぶ頻度を増やしてみましょう。肉類を食べる時も脂身の少ない部位を選んだり、脂身は残すといった工夫も良いでしょう。(「大豆」の魅力 https://serai.jp/health/1058372)
2.野菜類や海藻類、きのこ類などを積極的に摂る
野菜類や海藻類、きのこ類には食物繊維が豊富に含まれており、腸内でのコレステロールの吸収を抑えます。食物繊維は満腹感も得られることから、食事のはじめに食べる事で主菜の食べ過ぎも抑えることができます。(アレルギー https://serai.jp/health/1063754)
3.パン食よりもご飯食を
パンにはバターやマーガリン、ショートニング等が原材料として含まれますが、中でもそれらがたっぷり含まれる菓子パンを選んだり、シンプルなパンでも上からバターをたっぷり塗って食べるという方も多いのではないでしょうか。
LDLコレステロールを上げる原因となるバターやマーガリン、ショートニング等の摂取量を抑える為にも、日頃からパン食が多いという方はこれを機にご飯食にトライしてみてはいかがでしょうか。(正しい「油」の摂り方と選び方 https://serai.jp/health/1053440)
LDLコレステロールが高いだけでは体に痛みなどは出ない為「これくらい大丈夫」と軽視される方が多くいらっしゃいます。心筋梗塞や脳梗塞などの大きな病気に繋がる前に食事や運動の見直し、医療機関への受診を考えてみましょう。
文/中村康宏
医師。虎ノ門中村クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。一般内科診療から健康増進・アンチエイジング医療までの幅広い医療を、予防的観点から提供している。近著に「HEALTH LITERACY NYセレブたちがパフォーマンスを最大に上げるためにやっていること」(主婦の友社刊)がある。
【クリニック情報】
虎の門中村クリニック
ホームページ:https://toranyc.com
住所:東京都港区虎ノ門3丁目10-4 虎ノ門ガーデン103
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