文/鈴木拓也
料理研究家歴50余年。
まもなく傘寿を迎えられる村上祥子さんは、今なお現役で活躍している。
著作活動に料理教室にと、80歳とは思えない旺盛なエネルギーはどこから湧いてくるのだろうか?
その秘密のひとつが運動だ。毎朝トランポリンを100回、自宅の掃除や食材の買い出しなどで1日1万歩以上。カメラと荷物をかついで外を歩くさまに、お年寄りくささは微塵も感じられない。
「とにかくよく歩くこと」がモットーの村上さんだが、それ以上に気をつかうのが食生活だ。生活習慣病の予防食など、健康を意識したレシピの数々を探究・考案してきた村上さんだが、もちろん自らそうした食事をとり入れている。終日の立ち仕事でも、昼食時以外は座らないという強健ぶりは、まさに日々の食事の賜物でもあるのだろう。
そんな村上さんが、シニア世代に向けた食のエッセンスを凝縮したのが、近著の『80歳、村上祥子さんの元気の秘訣は超かんたんレンチンごはんだった!』(世界文化社)。本書に登場するレシピは、スーパーで安価に買える食材が主体。しかも、手軽に作れるものばかり。その一端をこれから紹介しよう。
血流アップなど健康効果抜群の「酢キャベツ」
様々な料理に使えて健康にもよい、その名も「長生き調味料」。酢を材料にするものとしては、「酢キャベツ」「酢タマネギ」「にんたまジャム」の3種あり、本書の多くのレシピでも使われる。血流アップや胃粘膜保護などに役立ち、作り置きも可能。そのひとつ、「酢キャベツ」の作り方は以下のとおり。
【材料(できあがり700g分)】
・キャベツ 500g
・A 酢 150ml、砂糖 60g、塩 小さじ1
※砂糖の代わりに、はちみつ(140g)、きび砂糖(60g)、黒砂糖(60g)でもOK。
【作り方】
1 キャベツは5cm長さのせん切りにし、耐熱ボウルに入れる。
2 鍋にAを煮立てて1に加える。皿を数枚のせて重しにし、30分ほどおく。
3 冷めたら、清潔な瓶や保存容器に移し、ふたをして常温で一晩おく。翌日から食べられる。
※常温・冷蔵ともに1年間保存できる(冷蔵すると酸味がまろやかに)。
筋肉の維持と骨粗しょう症予防になる「イワシ缶とゴーヤの卵炒め」
サバ缶とイワシ缶がブームになったが、村上さんもこの食材を絶賛する。理由は、「たんぱく質、カルシウム、ビタミンDがたっぷり。シニアの筋肉の維持と骨粗しょう症予防がかなう最強食材」だからだ。これと酢キャベツを組み合わせ、卵でさらにたんぱく質を加えたのが「イワシ缶とゴーヤの卵炒め」。
【材料(1人分)】
・イワシ缶(水煮・汁気を切る) 正味60g
・ゴーヤ 1/4本(50g)
・卵 1個
・A 酢キャベツ 大さじ1、サラダ油 小さじ1
【作り方】
1 イワシ缶の身はほぐす。ゴーヤは5mm厚さの薄切りにする。
2 耐熱ボウルに1、Aを入れて混ぜる。
3 ふんわりとラップをかけて、電子レンジ(600W)で2分加熱する。
4 取り出して混ぜ、卵を溶いて加える。再びふんわりラップをかけて電子レンジ(600W)で1分加熱し、取り出して混ぜる。
※溶き卵はゴーヤに火を通してから加えると、卵に火が通り過ぎずにふんわり仕上がる。
「酢キャベツ」との合わせ技で腸活に効く「さつまいものヨーグルトサラダ」
先に紹介した「長生き調味料」には、腸内環境を整えるという効果もある。腸の善玉菌の餌になるオリゴ糖が豊富で、酢酸(酢の主成分)によって腸の酸性度が上昇することで、善玉菌の活動が盛んになるからだ。これを、食物繊維の多い野菜、いも類、海藻を使った料理に加えれば、さらに腸活効果が増す。ここではそんな「腸活おかず」の1つ、「さつまいものヨーグルトサラダ」を取り上げよう。
【材料(1人分)】
・さつまいも 3cm(100g)
・A-酢キャベツ 大さじ1、プレーンヨーグルト(無糖) 大さじ1
【作り方】
1 さつまいもは皮つきのまま1cm厚さのいちょう切りにする。水に2~3分浸し、ざるに上げて水気をきる。
2 耐熱ポリ袋に1を入れ、口は開けたまま耐熱ボウルに入れ、電子レンジ(600W)で2分加熱する。
3 取り出して、Aを加えて混ぜる。
ビタミンDとカルシウムに富む「しいたけ醤」
酢を使うのとは別系統の「長生き調味料」が、「しいたけ醤」と「サバそぼろ」だ。これらは、ビタミンDとカルシウムの補給を主眼とした調味料。たんぱく源となる食材と合わせれば、筋肉・骨に必要な栄養素となる。以下は「しいたけ醤」の作り方。
【材料(できあがり170g分)】
・干ししいたけ 40g
・水 140ml
・A-ちりめんじゃこ 20g、大人向け粉ミルクまたはスキムミルク 10g
【作り方】
1 耐熱ポリ袋に干ししいたけを入れ、分量の水を注ぎ、空気を抜いて口をしばる。
2 耐熱容器に1を入れ、電子レンジ(600W)で1分加熱し、取り出して10分おく。水気が残っていたら捨て、フードプロセッサーに軸をつけたままかけて、細かくする。
3 耐熱ボウルに移し、ふんわりとラップをかけて電子レンジ(600W)で2分加熱する。取り出して、Aを加えて混ぜ、保存容器に移す。
※冷蔵で1週間、冷凍で2か月間保存できる。
良質なたんぱく質がとれる「厚揚げカレー」
村上さんが、「おすすめの良質たんぱく質」として挙げるのが、鶏むね肉、大豆食品、卵。なかでも大豆食品は、「骨粗鬆症の予防や更年期障害の症状軽減に役立つ」とされるイソフラボンを含み、カルシウムも豊富。
本書の「厚揚げカレー」は、その名のとおり厚揚げがメインの具のカレー。厚揚げは、同じ大豆食品の豆腐に比べ、たんぱく質は1.5倍、カルシウムは2.5倍以上、鉄分は1.6倍以上含む「優秀食材」。しいたけ醤も加えて、栄養面でパーフェクトなカレー料理に。
【材料(1人分)】
・厚揚げ 小2/3枚(100g)
・じゃがいも 1/2個(75g)
・にんじん 1/4本(30g)
・A しいたけ醤 大さじ3(またはさばそぼろを大さじ2)、カレールウ(フレーク) 大さじ2(20g)、水 120ml
・ごはん(玄米など好みのもの) 茶わん1杯分(150g)
※カレールウは、フレークの代わりに固形ルウを使う場合、20gを刻む。
【作り方】
1 厚揚げは3cm角に切る。じゃがいも、にんじんは乱切りにする。
2 耐熱ボウルに1、Aを入れる。ふんわりとラップをかけ、電子レンジ(600W)で6分加熱する。
3 取り出して混ぜ、器に盛ったごはんにかける。
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とかく健康によいとされる料理は、あれもこれもで面倒なものになりがち。その点、本書に掲載のレシピは、電子レンジを活用して数ステップで作れる手軽さ。健康を気づかう方、自炊にチャレンジしたい方を含め、サライ世代におすすめしたい1冊だ。
【今日の健康に良い1冊】
『80歳、村上祥子さんの元気の秘訣は超かんたんレンチンごはんだった!』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った映像をYouTubeに掲載している。