著名人も続々と実践している「16時間断食」。体調が改善し、ダイエットにもなると、話題を呼んでいます。そこで、35万部突破のベストセラー『「空腹」こそ最強のクスリ』から、空腹の時間をつくることによって得られるメリットを学んでいきましょう。

文・青木 厚

内臓の働きを復活させ、活性酸素の害から体を守る

では、空腹の時間をつくることによってどのような効果が得られるのか、体に何が起こるのかを、みなさんにお話ししましょう。

まとまった空腹の時間を作ると、まず、内臓の働きがよくなります。一日3食とったり、食べすぎたりすると、前に食べたものを消化している間に次の食べものが体内に入ってくるため、内臓は休むことなく働き続け、疲弊してしまいます。

すると、胃や腸、肝臓などの働きが鈍くなり、「栄養をしっかり吸収できない」「老廃物がきちんと排出されない」といったことが起こりやすくなります。また、腸内環境が悪化すると、免疫力も低下するため、体調不良に陥ったり、病気にかかりやすくなったりします。

しかし、週に1日でも、まとまった空腹の時間を作れば、内臓は十分に休むことができます。その結果、内臓の疲れがリセットされて、しっかり働いてくれるようになり、下痢や便秘、アレルギーや体調不良なども改善されるはずです。さらに、空腹によって一時的に栄養が足りなくなると、活性酸素を除去する抗酸化酵素が増え、活性酸素の量が減るともいわれています。つまり、活性酸素がもたらす細胞の老化や病気を、予防することができるのです。

脂肪の分解、血流の改善で、生活習慣病をまとめて遠ざける

それだけではありません。最後にものを食べてから10 時間ほど過ぎたあたりから、体内では、 脂肪の分解が始まります。私たちが食事で摂った糖質は腸管で消化・吸収され、血液に乗って肝臓へ、さらに全身へ運ばれます。

糖質は、脳や筋肉、内臓などが働く際のエネルギー源として使われますが、余った糖質の一部はグリコーゲンとして筋肉や肝臓に蓄えられ、おさまりきらなかった分は脂肪となって、脂肪細胞に蓄えられます。

長時間ものを食べずにいると、外部から糖質を補給することができなくなるため、体はまず、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを利用して、エネルギーを作ります。ところが、最後にものを食べてから数時間ほど経つと、肝臓に蓄えられたグリコーゲンもなくなり、体は次に、脂肪を分解して、エネルギー源に変えようとします。

つまり、空腹の時間が長くなればなるほど、体内の余計な脂肪が分解され、 減っていくのです。特に内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて落ちやすいという特徴があります。

また、脂肪が分解されれば、血液中の脂質が減り、圧迫されていた血管が解放されますし、トータルで12 〜 24時間、ものを食べない時間を作ると、 血液中の糖質も20%程度低下するともいわれています。

そのため、血液や血管の状態が改善されて血流がよくなり、高血圧や血行不良にともなう体調不良も軽減されるはずです。

内臓脂肪や血管障害は、がんや糖尿病、動脈硬化、心疾患や脳血管疾患といった生活習慣病の大きな原因の一つですが、空腹の時間を作ることで、それらにかかるリスクを、かなり減らすことができるのです。

オートファジーで、若々しく健康な体を手に入れる

しかし、空腹が体にもたらす最大のメリットは、なんといっても「オートファジー」にあります。オートファジーとは、細胞内の古くなったタンパク質が除去され、新しいものに作り替えられるという仕組みです。つまり、細胞が内側から生まれ変わるわけです。

そのため、オートファジーには、がんや糖尿病をはじめとする生活習慣病、 アルツハイマー型認知症、感染症などの予防効果や、肌や筋肉などの老化防止の効果があると考えられています

また、古くなったミトコンドリアは、エネルギーの生成量が少ないうえ、大量の活性酸素を発生させますが、オートファジーによって新しく生まれ変わることで、より多くのエネルギーを作り出せるようになり、活性酸素の量は低下します。

健康と若さを維持するうえで、オートファジーがもたらしてくれる恩恵は計り知れないのです。

なお、空腹の時間を作ると、「ケトン体」という代謝産物が増加するといわれています。ケトン体とは、体内の中性脂肪や筋肉が分解されて生み出されるエネルギー源です。ケトン体には活性酸素や炎症から神経細胞を保護してくれる作用があります。ケトン体も、空腹によって得られるメリットの一つだといえるでしょう。

* * *

週に1日でも、まとまった空腹の時間つくることで、内臓の働きがよくなり、下痢や便秘、アレルギーや体調不良などの改善、生活習慣病の予防などの効果が期待でき、さらに、活性酸素がもたらす細胞の老化や病気を予防することができるようになるなど、いろいろなメリットがあります。

最近、胃腸が疲れている、下痢や便秘、血行が悪いなどの症状がある人は、空腹の時間をつくってみるといいかもしれません。

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青木 厚(あおき・あつし)
医学博士。あおき内科 さいたま糖尿病クリニック院長。自治医科大学を経て、2015年青木内科・リハビリテーション科(2019年に現名称に)を開設。糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病が専門。リンスリン離脱やクスリを使わない治療に成功するなど、成果を挙げている。自身も40歳のときに舌がんを患うも完治。食事療法を実践してがんの再発を防いでいる。


 

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