文 /小林幸子

小林幸子の「幸」を招くルール

ファン歴50年以上の方はもとより、若者やネットユーザーからも「ラスボス」と称され、幅広い層に圧倒的な人気を持つ小林幸子さん。小林さんの「今が楽しい、自分らしい人生」をおくるための秘訣とは? 齢を重ねるたび、元気と勇気、パワーを増し続ける、ラスボス流「言葉の魔法」を初披露!

ラスボスは何度も進化する

知識やテクニックだけじゃない。大切なのは“志”が立派かどうか。次々と未知の世界の扉を開けて新たなことに挑む、その原動力はどこにあるのか。そして、進化を重ね続ける秘訣とは?

ルール17

このメッセージは小林幸子さんの直筆です。

人生がうまくいかない時、仕事に失敗した時……自分が八方塞がりのように感じてしまう。よくあることだと思います。私も、事務所騒動の時はそうでした。

「四面楚歌っていうのは、こういう時に使うんだな」と妙に納得したのを覚えています。こんな時、皆さんならどうします?

私は、もがきまくりました。

だってこのまま終わるのは悔しいでしょ?

でも不思議なことに、いろいろともがいていたら、自分を取り囲んでいる壁が、完璧じゃないことに気づいたんです。最初の頃は、穴ひとつないように感じていましたが、それは自分でそう思い込んでいただけで、いろんなところに穴がありました。しかも、その先から温かい灯りが漏れていて、道が拓けているようでした。

その道は茨の道かもしれない。でもその道を進めばその先に何かがある。だったら、ウジウジとどまっているより、一歩踏み出したほうが、人生は楽しくなります。

先に触れましたが、この時、さだ兄に作ってもらった歌が、『茨の木』(作詞・作曲/さだまさし)でした。

《名も無い花などないように 喩え誰にも気づかれなくても 必ず花は咲く それでいいじゃない いつか花は咲く それでいい》

茨の木だって花は咲くんです。バラがそうですよね? 

棘に傷つきながらも道を進んでいけば、美しいバラの花に出会えるんです。

『茨の木』を「僕の歌」と言う少年との出会い、とあるコンサートで、『茨の木』を歌った時のことです。ステージが終わり、会場をあとにしようとすると、出待ちをしているファンの中に若い子がいる。

よく見ると、まだ中学生ぐらいの男の子です。

「幸子さん、おつかれさまでした」

と声をかけてくるので立ち止まると、こう続けたんです。

「茨の木、ありがとうございます。あれ、僕の歌です」

「僕の歌」って不思議なことを言うな、と思って理由を尋ねると、「僕、福島の出身なんです」という答えが返ってきました。

『茨の木』は、自主レーベル「サチコプレミアレコード」から出した最初のシングル。発売は2012年10月。そう、東日本大震災の翌年です。

「でも、もう帰る家がありません。家族も皆、いなくなりました」

その男の子は、東京の親戚の家に身を寄せていること、そこから学校に通わせてもらっていることを教えてくれました。

「誰もいなくなったけど、僕、学校を卒業したら福島に帰ります。福島に帰って、何でもいいから福島の役に立つ仕事をしたいんです」

「茨」に自分を重ね合わせたのでしょうか。

私はその子に言いました。

「そうだね。でもね、茨の木ってね、茨っていうけどバラの花が咲くんだよ。だからがんばるのよ」

元に戻ることと戻らないものがあります。

思い出は残っても、もう新しい思い出はつくれません。

なくなった家を建て直すことはできても、そこにあった温もりは戻ってきません。

でも、じたばたもがき続けていれば、きっと道は拓ける。

私もまた、その子に自分の姿を重ね合わせたことを覚えています。

一、八方塞がりのようでもいろんなところに道はある

一、ウジウジとどまるより踏み出すほうが人生は楽しい

一、傷つきながらも進めば美しい“バラの花”に出会える

小林幸子(こばやしさちこ)
1953年、新潟県生まれ。64年、『ウソツキ鴎』で歌手デビュー。その後、長く低迷期が続いたが、79年、『おもいで酒』が200万枚を超える大ヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞をはじめ数々の賞を受賞。同年、NHK紅白歌合戦に初出場。以来、34回出場し、その「豪華衣装」が大晦日の風物詩と謳われる。近年は、若者やネットユーザーの間で、「ラスボス」と称されるようになり、ニコニコ動画への「ボカロ曲」の投稿やアニメ『ポケットモンスター』の主題歌を歌うなどして、“神曲”を連発している。

ラスボスの伝言
~小林幸子の「幸」を招く20のルール~

小林幸子 著
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