新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。
「牛乳は体にいい」信仰が逆効果の例も!
ある人にとってはなんともない食べ物が、別の人にとっては害をもたらすことがあります。アレルギーはその最たるものです。
以前、私のクリニックに関節の痛みに悩む女性がやってきました。リウマチでもなく、原因がわからずに長く苦しんでいたようです。
詳しく調べてみると、牛乳と卵白に非常に強いアレルギー反応が見られました。そこで、それらの摂取をやめてもらうと症状はきれいに消えてしまいました。
その女性は「牛乳は体にいい」と信じ、毎日せっせと飲んでいたそうで、それが逆効果だったわけです。
最近、自閉症の子どもが増えていますが、これも食べ物と無縁ではありません。
自閉症の子どもの尿を調べると、牛乳のカゼインや小麦粉のグルテンなどのタンパク質が代謝されたものが検出され、一部、腸管から血液に入り脳に運ばれることがわかっています。
これらの食べ物が、代謝の過程で特定の子どもたちの体に悪さをするのです。
実際に、カゼインが出てくる子は牛乳の摂取を、グルテンが出てくる子は小麦粉の摂取をやめてもらうと、多動症などの症状がかなり改善されるケースが報告されています。
このように、同じ自閉症であっても細部は多様。自閉症に限らず、どんな病気に関しても、一人ひとりが自分の食事について、自分で考えていかねばなりません。
「鉄分補給」の必要がない男性と必要な若い女性
ちなみに、男性は「鉄分補給」は必要ありません。ところが、彼らはレバーなどが好きで、むしろ鉄過剰に陥っています。
鉄過剰は、全身の酸化ストレスを増やす原因となります。
「肝臓を守るために、酒を飲むときはレバーを食べるようにしている」というのは、相当トンチンカンな行為です。
一方で、生理がある若い女性は、鉄分が足りなくなりがちですから、オジサンとは違ったフォローが必要です。
私のクリニックの血液検査で調べるミネラル代謝の項目に、「血清鉄」と「フェリチン」があります。
血清鉄は血液中の鉄の量。言ってみれば財布の中のお金です。一方、フェリチンは鉄を貯蔵しているタンパク質の量であって、銀行の預金残高みたいなものです。
仮に、財布の中のお金が空になっても、銀行にたっぷり預金があれば大丈夫ですね。だから、血清鉄よりもフェリチンの値をよく見ていくことが重要です。
しかし、このフェリチンを健康診断で調べることはなく、生理がある女性は気をつけないとすぐに低下します。
このように、年齢や性別によって、あるいは個人が置かれた状況や生活環境によって、丁寧にチェックすべき項目は違ってきます。
しかしながら、一般的な健康診断にそれを望むことは難しい。
だからこそ、最後は一人ひとりの意識がものを言うのです。
もはや、あくまで「主治医は自分」という自覚を持つことが必要な時代なのかも知れません。
あなたの免疫力を上げてくれるのは、あなたしかいません。
あなたの健康を維持してくれるのも、老化を予防してくれるのもあなたしかいません。
現代人が生きていくなかで、最も大きな喜びや楽しみである一方、最も気を遣わなければならないのが食事です。
あなたの食事や生活スタイルを決めるのは医者でも栄養士でもありません。
最終的にはあなた自身で判断し、実践、管理していく気構えが必要なのは言うまでもありません。
満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。