新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。
ワクチンの目的と効果
インフルエンザの流行期前に、必ず予防ワクチンを打つという人もいるでしょう。
ワクチンは、その感染症の病原体(抗原)を弱毒化し、あえて少しだけ体に入れ抗体をつくるというものです。抗体ができれば、その感染症にかかりにくくなります。
しかし、一口にワクチンと言っても、その目的や効果はさまざまです。
結核予防のBCGワクチンや、はしかや風疹を予防するMRワクチンは、1回の接種でよく効きますし、集団を守る(社会に流行させない)という意味でも重要な役割を担っています。
一方で、インフルエンザワクチンはそうではありません。毎年、接種しなければならないし、接種してもかかってしまう人はたくさんいます。
それにしても、ワクチンを接種したにもかかわらず、インフルエンザに罹患してしまうのはなぜなのでしょうか。
ワクチンが効かない人
これには2つの理由があります。1つ目は、ワクチン接種をしても有効な免疫反応が起きないローレスポンダーと呼ばれる人がいること。
ワクチンという弱毒化した抗原を体に入れるのは、負荷をかける一種のトレーニングのようなものです。しかし、もともとそのトレーニングを受ける能力がない体だと、どうにもなりません。
2つ目は、ワクチンと流行するインフルエンザの型が一致していなかった場合です。
また、効果以前の問題として、ワクチンが持つ危険性も無視できません。
ワクチンは「培養」の技術でつくられます。その培養の過程では、専門用語で“コンタミネーション(contamination)”と呼ばれる汚染がどうしても起きる可能生があります。完全無菌化はできません。
そのため、マイコプラズマという、ウイルスと細菌の中間のようなものがワクチンに入り込んでしまう可能性も指摘されています。
これからも、新型コロナウイルスのような病原体はいろいろ出現してくるでしょう。
そのときに、きちんとした食事をして免疫力を整えておけば、たとえワクチンが開発されていない段階でも、感染しないか、感染しても軽症で済む可能性が高くなります。
では、ワクチンが開発されたらどうでしょうか。それを接種した効果を最大にできるのも、副作用を最小に抑えるのも、あなたの免疫力です。
不確実なワクチンに頼るより、まずは普段からの食事でしっかりした土台をつくっておきましょう。
満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。