とにかくカッとなり声を荒立ててしまう、イライラした後に落込む、急に顔が熱くなったり、汗が止まらない、どうしてこんなに頭が痛いの?など、30~40代の「プレ更年期」や、40~50代の「更年期」の女性には、自分ではどうにもならない不調が現れるもの。
実は、その不調には漢方がよく効くことをご存知でしたか?

私の不調にも漢方が効くのか知りたい!どうすれば根本解消できるの?
そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。

第20回のテーマは、「下痢」です。あんしん漢方監修医の木村好珠先生に教えてもらいました。

1.出かけていても、いつ腹痛が来るのか不安…下痢が怖くて外出もままならない

トモミさん(仮名)47歳の女性から質問を頂きました。

「半年くらい前からほぼ毎日下痢が続いています。最近では、朝起きた時から日中ずっと下痢が続くことが増えました。接客のパートをしていたのですが、あまりも下痢が続くため、パートも辞めなければならず、今は専業主婦です。しかし、家にいても下痢の症状は変わりません。

『気分転換に映画が見たいな』と思って出かけても、映画館でトイレばかり行っているので、結局映画も観られないんです。外出先で突然お腹が痛くなってトイレに駆け込んだけれど、トイレが大渋滞…顔面蒼白になり、その場で倒れそうになるという経験を何度もしました。結局そのときは息子に付き添ってもらって男子トイレに…。

そんな、いつも突然やってくる腹痛の波。そして、緊急時のトイレの確保のことを考えると、外出が怖くて引きこもりがちになってしまいました。病院に行って下痢止めを処方してもらったのですが、効果を感じられません。このままずっと下痢が続くのでしょうか?」

ご質問ありがとうございます。下痢や腹痛の症状は突然やってくることも多く、予期せぬことなので辛いですよね。いつやってくるかわからない腹痛のことを考えると、家から出たくないと考えるようになり、不安になってしまったのですね。

通常、下痢の症状は細菌やウィルスが原因で起こるのですが、更年期症状の下痢はそれらの原因に関係なく起こります。

更年期がやってくると女性ホルモンが減少していくことから、ホルモンバランスの乱れが生じて自律神経に影響を与えてしまい、イライラや不安・体の諸症状など様々な更年期症状が出てきます。下痢や腹痛もその症状の一つです。

ただし、更年期の下痢は慢性化してしまう可能性もあり、長期間にわたって下痢の症状に悩んでいる人も少なくありません。

2.更年期の下痢の原因はホルモンバランスの乱れと冷え

更年期が原因で起こる心と体の症状は、ホルモンバランスの乱れと体の冷えが大きく関係しています。

更年期にはエストロゲンなどの女性ホルモンが減少することによって、ホルモンバランスに乱れが生じてしまいます。すると、ぜん動運動など腸の働きを司っている自律神経に影響が出てしまうのです。

また、更年期のホルモンバランスの乱れで、自律神経に乱れが生じてしまうことから、体温調節がうまくいかずに体が冷えることがあります。

体の冷えも下痢につながってしまうことから、下痢が慢性化しやすくなってしまう可能性が高くなるのです。

3.更年期の下痢を根本から解消したい時は漢方がおすすめ

更年期の不調の治療法のひとつに、ホルモン補充療法があります。これは、不足しているエストロゲンを薬で補い、ホルモンバランスの乱れを和らげていく方法です。 効果もありますが、同時に副作用などのリスクもありますので、通院して治療する必要があります。

ホルモン療法は怖いという方や、通院する時間がないという方には、漢方の考え方によるアプローチがおすすめです。

3-1.「五味」を意識した食事で体を整える

下痢が続くと、どうしても食欲も落ちてしまいがち。でも、下痢をしている時こそ、栄養バランスを考えながらきちんと3食の食事を摂ることが大切です。

漢方の考え方の1つに「五味」(酸っぱい、苦い、甘い、辛い、塩辛い)があります。この5つの味を上手に食事に取り入れながら、バランスの良い食事をするように意識してみましょう。

3-2. 白湯を飲む

下痢をすると、体内から水分が奪われてしまうので、水分補給をすることが大切です。この時、冷たいお水を飲んでしまうと、体を冷やす原因になってしまいますし、お茶やコーヒーではカフェインの影響も気になります。

そこで、おすすめの水分は「白湯」です。沸かしたお湯を飲み頃の温度まで冷まして、水分補給をしていきましょう。特に朝起きてすぐに白湯を飲むと体も温まりますし、きちんとした排便のリズムもつきやすくなるのでおすすめです。

3-3.ストレスを溜め込まない暮らしを心がける

更年期の下痢症状を緩和するためには、ストレスを溜め込まないことも大切です。「腸は第2の脳」と呼ばれることもあるほど脳と密接な関係があることから、私たちが心にストレスを溜め込んでしまうと、腸も連動してストレスを感じ取ってしまいます。ですから、できるだけリラックスした時間を持つように意識しましょう。

ストレスを発散のためには、次のようなことがおすすめです。

  • 散歩をする
  • 湯船に長く浸かる
  • リラックスした時間を過ごす
  • 好きな香りのアイテムを持つ
  • 10分でも自分のためにお茶を入れる時間を作る

このように、自分のために好きなことをする時間を増やすことで、心のリラックスにつながります。

3-4.体を温める

更年期の代表的な症状として「体の冷え」の症状があります。「体が冷えてしまうと血の巡りが悪くなる」と言われるように、体が冷えると体内循環が滞ってしまい、下痢の症状につながる可能性があります。

体を温めるためには、次のことを意識しましょう。

  • 下腹部に貼るカイロをつける
  • 冷たい飲み物を飲み過ぎない
  • ひざ掛けなどで下半身を温める
  • お風呂で湯船にゆっくり浸かる

体の冷えからくる下痢を防ぐためには、日常生活の中で「体を温めること」を意識することが大切です。

3-5.漢方薬で体質改善する!

「いったんよくなっても、またすぐに同じ症状をぶり返してしまう」「体質から根本改善したい」

そんな方には漢方薬がおすすめです。

漢方は、人間の体の営みに即した自然の摂理を利用した治療法です。自然の恵みである動植物や鉱物の有効成分を見出して、それを人間の心身の症状の改善に役立てるために、長い歴史を経て、実際に効果のあるさまざまな処方を確立してきました。そのため、一般的に、西洋薬よりも副作用は少ないと言われております。

そして漢方は、表面に出ている症状や苦痛を緩和する対症療法だけでなく、不調の原因となっている体質を改善することを目的に働きますので、根本的な解決につながります。ですので、同じ症状を繰り返したくないという思いにも応えてくれます。

バランスの良い食事や適度な運動を実践するのは難しい…という場合も、漢方薬なら、ご自身の症状や体質に合うものを毎日飲むだけですので、無理せず継続することが可能です。

そこで、下痢に悩む女性におすすめの漢方薬をご紹介します。

<下痢に悩む女性におすすめの漢方薬>

・人参湯(ニンジントウ)
更年期の下痢で悩んでいる人におすすめなのが「人参湯」です。
人参湯は、体力があまりなく、胃腸が虚弱で、下痢や軟便傾向にある人、冷え性の人におすすめです。人参湯には、体を温める成分である乾姜(カンキョウ)や人参(ニンジン)が配合されているため、全身と手足などの末端、お腹周りが冷える人にも向いています。 
・真武湯(シンブトウ)
更年期の下痢とともに、体のだるさやめまい、冷え性で悩んでいる人におすすめなのが「真武湯」です。真武湯は、体を温める成分である附子(ブシ)が配合されているため、冷え性に効果が期待できます。そのほかにも生姜(ショウキョウ)や芍薬(シャクヤク)などが配合されており、更年期の下痢から起こる倦怠感や動揺、立ちくらみなどの緩和におすすめです。
・大建中湯( ダイケンチュウトウ)
冷えてお腹が痛み、排便障害がある方に最適な漢方は「大建中湯」です。腸内を強力に温める作用があり、下痢にも便秘にも両方に使える漢方です。
・五苓散(ゴレイサン) 
水滞を改善する代表的な漢方が「五苓散」です。喉の渇きを感じていたり、天候が体調に作用する人におすすめの漢方です。浮腫など、“水”に関わる色々な症状に効果があります。

ただ、漢方薬はその人の体質に合っていてこそ効果が現れるものです。体質に合っていないと、効果が見込めないだけでなく、副作用がおきることもあります。自分に合う漢方薬を選ぶのはなかなか難しいものですが、最近ではA Iを利用した「オンラインA I漢方」などのサービスも充実してきましたので、こうした専門的なサービスを利用するのもよいでしょう。

4.更年期の辛い下痢は漢方で改善できる

閉経前後で10年ほど続くと言われる更年期の期間は、様々な体調の変化が訪れます。その中でも、下痢の症状は予測がつかないことから、日常生活に支障をきたすこともありますよね。

そんな時こそ、ゆっくりと体の調子を整えてくれる漢方薬がおすすめです。漢方薬を服用しながら、食生活や生活習慣の改善をしつつ、辛い更年期の症状から起こる下痢の症状を乗り切りましょう。

<この記事を書いた人>

精神科医/漢方医 木村好珠
渋谷金王坂クリニック非常勤医、一般社団法人国際統合治療協会理事
医学部在学中より東洋医学を学び、精神科と東洋医学科が充実している慶應大学病院での勤務を経て、西洋薬の即効性等と漢方薬の根本的な治療をバランスよく使い分ける事を信条とする。
渋谷の漢方内科で非常勤医として勤務する傍ら、テレビや雑誌、インターネットテレビ、Webメディアなどで、精神疾患、心理学、生活習慣病など様々なテーマを精神科医・漢方医の立場で解説も行う。
・木村好珠のオンライン診療:https://www.konnozakaclinic.com/service/fusion-kimura/
・木村好珠監修あんしん漢方: https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=221432a9sera0020

記事内に登場した「あんしん漢方」とは?
「お手頃価格で不調を改善したい」「副作用が心配」というお悩みをお持ちの方のために、医薬品の漢方を、スマホひとつでご自宅にお届けするサービスです。AI(人工知能)を活用し、漢方のプロが最適な漢方を選別。オンラインでいつでも「個別相談」可能。しかも「お手頃価格で」ご提供。相談は無料。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方)

 

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