文 /小林幸子
小林幸子の「幸」を招くルール
ファン歴50年以上の方はもとより、若者やネットユーザーからも「ラスボス」と称され、幅広い層に圧倒的な人気を持つ小林幸子さん。小林さんの「今が楽しい、自分らしい人生」をおくるための秘訣とは? 齢を重ねるたび、元気と勇気、パワーを増し続ける、ラスボス流「言葉の魔法」を初披露!
ラスボスは何度も進化する
知識やテクニックだけじゃない。大切なのは“志”が立派かどうか。次々と未知の世界の扉を開けて新たなことに挑む、その原動力はどこにあるのか。そして、進化を重ね続ける秘訣とは?
ルール20
「ああしたい」「こうなりたい」って思っても、そう簡単にはいかないのが世の常。55年も芸能生活を続けてきたことを「すごい」と褒めてくれる人がいるかもしれませんが、10歳でデビューした時には、こんなふうになるとは夢にも思っていませんでした。
私が何年やってきたとか、いろんな賞をいただいたとか、「ラスボス」と呼ばれるようになったとか、それはあくまで結果であって、すでに過去のこと。
また、いろんな方に今までの私の活動や功績を評価していただいていますが、それも過去の栄光のようなものです。
もし、これから先のことが紙に書いてあって、その通りになったとしたら……。日々、何の刺激もない毎日になってしまいますよね?
それよりは、「これから先のことは、まったくの白紙」と思って、「いったい何が起こるのかな」とワクワクしながら過ごしたほうが、人生は楽しめると思うんです。
「幸子さんは将来、どこに向かっていくんですか?」
いろんなことをやっているせいか、最近、こんなふうに尋ねられることが増えました。私にもわかりません。
こっちへ行こう、あっちに行ってみよう、と決めているわけではありません。出会った人によって、道は変わるもの。出会いの数だけ可能性が広がっているとしたら、ますます人生って面白そうじゃありません?
これは以前、作家の家田荘子さんに教えていただいたんですけど、「この人には、いいところがたくさんあるから一緒にいよう」と考えるのは、その後、うまくいかないことが多いんですって。
逆に、白紙の状態からスタートすれば、「いいところ」を見つけるたびに、「なんていい人なの!」とプラス評価が増えていきます。
目の前の事実は変わっていませんが、見方ひとつで、人は幸せにも不幸にも生きられるものなんです。
「自分に都合のいい未来」を期待しない
「理想の未来図」をしっかりと描き込んでしまうと、そうならなかった時に、その出来事がすべてマイナスになってしまいます。
「幸せ」が目の前にあっても、「自分の理想と違う」と避けてしまう人も多いんじゃないかしら?
「上を見ない」ということではありません。
「自分に都合のいい未来」を期待しない、ということです。理想で自分を縛ってしまうよりは、未来を白紙にすることで、ずっと自由でありたい。
とはいえ、私自身、“人生の理想”は描いていませんが、“人生の目標”はきちんと持ち続けています。
それは「健康で歌を歌い続ける」ということ。簡単なように思われるかもしれませんが、これって実はすごい大それた目標だと思っています。
ちなみにデビュー以来55年間、病気で休んだことがないことが、私の密かな誇りです。
いくら健康に注意していても、突然病気になることだってある。突然、声が出なくなった歌手を、私は何人も見てきました。
もし私の声が出なくなったら?
その時は、歌手を引退する時です。未来は「白紙」だから、その時が来ても、そのことを「不幸」とは思わないでしょう。
そんなことを考えるよりは、いつ終わりが来てもいいように、これからも私は、その日、その日を、一生懸命に生きていきたいと思います。
一、「理想の未来図」を描き込むと自分を縛ることになる
一、理想は描かなくても目標はきちんと持ち続ける
小林幸子(こばやしさちこ)
1953年、新潟県生まれ。64年、『ウソツキ鴎』で歌手デビュー。その後、長く低迷期が続いたが、79年、『おもいで酒』が200万枚を超える大ヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞をはじめ数々の賞を受賞。同年、NHK紅白歌合戦に初出場。以来、34回出場し、その「豪華衣装」が大晦日の風物詩と謳われる。近年は、若者やネットユーザーの間で、「ラスボス」と称されるようになり、ニコニコ動画への「ボカロ曲」の投稿やアニメ『ポケットモンスター』の主題歌を歌うなどして、“神曲”を連発している。
ラスボスの伝言
~小林幸子の「幸」を招く20のルール~