文 /小林幸子
小林幸子の「幸」を招くルール
ファン歴50年以上の方はもとより、若者やネットユーザーからも「ラスボス」と称され、幅広い層に圧倒的な人気を持つ小林幸子さん。
小林さんの「今が楽しい、自分らしい人生」をおくるための秘訣とは?
齢を重ねるたび、元気と勇気、パワーを増し続ける、ラスボス流「言葉の魔法」を初披露!
ラスボス式「人の惹きつけ方」
知識やテクニックだけじゃない。大切なのは“志”が立派かどうか。次々と未知の世界の扉を開けて新たなことに挑む、その原動力はどこにあるのか。そして、進化を重ね続ける秘訣とは?
ルール12
感性のアンテナを磨きなさい。そう簡単に言う人がいますけど、いくら磨いても自分ひとりのアンテナには限界があると、私は思っています。何でもそうですけど、自分でできることは限られていますよね。
気がつくと私、「へー」とか「ふーん」って相槌をよく打ってるんです。これは、周囲のスタッフの提案に対してです。
でも否定的な相槌は打ちません。
で、決まって最後にこう尋ねるんです。
「ねえ、それって面白い?」
「面白いです!」
こう自信満々に返答されれば、即決まり。ニコ生への出演もこのやりとりで決めました。
コミケに参加した時もそうです。コミケなんてまったく知らなかったけど、スタッフの「面白いです!」のひと言を信じました。
そりゃあ、無理難題に対しては、たまに言いますよ。
「おい、私を誰だと思ってるんだ」って。
もちろん冗談。最後にはやっぱり、「ねえ、それって面白い?」と尋ねている自分がいます。
2014年に初めて参加したコミケの時には、他の人たちと同様、ブースを確保して、ボカロ曲『千本桜』などを収録した「ボカロ歌ってみたミニアルバム『さちさちにしてあげる♪(音符)』」を手売りしました。
予習はたくさんしましたが、それは他のお仕事と同様。いくら自分が楽しみたいからといっても、郷に入っては郷に従え。
新曲の練習をするのと同じような気持ちで、コミケの先輩たちにお話を伺い、ルールをマスターした上で臨みました。
これが、「面白がる」ための必要最低限の準備でしょうか。
スタートしてすぐにCDが完売
おかげさまで、スタートから約3時間で用意した1500枚のCDが完売しました。
列に並んだのに、CDを買えなかった方が1000人ほどいて、お詫びに握手して回ったんですが、あの時は本当にごめんなさいね。
翌年も連続して出展し、目一杯、コミケの雰囲気を楽しみました。
もし、私ひとりのアンテナに触れたものだけを選んで仕事をしていたら、こんな体験はできなかったでしょう。
でも、自分の仲間を増やしていけば、その分、アンテナも増え、思いもよらなかった体験ができる。
もちろん、感覚は違います。世代間ギャップもある。ニコ生だって、コミケだって、最初は何を言っているのかわからない。
でも「あなたとは感覚が違うから」といって、その人のアイデアを遠ざけていたら、いつまでも自分の殻を破ることはできません。それよりは、「感覚が違うからこそ面白い」と思ったほうが、人生は確実に楽しくなります。
なぜ大御所なのに、そんなに素直に言うことを聞くのかって?
裏があるんじゃないかと誤解していると思うのですが、裏なんかないない。
自分で言うのもなんですが、ものすごい単純。素直です。素直すぎて、素直だと受け取られないのかもしれませんが。
素直ってラクですよ。スタッフ(仲間)のアドバイスに無条件に乗れるのも、素直のなせるワザです。
一、提案を否定せずに「面白い!」のひと言を信じてみる
一、他人と自分の感覚が違うからこそ、人生は楽しい
小林幸子(こばやしさちこ)
1953年、新潟県生まれ。64年、『ウソツキ鴎』で歌手デビュー。その後、長く低迷期が続いたが、79年、『おもいで酒』が200万枚を超える大ヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞をはじめ数々の賞を受賞。同年、NHK紅白歌合戦に初出場。以来、34回出場し、その「豪華衣装」が大晦日の風物詩と謳われる。近年は、若者やネットユーザーの間で、「ラスボス」と称されるようになり、ニコニコ動画への「ボカロ曲」の投稿やアニメ『ポケットモンスター』の主題歌を歌うなどして、“神曲”を連発している。
ラスボスの伝言
~小林幸子の「幸」を招く20のルール~