文・写真/山本益博
【私のお気に入り~第117回】
東京・京橋のパティスリー
『イデミ スギノ』
決して支店を出さず、デパートからの誘いにも乗らず、ひたすらケーキひとつひとつを自らの手で仕上げる。そんな稀有なパティスリーが、東京・京橋に店を構える『HIDEMI SUGINO(イデミスギノ)』です。
フランス語は「H」を発音しませんので、「イデミスギノ」と呼びます。シェフの杉野英実さんは、かつて修業していたパリの『ペルティエ』で、「自分の名前を冠した店でケーキを売るのであれば、ひとつひとつの菓子に責任を持たなくてはいけない」と教わったと言います。
杉野シェフが手がけるケーキの完成度の高さ、洗練の極みのような色彩とフォルムの美しさは比類がありません。「アンブロワ ジー」「ジオメトリー」「スーボワ」「ジャドウ」など、ムースの菓子は、口に運んだ瞬間、瞬く間に香りだけを残して、クリームも果物も消えていっ てしまいます。杉野シェフが手がけるムースの菓子は、おそらく世界一といっても過言ではないでしょう。
杉野さんは関西出身ですが、阪神・淡路大震災を機に東京へ進出しました。持ち帰り用に店頭売りもしていますが、杉野シェフの願いは「イートイン」で味わってもらうこと。それは、お菓子は温度が何より大切という信念からです。ゆえに、評判の高いムースの菓子はイートイン限定です。
店は11時オープンですが、好きな菓子をテーブル席でゆっくり楽しみたいというお客さんで、連日、開店前から店の前に列ができます。皆さん、ひとつでは足りず、ふたつは召し上がっていますね。女性客が多い中、ひとりで来店する男性客もよく見かけます。
【イデミスギノ (HIDEM SUGINO)】
住所/東京都中央区京橋3-6-17 京橋大栄ビル1F
電話/03-3538-6780
営業時間/11:00-19:00(L.O. 17:30)
定休日/日曜・月曜
文・写真/山本益博