撮影/杉原賢紀 取材・文/前川亜紀 

2026年2月、日本医療政策機構は2025年12月から2026年1月に全国の20歳以上の男女1,000名を対象に世論調査を実施し「日本の医療に関する世論調査」を発表しました。これによると、約80%の人が「健康の維持や病気の予防のために、健康管理を自分自身で取り組むべき」と回答しています。

情報があふれる時代、「体にいいことを、無理せずに続けたい」と考えている人は多いはず。そこで注目したいのが、このたび大塚製薬が世界で初めて確認した、植物由来成分「ケンフェロール」。2026年2月25日に行われた『大塚製薬ケンフェロール研究説明会』から、その知られざる魅力について紹介します。

※参考/日本医療政策機構「日本の医療に関する世論調査」

日々のストレスや飲酒、喫煙習慣などで細胞内は常に低酸素状態に

ポカリスエットやカロリーメイトで知られる大塚製薬は、病気の治癒や健康増進のための研究を幅広く行なっています。その大塚製薬が今回注目をしたのが植物由来成分のケンフェロールです。これが細胞内にあるミトコンドリアのエネルギー産生を高める効果があることを、世界で初めて実証しました。

「大塚製薬ケンフェロール研究説明会」登壇者たち。(写真左から)ファシリテーターを務めた、TAZ Inc.社長・ジーンクエスト取締役ファウンダーであり、生命科学者・高橋祥子さん。大塚製薬先端科学研究所の池田泰隆所長。ピッツバーグ大学外科学教授/計算システム生物学教授/宇宙生体医科学センターのAfshin Beheshti(アフシン・ベヘシュティ)所長。

私たちの細胞内にあるミトコンドリアの大きな役割は、食事で摂取した栄養素(糖・脂質)と、呼吸で取り込んだ酸素を利用して、私たちの生命エネルギーを作ることにあります。

この生命エネルギーは、運動しているときはもちろん、休息時も必要です。心臓を動かし血液を循環させ、呼吸を行い、体温を36℃前後に保つほか、多くの生命維持活動に使われているからです。

大塚製薬がたどり着いた成分・ケンフェロールが働きかけるのは、ミトコンドリアがエネルギーを産生する能力です。これには酸素が大きく関わっています。生命維持に必要な酸素は、血液でミトコンドリアまで運ばれています。しかし、その利用能力は年齢によって低下しがち。また、細胞内はストレス、飲酒、喫煙、マスクなどの習慣によっても、さらなる低酸素状態にさらされます。

この“体内低酸素”ともいえる状況が続くと、ミトコンドリアの機能も落ちてしまうことになります。その「細胞の低酸素状態」に着目した大塚製薬は、酸素を利用する能力を高めることが、健康維持のカギを握るのではないかと考えました。

高地民族が高いパフォーマンスを維持できる秘密

そこで、メキシコやケニアなど標高2000メートルを超える山岳地帯に住む高地民族の食生活の研究を開始しました。彼らは、高地という低酸素環境で生活しながらも、常に高いパフォーマンスを発揮していることが知られているからです。そしてその秘密は食べ物にあるのではないかと考え、世界各地から341種類の高地食材を集めて分析したところ、西洋わさび葉由来のケンフェロールにたどりつきます。

大塚製薬先端科学研究所の池田泰隆所長。「2008年から研究を続け、やっとこの日を迎えました」と語る。池田さんが重視しているのは、体全体の本質的な課題にアプローチすることだ。
ケンフェロールが多く含まれる、西洋わさびの葉。大塚製薬は、ケンフェロールが体内で吸収されやすいように加工する技術を開発した。(PIXTA)

その後、大塚製薬は細胞試験を重ね、ケンフェロールが低酸素環境にある細胞に対して、酸素を効率よく利用し、エネルギー産生を高めていく可能性を認めます。

人がケンフェロールを摂取した後の変化についての実験も行いました。このプラセボ(偽薬)も用いた実験では、ケンフェロールを摂取した後に、心肺機能と睡眠の質の向上、活動量の増加などにつながったというデータも得ます。他にも、自律神経にまつわる指標の改善、天気痛の緩和、運動中の酸素利用効率向上、高強度の運動時の心肺負荷や筋肉の負荷軽減なども認められ、これまで9つの論文を発表しています。

中でも注目したいのは心拍数で、ケンフェロールを摂取すると、睡眠時、安静時、運動時において、心拍数の減少が認められました。心拍数と寿命は関係しており、生物は一生の総心拍数が約30億拍と決まっており、心拍数が少ないほど、寿命が伸びるとされています。

心拍数が少ない生物は長生きの傾向にある。例えば、心拍が1分間に6拍減ると、1年で312万拍減り、50年で1億5768万拍減る。これは、4~5年分の寿命に相当するというから驚く。

宇宙飛行士の老化についても注目されるケンフェロール

大塚製薬のケンフェロールの研究は、海外の最先端研究チームとの共同研究にもつながり、権威ある学術雑誌『Science』の特集記事にも掲載されています。会場にはピッツバーグ大学外科学教授/計算システム生物学教授/宇宙生体医科学センターのAfshin Beheshti(アフシン・ベヘシュティ)所長もかけつけました。

(左から)池田さんとアフシン・ベヘシュティさん。発表会は研究者同士が和気あいあいとしつつ進行する。

アフシンさんは「宇宙空間にいくと、飛行士たちは老化が加速します。それにはミトコンドリアが関わっており、その急激な老化の抑制に大塚製薬が開発したケンフェロールが働きかけるのではないかと、共同研究を行なっています」と語ります。

287日間の宇宙滞在をした宇宙飛行士が急激に老化してしまったことの解説。ケンフェロールはこのダメージの対策にも期待されている。

アフシンさんは、宇宙飛行士の老化の主な原因は多くありますが、微小重力と宇宙放射線だと言います。主にこの2つの要素が、ミトコンドリアにダメージを与えてしまうのです。そのため、国際宇宙ステーションに半年から1年滞在した宇宙飛行士は、帰還した直後、40歳の人でも体感的には80歳のような状態になってしまうそう。

宇宙飛行士の老化ダメージの研究のため、大塚製薬はアメリカ合衆国エネルギー省の傘下にあるブルックヘブン国立研究所を利用します。ここは、主に物理、生体医学、環境、エネルギー、国家安全保障に関する技術の研究を行う施設なのですが、製薬企業としての利用は初の事例とのこと、ケンフェロールの注目度の高さがわかります。

ケンフェロールについて、研究を続けた大塚製薬の池田さんは、「私の研究は、病気にならずに生涯を終える人を増やし、この世から健康にかかわる悲しみの涙を減らすことです」と長い道のりを振り返りました。

ケンフェロールの有効性を認めた池田さんが打った一つのメールで繋がったアフシンさんとの縁。これが、大塚製薬がアメリカの最先端研究所で研究する現在につながった。

私たちが生きている、ということは、常にミトコンドリアが酸素と栄養を利用し、エネルギーの産出を続けているということでもあります。人間は約37兆個の細胞からなり、ミトコンドリアは1個の細胞に数百個から2000個程度含まれると言われています。

老化に負けず、毎日をアクティブに生きていきたいと願う人にとって、ミトコンドリアのエネルギー産生能力を活性化する期待がされている成分「ケンフェロール」の存在は、非常に魅力的にうつるのではないでしょうか。


取材・文/前川亜紀 1977年生まれ。大学在学中より女性誌の編集者として活動。建築、医療、街づくり、家族、子育て、キャリアなどのテーマで取材を続けている。

 

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