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ワイン

人口7200人ほどの小さな村は、なぜ日本ワインの名産地になれたのか?|長野県高山村の挑戦

取材・文/鳥海美奈子

個性的な生産者が多々登場し、質も向上していることから、ブームが続く日本ワイン。なかでも長野県は冷涼で雨が少なく、ブドウ栽培に適した自然条件を備えていると、いま注目を集めています。

高山村は人口7200人ほどの小さな村

そのひとつ、県北部に位置する高山村は近年、ワイン用ブドウの新規就農者やワイナリー設立が相次いでいます。シャトー・メルシャンの「北信シャルドネ」、サントリーの「ジャパンプレミアム高山村シャルドネ」など高く評価されるワインが造られているため、ブドウのポテンシャルが高いと考えられているからです。
高山村は人口7200人ほどの小さな村です。松川渓谷沿いの扇状地では、昔からリンゴや生食用ブドウなど果樹栽培が盛んでした。
年間平均降水量は850mmと少なく、さらに砂礫土壌や火山灰土壌の傾斜地であることから水はけもよく、果樹栽培には向いています。

また年間平均気温11.8℃と冷涼で昼夜の寒暖差はありながら、西日があたるので日射量にすぐれるのも利点です。
しかし近年、農家の高齢化が進み、耕作放棄地の広がりが村にとっての大きな課題となっています。そこで付加価値の高い農作物であるワイン用ブドウに着目し、2006 年から「高山村ワインぶどう研究会」を立ち上げ、調査研究を行ってきました。

さらに、2011年には長野県で2例目となるワイン特区の認定を受けます。その結果、この10年間でワイン用ブドウ畑は3.1haから10倍以上の40haにまで広がったのです。

その高山村のワインを含む特産物を楽しむ会が今春、都内で行われました。

この日は村長も上京し、「信州高山村ワイン」の魅力をアピールした。行政も協力し、意欲的に取り組む。

この日は村長も上京し、「信州高山村ワイン」の魅力をアピールした。行政も協力し、意欲的に取り組む。

そこで振舞われたのが「信州たかやまワイナリー」のワインです。2015年、高山村に設立されたこのワイナリーは、村内13人のブドウ栽培者が出資して誕生しました。

左は信州たかやまワイナリーの「メルロー&カベルネ2017年」、右はカンティーナ・リエゾーの「チャオ・チャオ ロッソ・メルロー2017」。

左は信州たかやまワイナリーの「メルロー&カベルネ2017年」、右はカンティーナ・リエゾーの「チャオ・チャオ ロッソ・メルロー2017」。

醸造責任者の鷹野永一さんは、メルシャン勤務時代はボルドーに在住するなど抱負なワイン造りの経験を持ちます。
「それぞれが個性を発揮して、共鳴し合い、やがては地域全体が胎動するようなワインを造りたい」と話します。

「土地の個性と人の個性を生かしたワインを造りたい」と話す「信州たかやまワイナリー」の醸造責任者・鷹野永一さん。

「土地の個性と人の個性を生かしたワインを造りたい」と話す「信州たかやまワイナリー」の醸造責任者・鷹野永一さん。

さらにワイン特区を利用して生まれたのが「カンティーナ・リエゾー」です。生産者の湯本康之さんは同じく長野県飯綱町にある「サンクゼール」のワイン部門で働いたあと独立。「当時から、高山のブドウの質の高さに気づいていました。世界のワイン産地でも上位に入る場所と確信しています」と今後に夢を膨らませます。

クラウド・ファンティングを利用してワイナリーを設立した「カンティーナ・リエゾー」生産者の湯本康之さん。

クラウド・ファンティングを利用してワイナリーを設立した「カンティーナ・リエゾー」生産者の湯本康之さん。

アペリティフは「カンティーナ・リエゾー」のシードル。高山産のリンゴやブドウを原料に使う。

アペリティフは「カンティーナ・リエゾー」のシードル。高山産のリンゴやブドウを原料に使う。

2010年に観光の拠点「信州高山アンチエイジングの里 スパ・ワインセンター」がオープン

それらのワインに合う料理を提供してくれたのは、丸ビル内にある『サンス・エ・サヴール』料理長を皮切りにひらまつグループの取締役総料理長を務めた長谷川幸太郎さんと、人気のフレンチ『コム・ダビチュード』のオーナー・シェフをしていた釜谷孝義さんです。独立し、自らの店を立ち上げることになった長谷川さんは、「新しい店のコンセプトは日本、そして生産者の顔が見える食材を使うこと。その食材を探すなかで、高山村とも出会いました。ジビエの鹿や猪もいいですし、生ハムも素晴らしい。名産のリンゴも間違いなく美味しいです」と語ります。

フランス料理の世界大会「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」の日本代表シェフも務めた長谷川幸太郎さん。

フランス料理の世界大会「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」の日本代表シェフも務めた長谷川幸太郎さん。

その生ハムは、メルシャンなどに良質のブドウを提供するカリスマブドウ農家・佐藤明夫さんが農閑期に造るもの。佐藤さんは生ハム工房豚家「TONYA」というブランドで原木生ハムを販売しています。「人々に、魅力的な高山村に来てほしい。そのために村の名産を造ろうと考えました」と話します。

高山村のジビエや生ハムを使って、フィンガーハンドながら本格的なフランス料理が提供された。

高山村のジビエや生ハムを使って、フィンガーフードながら本格的なフランス料理が提供された。

高山村のリンゴを使ったデザートのタルトも「美味しい」と集った人々に評判だった。

高山村のリンゴを使ったデザートのタルトも「美味しい」と集った人々に評判だった。

村内には山田温泉もあり、観光の拠点「信州高山アンチエイジングの里 スパ・ワインセンター」も2010年にオープン。そこにはワインを始め季節の山菜やキノコ、地元の農作物や加工品が所せましと並びます。
春から夏の行楽に、ワインを楽しみつつ、高山村を訪れてみるのもお薦めです。

取材・文/鳥海美奈子
2004年からフランス・ブルゴーニュ地方やパリに滞在して、文化や風土、生産者の人物像などとからめたワイン記事を執筆。著書に『フランス郷土料理の発想と組み立て』(誠文堂新光社)。また現在は日本の伝統文化、食や旅記事を『サライ』他で執筆している。

 

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