新着記事

《儀式用宝飾水筒》 16世紀後半 トプカプ宮殿博物館蔵 トプカプ宮殿の華麗な宝物【トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美】 【娘の気持ち】理容師を目指したきっかけはしっかりとした両親の姿があったから。その進路に不安はなかった~その2~ 【娘の気持ち】理容師を目指したきっかけはしっかりとした両親の姿があったから。その進路に不安はなかった~その2~ 【娘のきもち】両親はともに理容師。休日に家族で過ごせない寂しさを忘れさせてくれたのは、祖父母の愛情だった~その1~ 【娘のきもち】両親はともに理容師。休日に家族で過ごせない寂しさを忘れさせてくれたのは、祖父母の愛情だった~その1~ 【老後を自宅で過ごしたいなら】「ケアマネジャー」知っておきたい基本のき 【老後を自宅で過ごしたいなら】「ケアマネジャー」知っておきたい基本のき 健康寿命を伸ばす「ニート生活」はじめてみませんか? 健康寿命を伸ばす「ニート(NEAT)生活」始めてみませんか?|医師がすすめる日常生活でできるエネルギー消費のススメ メープルシロップ カナダの名産品「メープルシロップ」はどうやってできる?| 首都オタワ近くのメープル農家を訪問してみた お墓の費用 約5割が150万円以下で購入、購入前に知っておきたいのはお墓の管理法|「お墓購入」に関する実態調査 お墓購入にかかった費用150万円以下が約5割|知っておきたい「お墓参り」と「お彼岸」の基礎知識 防水・防塵のタフな万能小型カメラ『LUMIX FT7』の実力をサライ編集長がタヒチで検証![PR] 『すべての病気は血管で防げる!』 人は血管から老化する|老化を招く4大悪は「喫煙」「高血圧」「脂質代謝異常」「高血糖」 美輪明宏 美輪明宏さん(歌手、俳優)「人には必ず役目がある。舞台を通して皆さんに活力を吸収していただくのが私の役目です」【サライ・インタビュー】

サライ本誌最新号

住宅特集アンケート実施中です!

別冊付録「大人の逸品カタログ」商品はこちらから

ピックアップ記事

  1. クラシックなデザインに足を止める人が多く、常にギャラリーが絶えない初代クラウン(1955年~)

>>過去の記事へ

サライの通販

>>過去の記事へ

夕刊サライ

一人前になるために、つくり続けたナムル(コウケンテツの料理コラム 第7回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。金曜日は「美味・料理」をテーマに、コウケンテツさんが執筆します。

文・写真/コウケンテツ(料理家)

母と一緒に料理中のスナップ。どんな野菜でもナムルをつくれるようになったら一人前。それが母の考え方でした。

人生、出会いがすべてだな、と思うんです。というのも、妻と出会っていなかったら、僕の料理家人生はなかったかもしれないから。

僕が料理家になって、初めての撮影現場。担当は男性の編集者でしたが、後輩の女の子の編集者を現場に連れてきました。実は、それが今の奥さん。おそらく、「コウさん、まだ撮影に慣れてないから、手伝ってあげて」みたいな感じで、編集さんが気を使ってくれたんでしょう。テキパキと手伝ってくれたおかげで、撮影はスムーズに進み、僕はすごく楽しく仕事を終えることができました。

大阪に戻って、撮影に関わってくれたスタッフのみなさんにお礼のメールを送ったんですが、そのまま彼女とはメールのやりとりが続き、お互いの仕事についての相談などをするようになりました。

あるとき、彼女からメールがきたんです。「本気で料理家としてやっていきたいなら、東京に出てきたら?」って。確かに、出版社は東京に集中しているので、大阪にいたら料理家の仕事はなかなかありません。でも、料理家としてやっていける自信もなかったし、上京するなんて考えてみたこともなかった。そもそも、お金が全然ない。正直にそう言ったら、「なんとかなるから大丈夫」って。えっ? 大丈夫かな、この子!? 会ったのも数回だけ。まさに青天の霹靂! 「料理家といってもキャリアがないし、修業もそこまでちゃんとしていないし」と言い訳めいた返事をしたら、「そんなこと言っていたら道が開けないよ!」って一喝。僕より5歳も年下の女の子に……。

母は東京へ出ることに反対しました。「いきなり行って、何ができるの? まだ軌道にも乗ってないでしょう」って。ずっと心配をかけっぱなしだった母。唐突な息子の言葉に、気を揉んだに違いありません。でも僕は、「大丈夫だから」という彼女の言葉を信じて、カバンをひとつで上京しました。そのとき、僕の財布に入っていたのは、全財産の5万円だけです。

上京する前日。母から「ナムルをつくってみなさい」と言われました。すごく簡単で、すごく難しい料理、それがナムル。僕は5種類のナムルをつくり、母に食べてもらいました。すると母は「これは水分が多い」「そっちは火の通りが甘い」とひとつひとつ、ダメなところを的確に指摘してくれたんです。

たとえば、定番のほうれん草のナムル。つくり方は単純で、ゆでてから水に取って水気を搾り、調味料で和えるだけ。でも、産地や時期によって、含まれている水分量やえぐみや苦味といった味が、全然違います。だから、そのときの野菜がどういう状態なのか、触ったり味をみたりして、ベストな味つけをしなければなりません。本当はナムルって、レシピが絶対に出せないものなんです。

どんな野菜でもナムルがつくれるようになったら一人前、それが母の考え方。「とにかく、東京では毎日、ナムルをつくりなさい」と言われました。母からの最高の餞別であり、宿題でした。

無事に上京した僕でしたが、彼女にまた怒られてしまいます。上京してすぐにやったのは、履歴書を買ってくること。お金がなくて、アルバイトしなくちゃと思っていたからです。それに、料理家としてやっていけるかどうかもわからない。頼りない僕に彼女は「何考えてるの? ここまで出てきてアルバイトって!」と、再び一喝。そんな時間があったら、いい料理をつくれるようになりなさい。料理家としてやっていくことに専念しなさい。年下の彼女から、そう言われたんです。

それからは、起床して朝食をつくって、彼女を会社に送り出したあとは、ひたすら料理の研究をする日々。母の言葉通り、ナムルは毎日毎日、つくり続けました。今日は近くのスーパーで、翌日は駅の向こうのスーパーで、ほうれん草を買ってくる。そしてナムルにする。ベストなゆで方、ベストな味つけ、正解はどこにあるんだろう。来る日も来る日も、ナムルナムルナムル。もう僕にはそれしかない、道を切り開くには……!

半年くらい経った頃でしょうか。そんな努力が実り、気づいたら手帳のスケジュール表は真っ黒になっていました。僕の仕事があまりにも忙しくなったので、彼女も僕のサポートにまわってくれました。

さらに時を経て、上京してから2年目くらいの、真夏の暑い日。母が仕事のついでに僕を訪ねてきました。わざわざ来てくれた母のために、僕はお昼ご飯の準備に取りかかりました。ゆでたそうめんと、色鮮やかな夏野菜のナムル。きゅうり、なす、トマト、ズッキーニをナムルにして、そうめんの上にのせて食べるんです。薬味として、ミョウガも一緒に添えました。

母に食べてもらうのは、緊張しました。しかも、夏野菜は水分が多いので、ナムルにするのがちょっと難しい。ところが、母が僕の料理を食べて、ぽつりとこう言いました

「よくここまで頑張ったね」

それから母は続けて、「今、あなたがたくさんの仕事をもらえている理由が、このナムルを食べてわかった」とも言ってくれました。やっと、母に一人前として認めてもらうことができた! 料理家として本当に独立できたんだ! そんな嬉しい気持ちがこみあげてきて、忘れられない日になりました。

文・写真/コウケンテツ(料理家)
1974年、大阪生まれ。母は料理家の李映林。旬の素材を生かした簡単で健康的な料理を提案する。テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。3人の子どもを持つ父親でもあり、親子の食育、男性の家事・育児参加、食を通じたコミュニケーションを広げる活動にも力を入れている。『李映林、コウ静子、コウケンテツ いつものかぞくごはん』(小学館)、『コウケンテツのおやつめし』シリーズ(クレヨンハウス)など著書多数。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

関連記事

  1. 日産 スカイライン2000GT-R|そのクルマはいつまでもココロ…
  2. ブリヤート共和国:日本の教科書にも旅行ガイドブックにも載っていな…
  3. トヨタ1600GT|そのミステリアスな存在は、気になって仕方ない…
  4. 地域密着型の企業スポーツで地域経済を活性化したい!(川合俊一の暮…
  5. プロレス体験でストレスを受け流す!「闘う本能」を呼び起こす!!(…
PAGE TOP