新着記事

南部鉄器のごはん鍋|蓄熱性と気密性の高い鉄器で新米をおいしく炊き上げる

昭和50年(1975)、国から伝統工芸品第1号の指定を受けたのが、岩手県の南部鉄器だ。17世…

【娘のきもち】娘の離婚にも気丈に振る舞う父。辛い経験を過去のものにできたのは父の言葉だった~その2~

取材・文/ふじのあやこ家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親…

【娘のきもち】今まで放任だったのに、専門学校に進みたい私を許さなかった父。父親は会話が成立しない人なんだと認識した学生時代を過ごし~その1~

取材・文/ふじのあやこ 近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中…

ゴルゴ13のすべてが今、明かされる!|連載50周年記念特別展「さいとう・たかを ゴルゴ13」用件を聞こうか…

取材・文/池田充枝孤高の超A級スナイパーとして圧倒的な存在感を放つゴルゴ13。本名、…

5分でわかる!いまさら聞けない「年金制度」基本のキ

文/中村康宏日本の社会保障制度の中核をなす「医療」と「年金」。医療費増加が社会問題になる…

大音楽家バーンスタインの破天荒でカラフルな祈りの音楽を聴く【林田直樹の音盤ナビ】

選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)今年はレナード・バーンスタインの生誕100年である。20…

江戸城4代天守はなぜ再建されなかったのか|幻となった不遇の城をCGで再現

家綱の叔父・保科正之が天守無用論を唱えて中止3代将軍家光が没し、嫡男家綱…

純銀製の玉盃|酒を注ぐと球体の中に餅つきうさぎが浮かぶ盃

酒を注ぐと銀盃の真ん中に、レンズのような「玉」が浮かび上がる。玉の中には、餅つきをするうさぎ…

腰痛改善は「お尻」の筋肉から!簡単ストレッチを紹介【川口陽海の腰痛改善教室 第1回】

文/川口陽海人生で誰もが一度は悩まされるという腰痛。もしあなたがなかなか治ら…

缶詰そのままはもう古い|「サバ缶」ブームを支える新しい食べ方

サバの缶詰、通称「サバ缶」の人気がすごい。2年ほど前からサバの人気が高まり始め、同時に手軽で安く…

サライ最新号

ピックアップ記事

>>過去の記事へ

サライの通販

>>過去の記事へ

美味

途絶えさせるにゃもったいない!「引越し蕎麦」の意外な由来【片山虎之介の蕎麦談義 第4回】

神奈川県川崎市にある『入船』は、今では珍しい出前専門の蕎麦店だ。店舗を構えてはいるが、ここで客が食事をすることはない。すべて注文を受けた商品を、バイクで配達するシステムで運営している。

文・写真/片山虎之介

春は引越しの季節である。私の隣りの家の住人も転居し、住んでいた家は売りに出された。

2か月間ほど空き家だった家に買い手がつき、先日、20代のご夫婦が、4歳の男の子を伴って、我が家に引越しのご挨拶にみえた。明るい、感じの良いご夫婦で、安心した。ご近所に、若い人たちが住んでくださるということは、うれしいものである。

今の季節はこんなふうに、あちこちで引越しの挨拶が交わされているのだろう。

ところで、引越し蕎麦という言葉があるが、私は半世紀以上に渡って生きていながら、残念ながら引越し蕎麦というものを食べたことがない。これは、私だけの特別な状況なのか、それとも世の中では、引越し蕎麦の習慣そのものが途絶えてしまったのか、よくわからない。

妻にも聞いてみた。彼女は関西の生まれだが、故郷にいるときも、東京に来てからも、引越し蕎麦を食べたという話は、一度も聞いたことがないとの返事だった。

いったい引越し蕎麦とは、どういうふうに差し上げたり、いただいたりするものなのか。そのマナーさえ、体験したことがないから、まったくわからないのだ。

そこで、引越し蕎麦とは、いかなるものなのか、調べてみた。

*  *  *

まず、新島繁さんの『蕎麦の事典』によると、引越し蕎麦は、江戸中期ごろから始まった、江戸を中心にした習慣だという。関西には、この習慣はない。

当時江戸では、引越しした際に、ご近所には蕎麦をふたつずつ、大家さんには5つを配って挨拶したとのこと。大正12年に起こった関東大震災のころまでは、ごく一般のこととして行われていたと記されている。

他の文献も当たってみると、少しずつ、引っ越し蕎麦のことがわかってきた。

明治維新から大正時代は、たしかに引越し蕎麦は、転居の際には欠かせないものとして定着していたようだ。引越ししてきた人が近所の蕎麦屋さんに依頼すれば、蕎麦屋さんは心得ていて、隣近所や大家さんに、2枚、5枚と決まりの数量を出前して、代金は移転してきた家に請求するというものだった。

江戸の昔にさかのぼると、天保6年(1835)に発行された『街廼噂』(ちまたのうわさ)という本には、江戸で引越しの際に蕎麦を配る理由は、二八蕎麦は2つでわずか32文、安上がりに済むことから始まったと書かれている。

また、江戸中期の国学者であった津村淙庵(つむらそうあん)が著した『譚海(たんかい)』には、江戸時代の第115代天皇である桜町天皇が、116代の桃園(ももぞの)天皇に譲位され、延亨4年(1747)に新造した上皇の御所に移られた際に供御(くご)として蕎麦を召し上がった、ということが記されている。

これは聞き書きという形で書かれているが、皇室でも江戸中期に、渡座(わたまし=貴人の転居)の際に引っ越し蕎麦が行われたという貴重な記録である。

*  *  *

これほど歴史のある引越し蕎麦なら、私たちの時代に絶やすわけにはいかない。近いうちに自分で蕎麦を打ち、挨拶返しに、お隣りの若いご夫婦にお届けしようと考えている。

逆・引越し蕎麦になるかもしれないが、それでいい。ここから始まって細く長く、お付き合いくださいという気持ちが伝わればいいのだから。

この記事をお読みの皆さんも、引越し蕎麦の古き良き伝統をよみがえらせて、殺伐とした現代の人間関係を、つながりの良い、しなやかでコシのあるものにしていこうではありませんか。

【今日のカバー蕎麦店】
『入船』
■住所/神奈川県川崎市川崎区昭和2-6-9
■電話/044-299-1395

文・写真/片山虎之介
世界初の蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web』(http://sobaweb.com/)編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。伝統食文化研究家。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)、『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)、『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新聞出版)などがある。

sobabanner

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

関連記事

  1. 蕎麦好きなら挑戦!「蕎麦にまつわる雑学クイズ」10問
  2. 落語家・柳家小満ん師匠が指南する「もり蕎麦をいただく作法」
  3. 「もり蕎麦」の旨い店7軒に“蕎麦の旨さの秘密”を探った
  4. 西馬音内そば|じわり人気の“冷たいかけそば”【知られざる秋田・羽…
  5. 江戸っ子は蕎麦もうどんもコレで食べてた!滋味深い江戸の味噌つゆ「…
PAGE TOP