遊び心溢れるふたつのカレーは満々と水をたたえるダムを象徴
扇沢レストハウス「アーチダムカレー」(長野県大町市)
昭和38年(1963)、7年の歳月をかけて完成した黒部ダム。6月26日から観光放水も始まり、その迫力と清涼感は国内外の観光客を魅了する。日本最大級の規模を誇るアーチ式ドーム型ダムがせき止める水量は約2億トン。そのダムの形状を表現しているのが、名物のダムカレーである。
日本各地のダムに因んだダムカレーは平成21年頃から増え始め、今や200に迫るといわれる。そもそもダムカレーはどのように生まれたのか。その鍵を握るのが、黒部ダムの長野県側入口に当たる電気バスの停留所・扇沢駅にある。
「黒部ダム完成後の昭和40年代初頭、扇沢駅の2階にあった扇沢大食堂(現『扇沢レストハウス』)で提供されていたのが『アーチカレー』でした。当時、食堂の料理長がご飯をダムの堰堤の形に造形するため、市内の鉄工所に金型を注文して作ってもらったそうです。遊び心がありますよね」と話すのは、黒部ダムカレー推進協議会会長の柏原清さん。
その金型の形は今もほとんど変わらず、現在も「アーチダムカレー」として不動の名物となっている。長野県産の茸をたっぷり使ったカレーはスパイスを効かせた今風の味わいだ。
扇沢レストハウス
長野県大町市平2117
電話:0261・22・3612
営業時間:8時30分~15時
定休日:12月~4月中旬 100席。
交通:JR大糸線信濃大町駅より扇沢線バスで約40分
黒部ダムレストハウス「黒部ダムカレー」(富山県立山町)
このダムカレーをご当地カレーとして浸透させたいと現在、大町市の18店舗で提供しているのが「黒部ダムカレー」である。火付け役である柏原さんによると、ご飯をダムの堰堤の形にする、カレーのルーは堰堤の外側に流し込む、観光遊覧船に見立てたトッピングをするなどの5か条を守れば、味や具材は不問という。
黒部ダムを目の前にする『黒部ダムレストハウス』のそれは、エメラルドグリーンの湖水に似せた辛口のグリーンカレーだ。世紀の大工事の偉業を前に、愛され続けるダムカレーの堰堤を崩し、放水を想像しながら味わいたい。
黒部ダムレストハウス
富山県中新川郡立山町芦峅寺
電話:080・2105・4886
営業時間:10時~15時(売店は9時~16時)
定休日:12月~4月中旬 80席。
交通:扇沢駅より電気バスで約16分、黒部ダム駅下車後、連絡通路経由で徒歩約5分
撮影/宮地 工
※この記事は『サライ』本誌2024年8月号より転載しました。