おでんの世界は多彩になり、「出汁」の違いだけでも選択肢の幅は広がっている。未知なる味わいの「出汁」を楽しめる厳選した7軒を紹介したい。

進化系おでんの真骨頂 鴨が織り成す逸品おでん

びのむ(東京・西麻布)

「東京一、美しい」と称されるおでん鍋。車麩、大根、トマト、ロールキャベツなど常に温められているタネを中心に静かに並ぶ。

西麻布の路地に佇たたずむ古民家が、ビストロおでんの先駆『びのむ』だ。2008年の開店以来、鴨コンソメ出汁のおでん一筋。じんわりとコク深く、だが素材の邪魔をしない絶妙なバランスの出汁に魅了される人が後を絶たない。料理はコース仕立て。おでんは好みで選ぶが、いずれも一品一品、完成された料理として提供される。

1万2000円のコースが基本。前菜5品ののち、好みのおでんを5種選ぶ。鴨出汁の真髄を味わうにはこの3品がよい。左はトマトにジェノベーゼ(※バジルをペースト状にしたもの。)をのせて、中央は半熟たまごにトリュフを、右は車麩におぼろ昆布を。

鴨の出汁に至った経緯を尋ねると、「鴨でスープを取ると、黒胡椒を挽いたような香りが出てスパイシーになります。そこで、鴨コンソメでおでんをつくったら面白いかなとはじめました」とオーナーの徳原誠さん(49歳)。鴨はワインとの調和もよく、ソムリエである徳原さんも納得の出汁が決まったのだった。

出汁と相性のよいワインが充実している。左から 「ムーラン・ナ・ヴァン」1万2500円、「ヨハネスホフ・ライニッシュ・カピテル1アウフ・デル・マイシェ」1万2000円、「ドラピエ ブリュット・ナチュール」1万1000円。ほかグラスワインもあり。

鴨出汁の風味を満喫する

鴨のもも肉を挽き肉にして、野菜とハーブで出汁を取る。そのままいただくとほんのり黒胡椒の刺激が。でも濃すぎず、ふくよかな旨みが漂う。出汁の個性を存分に味わうタネを、料理長の島田典明さん(45歳)に尋ねると、

「車麩です。コンソメのおいしさをダイレクトに感じていただけます」。

たしかに、磨き上げられた銅製の鍋の中でも、車麩の存在感が光る。定番のタネの中でも、「つみれは今は鰯ですが、鯵や鱒になることも」と言うように、季節により少しずつ食材が変わる。同じ出汁でありながら、ひとつとして同じ味わいにならぬ鴨出汁おでん。贅沢な時間をゆっくりと酔いしれたい。

島田さんはフレンチと和食で研鑽を積み、ビストロおでんの世界へ。通年でおでんを楽しめるよう、旬の食材をふんだんに使う。

びのむ

1階はカウンター5席のみ。ワインセラーも圧巻。

東京都港区西麻布4-8-6
電話:03・5980・8252
営業時間:17時30分〜22時(最終入店)
定休日:日曜、祝日
交通:地下鉄日比谷線広尾駅より徒歩約8分 16席。

取材・文/山崎真由子 撮影/泉 健太 ※山崎の「崎」は正しくは「たつさき」
※この記事は『サライ』2022年12月号より転載しました。

特集は「おでん新潮流」。寒風吹きすさぶ冬こそ、温かい「おでん」が恋しくなってきます。新たな潮流の出汁とタネに注目して選りすぐりの味を紹介します。

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