暮らしを豊かに、私らしく

「息の絶えるまで感動していたい。それが“ 現在(いま)”という時間なのです」

庭に咲く季節ごとの花、時には雑草や蜘蛛、落ち葉まで、堀さんは「身近にあるもの」を題材にした。普通の人が見過ごしてしまうものの中に、命のきらめきや自然の深淵さを感じ取っていた。
『山茶花』27×25.5cm(『サライ』2007年1月4日号 第58回掲載)

堀文子(ほりふみこ)さん

日本画家。大正7年、東京・麹町区(現・千代田区平河町)生まれ。女子美術専門学校(現・女子美術大学)卒業。昭和27年、上村松園賞受賞。海外を放浪し、帰国後に神奈川県大磯に居を構える。平成16年より亡くなる同31年まで、本誌にて「命といふもの」を連載。享年100。

堀文子さんが『サライ』で連載「命といふもの」を始めたのは、2004年のこと。86歳の時である。

今回、東京・銀座のナカジマアートでは、〈堀文子 サライ『命といふもの』原画展〉を開催する(11月30日まで)。連載「命といふもの」の原画の中から選(え)りすぐった作品を展示。最近発見された直筆原稿も公開し、原画に花を添える。

最晩年を過ごした大磯(神奈川)のアトリエ。アトリエには金槌やカッターなど画家らしからぬ工具が、所狭しと置かれていた。

連載当時をよく知る、同画廊の中島良成さんは、「連載では新作をかき下ろす」と堀さんから聞いて驚いたという。

「すでに堀先生はたくさんの作品を残していました。それを連載に掲載しても、誰も不思議とは思いません。ところが先生は、“私には過去を振り返る時間はありません”とおっしゃるのです」

過去の作品を掲載することは、堀さんにとっては、「後ろを向く」ことだった。そこには新たな感動がない。「息が絶えるまで感動したい」という堀さんにとって、それは許しがたかった。

今まで、心にしみていながら絵にしなかったものが、私には山ほどある。それをこの小さな舞台(連載)に引き出すことにしよう。今まで誰も描かなかった絵。見る方にも、描く私にも新鮮な驚きがある筈はずだ(『命といふもの 堀文子画文集』)

前だけを向いて、新しい画題、テーマに挑む。これが堀さんの連載開始時の「覚悟」だった。

実際、扱ったテーマは多岐にわたる。他の画家が描かないようなもの──雑草や甲骨文、くらげまで作品にした。

蕪、シメジ、柿、柚子。何の変哲もない秋の収穫物だが、堀さんはここに、循環する季節を感じ、その力強さに感動を覚えた。
『秋の実り(掲載時は「柿」)』19×36cm(『サライ』2009年1月5日号 第106回掲載)
77歳の時、堀さんは単独で中南米のアマゾンやユカタン半島を取材旅行している。その時の衝撃を絵にした。
『インカの意匠』22.5×30.5cm(『サライ』2009年10月号 第117回掲載)

身を削って描いた私の魂を吸い取ったもののけが、絵の中にひそんでいたのだろうか(『命といふもの 堀文子 画文集 第2集』)

堀さんは、一枚一枚の絵を、身を削って描いていたのだ。常に身を賭(と)した真剣勝負だった。

発見された直筆原稿

連載第1回(2004年8月19日号)の誌面。編集部は過去の作品の掲載を考えていたが、堀さんは新作のかき下ろしを提案し、その過程で新たな境地を開いた。
記念すべき、連載第1回の原稿。今回、堀さんのアトリエから、手書きの原稿が多数発見された。一部は〈『命といふもの』原画展〉で公開される。

『サライ』に約10年にわたってかき下ろされた珠玉の作品の数々。

「堀先生は常に”現在(いま)”を描いていました。画(え)に添えた文章も次第に熱を帯び、時には自分の人生を見つめ直し、世相に辛口で斬り込んだりもしました。連載には、堀先生の生き方が刻まれていたんだと思います」

今の時代だからこそ、改めて「堀文子」に感じ入りたい。

※掲載の額装された絵は、〈堀文子 サライ「命といふもの」原画展〉で展示されます。

堀文子さんを深く知るために

【画廊】「堀文子の部屋」銀座・ナカジマアート

入口に掲げられた堀さんの直筆による看板「堀文子の部屋」が、来訪者をあたたかく出迎える。中に入れば、堀文子一色だ。
ナカジマアートが常設する「堀文子の部屋」。一筆箋やトートバッグ、クリアファイルなど、ここでしか買えない堀文子グッズが並ぶ。
『サライ』に連載した原画から厳選した作品で構成したカレンダー『堀文子 暦 2023』(2200円、53×36.4cm、8枚綴つづり)。問い合わせはナカジマアートまで。

ナカジマアート

11月30日まで企画展〈堀文子 サライ『命といふもの』原画展〉を開催中。
東京都中央区銀座5-5-9 アベビル3階
電話:03・3574・6008 
営業時間:11時~18時30分
入館料:無料 
休日:会期中無休
交通:地下鉄銀座駅より徒歩約3分


堀文子さんの原画をもとに制作した高精細版画を
『サライ』オンラインサロン「Bar駱駝」内にて購入できます。

↓↓詳しくはこちら↓↓
https://bar-rakuda.serai.jp/items?page=1


【対談】檀ふみさんと坂田明さんの対談を配信

檀ふみさん 俳優。堀さんに私淑。晩年の堀さんをよく知るひとり。
坂田明さん サックス奏者。堀さんとは生前、ミジンコ談義を繰り広げた。

堀文子さんを師と仰ぐ檀ふみさんと、堀さんと「ミジンコ仲間」だった坂田明さん(77歳)。ふたりとも、生前の堀さんを敬愛し、かつ深く知る。

今回、個展に合わせて11月15日に対談イベントを実施予定。ライブ配信の視聴チケットが販売される。

堀さんが亡くなって3年経つが、今だからこそ必要とされている「堀文子という生き方」について、
ふたりが大いに語る。

ナカジマアート主催〈堀文子 サライ『命といふもの』原画展〉特別対談

11月15日(火)18時30分ライブ配信開始
視聴チケット1000円 
eチケット購入はhttps://bar-rakuda.serai.jp/events/55b0fad67209

【本】『命といふもの 堀文子 画文集』のご案内

2004年から10年にわたり『サライ』で連載した「命といふもの」。画(え)も文もかき下ろしで、折々の思いを届けた。画の持つ力強さ、美しさ。訴えかける文章は私たちを揺さぶる。今こそゆっくり、味わいたい。画文集『命といふもの』全3巻(各縦257mm×横210mm)各3300円 小学館

『命といふもの 堀文子 画文集』

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『命といふもの 堀文子 画文集 第2集 無心にして花を尋ね』

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『命といふもの 堀文子 画文集 第3集 名もなきものの力』

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取材・文/角山祥道 撮影/藤岡雅樹(小学館写真室、作品・原稿・画廊内観)

※この記事は『サライ』本誌2022年12月号より転載しました。

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