■緊急予備資金の考え方と目安額
被災など、生活上のリスクへの備えとして、一般的には月の生活費の3カ月から6カ月分、場合によっては1年分の資金をもっておくと、いざというとき大変役立ちます。この資金のことを緊急予備資金といいます。
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被災時の主な使いみちとしては、被災・避難時の食事・衣服等の生活諸費用や交通・通信費用、ホテル等の宿泊費などが考えられます。目安が3~6カ月分というのは避難期間や生活を立て直すまでにかかる期間などを想定していますが、昨今は災害が拡大し、6カ月以上、1年以上など長期化する傾向にあります。またIターンやUターンも合め、家族が離れて暮らす二重生活になることもありえます。できれば6カ月分~1年分以上の資金を用意しておきましよう。
緊急予備資金は、被災時だけでなく、思いがけない失業、けがや病気など不測の出費にも役立ちますから、必ず確保しておきたいものです。すでに目安額以上の貯蓄のある人は、生活費や住宅購入資金など使う予定のあるお金とは分けておくようにしましよう。これから貯める人はまずは3カ月分を確保することから始めて、徐々に6カ月分、1年分と増やしていきましよう。
■緊急予備資金の置き所
緊急予備資金は、いざというときの出費に備えるお金ですから、換金性の高い預貯金で準備しておきましょう。一部を現金で自宅に保管する場合は簡易な金庫を利用するなどセキュリティにも留意してください。また、預貯金の場合、被災時には金融機関によってはお金の引き出しに時間を要したり、引き出す金額が制限されることもありますので、複数の金融機関に分散して預けておくことをおすすめします。なお、その場合はどの金融機関にどれだけの金額を預けているのかを、財産目録に記載しておきましょう。スムーズに引き出せるよう通帳、印鑑などといっしょに保管しておくと便利です。
■当座をしのぐためのお金も手当しておく
ところで、被災直後にはなんといっても現金が必要になります。外出先で被災した場合、持ち合わせがないことも考えられますから、当座のお金を確保する方法をいくつか用意しておくと安心です。すぐ引き出せる普通預金口座を2つ以上持っておく、数千円程度の現金を常に携帯する、電子マネーを使えるようにしておくなど、一つ二つの方法が使えなくなってもほかに手段があればその場をしのぐことができるでしよう。
人とのつながりは「目に見えない資産」
災害が発生すると、家族や親戚の安否確認が取れずに不安な時間を過ごすことや、高齢者などは避難がままならないケースもあります。そんなとき心強いのが近隣の人たちとのつながりです。お付き合いを大切にするため、町内会や自治会等の集まりに積極的に参加し、地域住民とコミュニケーションを図るのもよいでしょう。地域の防災訓練に参加しておけば、被災時の防火用水や飲料水の確保手段、物資の備蓄や配給場所などの情報を得ることもできます。人は一人では生きられません。身近な人やご近所とのお付き合いという「目に見えない資産」を作っておくことも、大切な災害対策のーつです。
※本記事はNPO法人 日本FP協会発行のハンドブック「災害に備える くらしとお金の安心ブック」から転載したものです。
協力:NPO法人 日本FP協会 https://www.jafp.or.jp/