取材・文/池田充枝
悲劇の女性、細川ガラシャが生きた時代とその生涯を辿る展覧会が開かれています。
時は慶長5年(1600)、関ヶ原合戦の直前、石田三成らが豊臣恩顧の大名から人質をとろうとして、徳川軍についた細川忠興の妻に大坂城入城を強要しました。しかし忠興の妻、玉はそれに従わず命を絶ちました。
玉は永禄6年(1563)、明智光秀の次女として生まれ、織田信長の命によって臣下の細川忠興に嫁ぎました。
天正10年(1582)、父の光秀が本能寺で信長を討った際、逆臣の娘として丹後に幽閉されますが、その後、秀吉のとりなしによって大坂の細川邸に戻りました。
この大坂で、玉はキリシタン大名の高山右近の影響でキリスト教の洗礼を受けます。洗礼名はガラシャ。熱心な信徒であったガラシャは、三成の軍勢に屋敷を包囲された中で、自殺を禁じているキリスト教の教義と忠興の妻としての信義とのはざまで苦悩したのち死を選びます。
戦国の貞女か悲劇の殉教者か、その波乱万丈の生きざまは、いまなお人々を惹きつけてやみません。
本展は、細川家ゆかりの名品を展示する永青文庫展示室の開室10周年を記念した特別展で、戦国乱世の桃山時代と華やかな桃山文化を時代背景として、ガラシャの動静を示す歴史資料やゆかりの品々、約100点を一堂に会します。近世から現代まで語られ、描かれ続けてきたガラシャの人物像の歴史的変遷も併せて紹介します。
本展の見どころを、熊本県立美術館の学芸員、山田貴司さんにうかがいました。
「細川ガラシャを主役とする大型の特別展は、全国的にみても昭和57年(1982)以来、じつに36年ぶりで、熊本で歴史上の女性を取り上げる展覧会はめったにないことです。
キリシタンとしてガラシャを描いた絵としては最初期のものといわれる日本画の巨匠・橋本明治の《ガラシャ夫人像》、室町末期の関を代表する刀工・兼定の銘のある忠興が晩年に愛用した「歌仙兼定」、本能寺の変後も生き残った甥に送ったガラシャの手紙、豊前小倉の南蛮寺にあったともいわれる裾の広がりがヨーロッパの教会の鐘にそっくりな《九曜紋鐘》、上陸したカピタンとその一行を迎える聖職者やポルトガル人を描いた《南蛮屏風》、など貴重な作品群100点が皆様をお迎えします。ぜひ会場に足をお運びください」
熊本地震復興に祈りを捧げるかのような橋本明治の《ガラシャ夫人像》、心打たれます。
【開催要項】
特別展 細川ガラシャ
会期:2018年8月4日(土)~9月24日(月)
会場:熊本県立美術館
住所:熊本市中央区二の丸2番
電話番号:096・352・2111
http://www.museum.pref.kumamoto.jp/
開館時間:9時30分から17時15分まで(入館は16時45分まで)
休館日:8月6日(月)、20日(月)、27日(月)、9月10日(月)、18日(火)
取材・文/池田充枝