取材・文/池田充枝
季節の変わり目である節(せち)の祝いをする日「節供(せっく)」は、「節句」とも書き、古くは「せく」「せちく」と言いました。
節供の祝いは土地によって一定ではありませんが、中国伝来の習俗が日本に伝わった五節供、すなわち陰暦正月七日(人日・じんじつ)、三月三日(上巳・じょうし)、五月五日(端午・たんご)、七月七日(七夕・たなばた)、九月九日(重陽・ちょうよう)は、古くから現在まで広く全国で祝われています。
この五節供のうちの三月三日の上巳の節供の祝いが「雛まつり」で、女児の幸福・成長を祈って雛人形を飾り、桃の花や菱餅、白酒を供えます。
* * *
今年もまさに雛まつりを迎えようとしている今、雛人形たちが華やかに並ぶ展覧会《特集展示 雛まつりと人形》が、京都国立博物館で開かれています(~2018年3月18日まで)。
本展では、各種の雛人形が展観されるほか、嵯峨人形、御所人形、賀茂人形、伏見人形など京都の地名を冠した京人形を展観し、みやこで育まれた人形文化の諸相を紹介します。
本展の見どころを、京都国立博物館工芸室長の山川曉さんにうかがいました。
「春の訪れとともに、本年もまた雛の節供がめぐってきます。京都国立博物館では、この時期に合わせて人形の特集展示を開催することを恒例としています。
雛人形を飾って女子の成長を祝う雛まつりは、古くから行われているように思われがちですが、人形を飾ってこの日を祝うようになったのは、江戸時代の初めとされています。」
雛まつりの起源は、上巳(じょうし)の節供という三月のはじめに行われた祓(はら)いの行事です。紙など簡素な素材で作られた人形は、人間の形代(かたしろ)として穢(けが)れを引き受け、水に流されるなどして処分されていました。それがやがて、同じく三月三日頃に公家の女子たちが行っていた盛大なお人形遊びである雛(ひいな)遊びと結びつき、江戸時代には、飾るための豪華な雛人形へと変化していきました。
江戸時代の雛人形には、その時代の元号を冠して呼ばれる寛永雛・享保雛や、製作した人形師の名を付けたという次郎左衛門雛、江戸で完成した古今雛、公家の装束を正しく写した有職雛(ゆうそくびな)などがあります。
各種の雛人形が勢ぞろいするこのたびの展示では、面差し、手の動き、装束など、それぞれに異なる細部に注目しながら、雛人形の変遷をお楽しみください」
江戸時代から伝わる貴重な人形たちを鑑賞しながら、会場で雛まつり気分をご堪能ください。
【開催要項】
『特集展示 雛まつりと人形』
会期:2018年2月20日(火)~3月18日(日)
会場:京都国立博物館 平成知新館2F-5
住所:京都市東山区茶屋町527
電話番号:075・525・2473(テレホンサービス)
http://www.kyohaku.go.jp/
開館時間:火~木・日曜日は9時30分から17時まで、金・土曜日は9時30分から20時まで(入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日:月曜日
取材・文/池田充枝