日本の女性で初めての職業作家といわれる樋口一葉(1872~1896)。明治27年12月から明治29年1月の<奇蹟の14か月>と称される期間に『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』などの名作を世に残し、わずか24歳でこの世を去りました。
一葉は東京で生まれましたが、両親はともに現在の山梨県甲州市塩山の出身です。樋口一葉生誕150年にあたり、ゆかりの深い山梨で一葉の展覧会が開かれています。(11月23日まで)
本展の見どころを、山梨県立文学館の学芸課、保坂雅子さんにうかがいました。
「1883(明治16)年12月、一葉11歳の時に私立青海(せいかい)学校小学高等科(2年間を半年ごとに進級)の第四級を卒業します。卒業証書の右上に書かれた「第一號」とは首席で卒業したことを意味します。一葉自身は進級を希望しましたが、母たきの、女子に学問はいらないという方針から第三級に進まず退学しました。一葉は後にこのことを「死ぬ斗(ばかり)悲しかり」と記しています。
一葉は小説家としての側面は広く知られていますが、本展では歌人としての魅力も紹介します。歌人として署名する時は「一葉」ではなく「なつ」「夏子」などと記しました。「ふる雨のはれせす物をおもふかな今日もひねもす友なしにして」は、彦根に教員として赴任した友人の馬場孤蝶(こちょう)を詠んだ歌が書かれています。友の不在を寂しく思う一葉の心が読みとれます。
一葉自筆の草稿、書簡、愛用品など約80点の資料を展示し、一葉の生涯とその文学の魅力を紹介します」
逆境に生きた一葉の生涯が展示品を通して伝わります。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
企画展「 樋口一葉 生誕150年 我が筆とるはまことなり―もっと知りたい樋口一葉」
会期:9月17日(土)~11月23日(水・祝)
会場:山梨県立文学館
住所:山梨県甲府市貢川1-5-35
電話:055・235・8080
開館時間:9時から17時まで(入室は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし9月19日、10月10日は開館)、10月11日(火)
公式サイト:https://www.bungakukan.pref.yamanashi.jp
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝