牛島憲之《秋川》1934年 熊本県立美術館蔵

大正から昭和になったばかりの1927年3月、東京美術学校(現東京藝術大学)西洋画科を40名の若者が卒業しました。
その40名で結成した級友会「上杜会(じょうとかい)」は校舎のある「上野の杜」にちなんで命名されました。

小磯良平《着物の女》1936年
神戸市立小磯良平記念館蔵

昭和のはじまりとともに生まれた上杜会は、戦前戦後の激動の時代を乗り越えて、戦後の一時中断を除き、1994(平成6)年まで毎年開催され、それぞれの道を歩みながら多くは昭和期終盤まで画家として活躍し、昭和の洋画界を牽引しました。

この特筆すべき団体、上杜会の足跡を辿る展覧会が開かれています。(3月14日まで)

猪熊弦一郎《或晴れた一日》1992年
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵
(C)公益財団法人ミモカ美術振興財団

本展の見どころを、豊田市美術館の学芸員、成瀬美幸さんにうかがいました。

「上杜会は東京美術学校(美校)西洋画科昭和2年度卒業生が結成した同期会です。彼らは元号が『昭和』になって初めての春、つまり昭和の始まりと共に画家になった者たちでした。上杜会の面々は早くから優秀と評されており、卒業半年後には第1回展を開催します。

小堀四郎《冬の花束》1946年
豊田市美術館蔵

本展では、彼らの作品を昭和史と重ねて戦前、戦中、戦後の3章で紹介。序章では美校の恩師の作品も展示します。

上杜会には戦前に10名以上が欧州に留学したり、戦後は牛島憲之、小磯良平、荻須高徳といった文化勲章受章など華々しい活躍をした者もいれば、地方の美術振興に尽力したり、画壇から離れ独自の道を歩んだり、戦争や病で早逝した者もいます。主義主張も生き様も、当然作風も皆異なりますが、上杜会は結成当初からそれらを全て尊重すると明言し、半世紀以上も継続しました。仲間と絆を丁寧に紡ぎ続けた彼らの作品を改めて見つめることで、令和の時代を見通すヒントになれば幸いです」

岡田謙三《入江》1975年
京都国立近代美術館蔵

昭和という時代を辿ることができる展覧会でもあります。ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
わが青春の上杜会―昭和を生きた洋画家たち
会期:2021年1月5日(火)~3月14日(日)
   前期1月5日~2月7日 後期2月9日~3月14日 ※会期中一部展示替えあり
会場:豊田市美術館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
電話:0565・34・6610
開館時間:10時から17時30分まで(入館は17時まで)
休館日:月曜日(ただし1月11日は開館)
https://www.museum.toyota.aichi.jp
料金:HP参照
アクセス:HP参照

取材・文/池田充枝

 

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