マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。

実際には周りから評価されているにもかかわらず、極端に低く自己評価してしまう「インポスター症候群」というものをご存じでしょうか?

今回は「インポスター症候群」の方への組織としての対応方法について、自己評価と他者評価という観点で解説していきます。「インポスター症候群」の方への対処だけではなく、部下を成長させるために、いかに他者評価を認識させるかということの重要性についても解説しておりますので、是非ご参照ください。

自己評価ではなく、他者評価が正しい

上司から見た部下への評価と部下から見た自身の評価にギャップがあり、評価面談などで認識合わせに苦労された経験のある管理職の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

上司から見た部下への評価よりも、部下自身の評価の方が高いケースが多いと感じるかもしれませんが、インポスター症候群においては、その逆と言えます。

組織において、評価者(上司)が被評価者(部下)を評価するわけですので、部下は上司からの評価を受け入れざるを得ないというのが本来の組織の仕組みです。

例えば、フィギュアスケートでは、採点者の評価を得られなければメダルは取れません。だからこそ、フィギュアスケーターは自身の演技で、どうしたら高い採点を取れるかを考え(他者評価を認識し)、その中で自身の表現したい演技を探求しているわけです。

つまり、会社内においては、上司の評価よりも自己評価を高く見積もろうとも低く見積もろうとも、それは本来受け入れるべき他者評価(上司の評価)を正しく認識出来ていないことであり、そのような部下に対しては、他者評価を正しく認識させていく必要があります。

そして、この他者評価を正しく認識させていくことがインポスター症候群への対応として組織ができる部分であると考えます。

では、どのようにして、他者評価を正しく認識させれば良いのでしょうか?

組織としての対応法(1):目標を明確にする

1点目は、「目標を明確にする」ということです。明確とは、人によって解釈がズレない表現になっているということです。

「10キロメートルを60分以内で走る」という目標であれば、60分以内に10キロ地点にいれば、誰が見ても〇と言えます。

では、「10キロを全力で走る」という目標だった場合はどうでしょうか? 60分以内に10キロ地点にいたとしても、〇とする人もいれば×とする人もいるかもしれません。人によって解釈にズレが生じてしまいます。

このように、不明確な目標の場合、自身で判断する範囲を作ってしまい、結果的に部下自身の評価と上司の評価のギャップで部下を悩ませたり、上司もマネジメントに苦労したりしてしまいます。

目標を人によって解釈がズレないよう定義する。つまり、期限と状態、この2点を明確に定義していくことで、正しく他者評価を認識させることが出来るのです。

組織としての対応法(2):進捗管理を行う

明確な目標を設定した上で、次に重要なポイントは目標達成のための「進捗管理を行う」ということです。

目標は3か月や半年、長い場合には1年やそれ以上で設定される場合もあると思います。たとえ、目標を明確に設定したとしても、それだけの期間が長いとゴールイメージが持てず、本来の方向性からズレてしまうことも考えられます。

そのためにも、定期的な進捗管理を行うことで、都度、上司によって軌道修正させることも重要です。

また、進捗管理をするということは、その都度、部下からの報告に対して、上司がフィードバックをすることになります。この報告とフィードバックを通じて、部下は定期的に上司からの他者評価を受ける経験を繰り返すこととなり、正しく他者評価を認識できるようになります。

組織としての対応法(3):明確に評価していく

目標を明確にし、目標達成のために定期的な進捗管理を行った結果、目標達成できたのであれば、プラスの評価となり、目標達成できなければマイナスの評価となる。このように、評価も明確にしていくことが重要です。

最終的な評価(給与査定を含む)に曖昧さを残してしまうと、結局のところ何で評価されるかが分からなくなってしまい、部下を迷わせることになります。

また、目標が明確であれば、出来ていた場合にも、どこまで出来ていたかも明確なはずですので、その事実を持って「ここまでは出来ていた」としっかりと言い切ることで達成感を得られるようにしてあげましょう。

逆に出来てなかったのであれば、その時点ではマイナスの評価になりますが、出来なかった要因と向き合わせた上で、どうしたら出来るようになるか、未来に視点を向けさせることも重要です。

予め基準を明確にし、出来た、出来ていないをシンプルに評価し続けることで、他者評価を受け入れざるを得ない環境にすることが出来ます。

他者評価を正しく認識することで、成長させることが出来る

成長するためには他者評価を正しく認識することが不可欠です。なぜなら、成長とは自身の不足を認識し、不足を埋めていくことによって成長することが出来るため、自身の不足を認識するためにも他者評価を受け入れて何が足りなかったかを正しく認識する必要があります。

自己分析は必要ですが、自己評価は意味を持たないということを認識させなければ、部下を成長させることは出来ません。

インポスター症候群のように部下の自己評価が低い場合に、「そんな謙遜せずに、もっとやれる限り、頑張ってみようよ!」という声かけでは、結局どこまでやれば評価されるかが分からず、成長を実感することも出来ません。

出来なかったことは出来なかったこととして、不足を明確にしてあげることで、改善し、出来るようになっていく、そのようにして部下に成長を実感させることが上司の役割であり、インポスター症候群の対処法のひとつになるのではないでしょうか。

まとめ

インポスター症候群をテーマに自己評価と他者評価について解説してきました。自己評価はどんなに高く見積もろうとも低く見積もろうとも関係なく、正しく他者評価を認識することが必要であるということを部下自身に分かってもらうためにも、明確な目標を設定し、〇×をしていくことが重要といえます。

なお、インポスター症候群の方への対応法として記述しておりますが、上司はあくまでインポスター症候群の専門家ではありません。今回、解説した取り組みだけでは解決とならない場合には、心理カウンセラーなどの専門家にも相談できるように、環境を整えておくことも必要です。

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