マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。
この記事では、リーダーがなすべき正しい意思決定について考察していきます。
意思決定する際の判断材料において大切な2つの視点
言わずもがなですが、意思決定するには判断材料が必要です。判断材料となる情報を集める際に識学では次の2点に注意しています。
1.可能な限り事実の情報を集め、その上に主観や直感はエッセンスで加える
2.情報を集めすぎない(100%は集めきれない前提を認識する)
1.可能な限り事実の情報を集め、その上に主観や直感はエッセンスで加える
主観や直感を全否定する気はないのですが、事実となるデータや事例がなさ過ぎて感覚で構成された情報は正しい意思決定をするうえでのノイズ(障害)でしかありません。これでは正しい意思決定から遠ざかってしまうのは明らかですので、ここで大事になるのはいかに事実に基づいた情報を集められるかになります。
事実に基づいた情報というのは例えば下記の例です。
・数字で計測されたもの(データ自体にバイアスがかかっている場合は注意)
・一定数の母数が必要ですが、お客様からの要望やクレームという事実
・現場で起きる実害(部門Aが責任を果たせなかった結果、部門Bも未達になった等)
それは事実に基づいているか、という視点が正しい意思決定をするリーダーに求められます。
2.情報を集めすぎない(100%は集めきれない前提を認識する)
正しい意思決定をしようとして情報を集めることばかりに時間を使い、行動量が減ってしまうという現象に陥ります。行動量が落ちれば比例して改善量が減るため、意思決定の精度があがらず結果的に遠回りをしてしまうなど、本来の正しい意思決定をしたいという思いとは矛盾した結果に自らを導いてしまう人がいます。これは注意が必要です。
ここで再認識したいのは、リーダーの役割とは意思決定することではありません。チームを動かしチームの目標を達成すること(識学ではチームを勝たせることと表現しています)です。チームが勝つための手段として意思決定があり、正しい意思決定というのはチームの勝率をあげられる意思決定ということになります。
また、時間は無限ではなく、一定の期間内に集められた事実情報をもとに最も勝利が高いであろう意思決定を行う、そして、実行して検証、改善活動というサイクルを早く多く回す、ということが求められるのではないでしょうか。
仕組みで情報を集めよう
事実情報を集める必要性はわかりましたが、部下や周りのメンバーが常にほしいタイミングで事実情報を出してくれるとは限りません。また、上司が毎回情報集めのために聞いて回るなんてことは非現実的で続けられないでしょう。そこで、識学では仕組みで事実情報を集める方法の構築に取り組んでいただくことをお勧めしています。
1.組織マネジメントにおける「責任と権限」を正しく認識させる
2.定期報告、定例会議で権限を取りに来させる仕組み
1.組織マネジメントにおける「責任と権限」を正しく認識させる
まず、責任を果たすために権限を取りに来るのが当たり前という組織文化づくりをすることが肝要になります。どういうことかというと、仕事には誰しも責任を持っており、その責任を果たした結果と賃金を交換しています(そう認識できていない人も中にはいますがここでは論じません)。
ここでポイントとなるのは、責任だけではなくその責任を果たすための武器、つまり「権限」も同時に持っているということを正しく認識させられているか、という点です。責任を果たすために権限が足りなければ上司や会社に対して権限を取りに来る、という活動が組織の一員には求められるということです。
この責任を果たせなさそうな状況にある、それはなぜか、そのためにどんな権限が欲しいのか、その権限でどんな結果が導かれると計画しているのか、これがまさに上司が意思決定に必要な事実情報ではないでしょうか。
従って事実情報を仕組みで集めるには、まず組織のメンバーに対して前提条件の教育が有効です。責任と権限の両方を持っており、責任を果たすために権限を行使する、権限が足りず責任が果たせないのであれば権限を取りに来る、という一連の活動を当たり前化するように教育することが必要になります。
人間関係で情報を集めようとすると危険が伴います。例えば、「上司から聞いてあげないと答えられない部下」を作ってしまったら、かなりまずい状況と言えるでしょう。事実情報の収集方法が属人化すればするほど、組織はローパフォーマンス化してしまいます。そして、以下のような状況が起こりがちになります。
・忙しそうな雰囲気が出ていて声をかけられない
・感情的に怒られたため、次に声をかけづらい
・特定の嗜好(お酒の場、タバコ、ゴルフなど)が合う人だけが権限を取りに行きやすい
2.定期報告、定例会議で権限を取りに来させる仕組み
そこで、構築頂きたいのが、「定期報告、定例会議で権限をとりに来させる仕組み」です。
聞かないと出てこない、聞いても出てこない、という属人性から脱却するために、定期報告のフォーマットに「責任を果たすために欲しい権限」という欄を作り記述式で権限を取り来やすいようにします。
また、定期報告ですので、これが月に複数回、定期的に目にする環境になることも重要です。権限を取りに来るという行動にそもそも慣れていないので、粘り強く、いつでも責任を果たすために権限を取りに来て良いという風土や環境を作ることが肝要です。
次に、同じことを定例会議でも実践します。コミュニケーションの最後に「〇〇さんの責任を果たすために欲しい権限はありますか?」と毎回聞く、ということです。出てくる欲しい権限の質や精度は鍛えていく必要があるのですが、上司が毎回聞く、ということに精度は必要なく即時実行できます。
この定期報告のフォーマットに加える、定例会議では毎回聞く、という2点はまさに仕組みで事実情報を集める第一歩ということになります。
最後に
今回は、正しい決断ができるリーダーは正しい事実情報の収集ができる、という内容をお伝えしました。安藤広大著『パーフェクトな意思決定「決める瞬間」の思考法』(ダイヤモンド社)という書籍に、意思決定についてより詳しい内容が書かれていますので、こちらもぜひお手に取ってみてください。
参考文献/安藤広大著『パーフェクトな意思決定「決める瞬間」の思考法』(ダイヤモンド社)
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