ジョハリの窓、という言葉を聞いたことがありますか? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」で、ジョハリの窓についての知見を得ましょう。
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「ジョハリの窓」は、ビジネスの場で積極的に活用できる自己分析ツールの1つです。人材育成、企業研修、マネジメントにも応用できるため、知っておくとなにかと役立つでしょう。
本記事では、人事担当者とマネージャー向けに、ジョハリの窓について徹底解説していきます。
ジョハリの窓とは?【主観と客観の自己分析ツール】
ジョハリの窓は、コミュニケーションを模索する自己分析ツールの1つです。
1955年に開催された「グループ成長のためのラボラトリートレーニング」で発表された「対人関係における気づきのグラフモデル」が、のちに「ジョハリの窓」と呼ばれるようになりました。
なお、「ジョハリ」という名称は、提案者のジョセフ・ルフトとハリ・インガムの2人の名前を組み合わせたもので、特別な意味があるわけではありません。
ジョハリの「4つの窓」を徹底解説
ジョハリの窓は、自己認識(主観)と他者認識(客観)によって形成されるマトリクスです。
ジョハリの窓では、自己には以下の4つの領域があるとしています。
・開放の窓(open self)
・盲点の窓(blind self)
・秘密の窓(hidden self)
・未知の窓(unknown self)
それぞれの領域を詳しく見ていきましょう。
(1):開放の窓(open self)
開放の窓は「公開されている自己(open self)」で、自分も他人も知っている自己のことを指します。
「相手からこう思われているんじゃないか」と「自分はこういう性格だ」というのが一致している状態です。開放の窓が広い状態は、自分と相手の意見が一致している状態なので、スムーズなコミュニケーションができます。
そして、ジョハリの窓では、コミュニケーションを円滑にし、信頼関係を構築するためにも「開放の窓を広げた方がいい」としているようです。
(2):盲点の窓(blind self)
盲点の窓は「自分は知らないが他人は知っている自己」で、自分で気づくことはできていないものの、他人が気づいている自己のことを指します。
よくある例として「思わぬ特徴」や「思わぬ長所」が挙げられます。「自分ではガサツだと思っていたけど、他人から見ると几帳面だった」というようなイメージです。
もちろん、悪い特徴が盲点の窓になっている場合もあるため、自分が気づかないまま相手を傷つけているというケースもあります。
そのため、他人に自分のことを聞くなどして、盲点の窓を可能な限り小さくするのが良いと考えられています。
(3):秘密の窓(hidden self)
秘密の窓は「隠された自己」で、自分だけが知っていて他人には知られていない自己のことを指します。
「トラウマ」や「コンプレックス」が秘密の窓に該当するでしょう。秘密の窓が多い状態は「隠し事が多い状態」なので、相手からの信頼を得ることが難しく、コミュニケーションがスムーズにいきません。
コミュニケーションを円滑化したいのであれば、自分の秘密を打ち明けて、秘密の窓を小さくするのがいいでしょう。
(4):未知の窓(unknown self)
未知の窓は「誰にも知られていない自己」のことで、その名の通り、自分にも他人にも知られていない自己を指しています。
ジョハリの窓において、未知の窓は秘められた才能・能力だとされ、自己成長のチャンスをもたらす分野として、ポジティブに解釈されています。そして、自分の秘められた能力(未知の窓)に気づくためには、開放の窓を押し広げることが必要だとされているようです。
自分のポテンシャルを最大限発揮するためには、まず自分のことを深く理解する必要があるということなのでしょう。
ジョハリの窓の実施手順
ジョハリの窓の実施手順は以下の通りです。
1.複数人集める
2.自分自身の性格や特徴を洗い出す
3.他の人の性格や特徴を洗い出す
4.4つの窓に分類する
5.フィードバックする
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
(1):複数人集める
ジョハリの窓は、他者からの意見が必要不可欠なので、まずは複数人集める必要があります。
ただし、ジョハリの窓の性質上、初対面の相手と実施しても意味がありません。お互いのことを理解しているメンバーを集めましょう。
最低2人から実施できますが、より多くの視点を作るためには4人以上で実施したいところです。
(2):自分自身の性格や特徴を洗い出す
メンバーを複数人集めたら、まず自分自身の性格や特徴を洗い出していきます。
この際、大きく分けて2種類の洗い出し方がある点に注意しましょう。
・紙とペンを用いて自由記述
・一般的な能力・性格の項目から該当するものを選択
「自由記述」か「該当項目の選択」かで、おそらくですが、記述される内容は異なるはずです。
ジョハリの窓はグループワークで実施されるので、可能な限り「該当項目の選択」をメインにして、オプションとして「自由記述」を組み込むのがいいでしょう。その方が応え方が統一され、意見の一致と相違が分かりやすくなるはずです。
(3):他の人の性格や特徴を洗い出す
自分自身の性格と特徴を洗い出したら、今度は他のメンバーの性格と特徴を洗い出していきます。この際、自分の名前を記述する必要はありません。
また、他人の性格と特徴を記述する際は、可能な限りポジティブな言葉に言い換えた方が良いでしょう。例えば、「飽きっぽい」と記述するのであれば「移り気」や「好奇心旺盛」という感じです。ネガティブなワードを多用すると、グループワークがギスギスする可能性があるので、注意が必要です。
(4):4つの窓に分類する
全員がそれぞれのメンバーの性格と特徴を洗い出したら、それらを4つの窓に分類していきます。先ほど紹介した「開放の窓」「盲点の窓」「秘密の窓」「未知の窓」です。
例えば、自分で書いていた性格が他人に全く書かれていなかったら「秘密の窓」ということになります。
なお、この作業はオープンにせず、基本的に自分だけで黙々と進めていくのがいいでしょう。作業を進めていく中で、他人の意見に向き合えるためです。
(5):フィードバックする
性格と特徴を4つの窓に分類したら、その結果を全員で共有します。
「なぜこの性格を記述したのか」「どのような行動からそう考えたのか」というようにお互いにフィードバックすることで、理解が深まります。
自己理解に関して言えば、「盲点の窓」に該当した性格・特徴を実際にメンバーに聞くのがいいでしょう。
ジョハリの窓の活用方法3選
ジョハリの窓の活用方法は以下の3つです。
・コーチング
・企業研修
・人材育成
それぞれ詳しく解説していきます。
活用方法(1):コーチング
ジョハリの窓の活用方法として、まず挙げられるのがコーチングです。
上司が部下に1on1でコミュニケーションを取るコーチングは、お互いのことを深く理解している状態でこそ、その効果を最大限に発揮できます。そのため、お互いの理解が深まるジョハリの窓との相性は抜群だと言えるでしょう。
また、ジョハリの窓における「開放の窓」を広げるアプローチにおいて、具体的なコーチングを実施できるのが、上司目線でのメリットです。コーチングを実施する前に、ジョハリの窓を取り入れるといいかもしれません。
活用方法(2):企業研修
ジョハリの窓は企業研修でも採用されているようです。
企業研修でジョハリの窓が採用される理由として、まず「自己理解が深まること」が挙げられます。自分の強み・弱みを理解した上で研修に臨んだ方が効果的だと言えるでしょう。
また、企業側が各従業員の性格・特徴を理解できるのもメリットです。これは研修を実施する上で非常に重要な材料になります。
活用方法(3):人材育成
ジョハリの窓は人材育成にも活用できます。
先ほどから述べている通り、ジョハリの窓は自己分析ツールの1つです。人材育成を進める前に、ジョハリの窓を使って現状を分析することで、現在地を確認できます。
また、ジョハリの窓を活用することで、開放の窓を広げながら、未知の窓という名の「ポテンシャル」を切り拓くことが可能です。
ジョハリの窓を上手に活用するコツ3選
ジョハリの窓を上手に活用するコツは以下の3つです。
・ポジティブなフィードバックを心がける
・結果を真面目に受け止めすぎないようにする
・あくまでも「自己理解」を最優先事項にする
それぞれ詳しく解説していきます。
(1):ポジティブなフィードバックを心がける
ジョハリの窓を実施する際は、ポジティブなフィードバックを心がけるようにしましょう。
ジョハリの窓は、基本的に複数人で行われ、かつ、従業員のパーソナルな部分に踏み込んでいくデリケートな自己分析ツールです。その中でネガティブなフィードバックを実施してしまうと、お互いの仲が悪くなる可能性があります。
他人の性格や特徴を記述する際は、ポジティブな言い回しを心がけた方がいいでしょう。
(2):結果を真面目に受け止めすぎないようにする
ジョハリの窓に参加する際は、その結果に対して真面目に受け止めすぎないようにするのが良さそうです。
ここまでジョハリの窓を解説してきましたが、結局のところ、ただの自己分析ツールの1つに過ぎません。「ジョハリの窓の結果が全て」というわけではないのです。
そのうえ、「メンバーからの意見」という極めて定性的な要素なので、当然のことながら、メンバー次第で結果は大きく異なります。ジョハリの窓で得られた結果は、あくまでも参考程度に留めておきましょう。
(3):あくまでも「自己理解」を最優先事項にする
ジョハリの窓を実施する際は、あくまでも「自己理解のツール」であることを再認識した方がいいでしょう。
人材育成、コミュニケーション力強化、生産性向上など、それ以上のことを求めるのはあまりよくありません。なぜなら、ジョハリの窓で得られる結果は、極めて定性的だからです。
ジョハリの窓に色々な要素を求めず、自己理解にフォーカスして実施するのがいいでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
・ジョハリの窓は主観と客観を活用した自己分析ツールの1つ
・ジョハリの窓で自己分析したあとは、開放の窓を広げることに着手した方がいい
・ジョハリの窓はデリケートな自己分析ツールなのでネガティブな意見を書かない方がいい
ジョハリの窓は自己分析として使う分には非常に優れたツールだと言えます。他者からの意見もしっかり反映されるので、1度実施するだけで、自己理解がかなり深まるでしょう。企業研修やコーチングで活用するのもおすすめです。
【この記事を書いた人】
識学総研 編集部/株式会社識学編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作中。3,000社以上に導入された識学メソッドも公開中です。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/
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