マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、管理職のなり手不足について考察します。

管理職がハードモードと言われる現状

「管理職になること、管理職であることがハードモード化している」――世のマネジメント層からこんな声を聞くようになりました。経営陣は従来の役割である組織目標の達成や人材育成に加え、イノベーションを期待するものの、管理を取り巻く環境は日々“ムリゲー”化の一途をたどっています。多彩な役割が求められる中、多忙な日々を乗り切ることで必死だといいます。企業を取り巻く環境が日々変化する中、管理職はどうあるべきなのか。コンサルティングの現場も踏まえて考えます。

識学が2023年1月に行った管理職に関する調査結果は以下の通りです。

管理職になりたいと回答したのはわずか8.0%と低く、中でも女性は4.0%という結果に。管理職になりたくない理由は「出世欲がないから」が50.9%と最も高く、「責任が伴うから」50.0%、「仕事量が増えるから」42.6%。また、現在の日本では女性管理職の数も少なく、管理職になりたいという女性も少ない中、女性管理職を増やすためには何が必要かを聞いたところ、「子育てや介護などの両立支援」が54.7%と最も高い結果になりました。

そんなに不人気なら組織の構造からしてフラットにしてしまえばいい、という議論もありますが、今のところ人類は集団の効率的管理手法としてピラミッド型以外の構造を発明できていません。ティール(個々の社員が意識決定権をもつ)やホラクラシー(自律的な組織に意思決定権を分散させる)といった形態はまだ検証段階です。Google社では、2000年代前半、管理職を全廃したものの社員から社風や文化を伝え、チームの議論に決着をつける、意思決定してくれるマネジャーを欲していることが分かり、復活させました。

このようなハードモードでなり手の少ない管理職ですが、識学はあえて、「今こそマネジメントの道へ進め!」と提案します。チャレンジすることで得られるリターンが大きいからです。

管理職を経験することで得られる7つのメリット

1.マネジメントスキルの向上

管理職では、人々を指導し、励まし、統率するスキルが磨かれます。これによりマネジメント能力が向上し、チームを成功に導くことができるのです。また、人間の思考や行動決定に関し深い洞察を得られるでしょう。

2.戦略的思考の習得

管理職では、戦略的な判断や決定を行う機会が増えます。従って、組織全体の目標や方向性を見据えた戦略を立案し、実行する経験を得ることができるのです。また、集団を率いて目標達成することはプレーヤーとは異質の内発的動機付けを得ることにもなります。

3.問題解決能力の向上

管理職では、様々な問題に直面し、それらを解決するための能力を養うことが求められます。これにより、問題を迅速に分析し対処するスキルが身につきます。目標達成に向けて発生する問題解決のPDCAは、あらゆる仕事で汎用的に身につくスキルとなるでしょう。

4.コミュニケーションスキルの向上

管理職では、部下や他の部門との効果的なコミュニケーションが重要です。その機会が多いからこそ、必然的にコミュニケーションスキルを向上させ、情報を効率的に伝える能力を身につけられるようになります。プレゼンテーションやファシリテーションといった具体的スキルの習得にも寄与するでしょう。

5.人材育成の機会

管理職では、部下やチームメンバーの成長をサポートする機会があります。彼らの能力を向上させ、キャリアをサポートすることで、管理職としての満足感を得ることができるでしょう。

6.ネットワーキングの機会

管理職では、他の管理職やビジネスリーダーとの関係を築く機会が増えます。これにより、重要なネットワークを構築し、組織外部とのつながりを強化できるようになります。通常出会えない人材とのつながりを持つことも可能です。

7.給与や報酬の向上

一般的に、管理職になることで給与や報酬が向上することがあります。管理職には高い責任が伴うため、それに見合った報酬が期待されることが多いものです。

管理職になると、スキル面でのリターンが大きいのはもちろん、人脈の形成やモチベーションの獲得といったメリットも魅力の一つです。

ハードモードでなり手が少ない中、なにより組織側からは非常に希少性の高い人材と評価され、より裁量のある仕事へのアサイン機会が広がることになるのです。管理職へチャレンジしていくことは、ビジネスパーソンとしての人生をイージーモードにもっていける可能性が最大限高まっている時代であると言えるでしょう。

管理職の苦境を構成する諸要素

何が管理職をハードモードに貶めているのでしょうか。冷静に要素分解し、対策を講じることが重要です。言い換えれば、ハードモードに冷静に対処する必要があるのです。

1.何より、職場で見る管理職がつらそう…

私がコンサルティングをしてきた中で感じるのは、管理職というものを特殊な機能と考えすぎている人が多いということです。

冒頭で示した調査の通り、そもそも出世に興味ない、という人は一定数いるでしょう。しかし、そうではなく後天的に管理職になりたくないという人もいるように感じます。

人の意識は、自らの経験(過去の情報)をもとに自らが上司になった姿(未来)を想像することになりますが、周囲の管理職がつらそうに悩みを抱えているシーンを見るにつれ、自分もそうなるとは限らないにもかかわらず、同じ未来を想像して「偉くなる」と大変だ、となっているのです。しかし、未来は、未来に向けた自身の行動が決定するため、これでは他責思考と言えるでしょう。

また、「自分の知識と経験の枠外のことをやりたいか?」と問われて、「やりたい」と答えられる人がどれだけいるでしょうか。ある種アンケートやリサーチの限界を示しているとも言えると思います。

最も重要なことは、組織内でその人を「偉くする」のは誰が決定するのか。少なくとも自分で選択することはできないでしょう。多くの場合、上司が決定するということになります。では、上司はどのような人を「偉くする」のか。当然「組織が求める成果を出せる人」ということになります。さらにいえば、組織内で成果を求められない人というのはいるのでしょうか。答えはNoで、「全員が成果を出すことを求められる」が原則です。

これらのことから、「偉くなりたくない」の裏側にある意識構造は「成果を出したくない」ということになってしまいます。管理職登用は、あくまでも成果を出した人に対する評価の一つに過ぎないという感覚も必要です。

2.働き方改革…労働時間削減の圧力

おそらく管理職ハードモードを決定づけているのは、「成果を出しながら、労働時間を削減しなさい」という会社側からの圧力でしょう。だが、これも自助努力で削減できるはずです。下記にその例を挙げます。

プロセスの管理

我々のコンサルティングの現場では部下に手を取られて、労働時間超過している管理職をよく目にしますが、ほとんどがマイクロマネジメント型の管理職です。一挙手一投足部下の挙動を見ているので、それは時間がかかるでしょう。あくまで管理のポイントは“結果”に持っていく必要があるのです。もちろん、部下の力量、経験、リテラシーいかんではすべて一様に結果のみを追っていればよいわけではありません。あくまでも原則論です。結果を定めて走らせるほうが、プロセスに自主性自立性が生まれ、成長促進にもなるし、到達できた時の内発的動機付けの獲得にも寄与します。

プロセスの評価

取り組みや、姿勢(がんばりや意気込みなど)、施策などを評価する管理職というのも多く目にしますが、これも逆効果かつ悪循環と言えるでしょう。プロセスを見てくれる上司のもとでは、部下はプロセスアピールに走ります。このため、さらに管理職サイドはプロセスの観察に時間をかけることになり、双方の労働時間を無駄に消費させることになります。

会議時間の削減

プロセスの扱いを変えるだけで、会議時間も圧倒的に削減が可能となります。問題や不具合に対して原因の追究や犯人探しに時間を浪費している会議を散見しますが、会議開催までにすでに確定している結果に対しては、各自参加者が原因+対策・改善案をそろえて参加しなくてはなりません。多少事実確認の時間を割いたとしても、発生した問題に時間をかけることなく、対策に時間をかけ、次の未来の時間軸でどう持っていくのかにコミットメントを行う場とすることが肝要です。

3.コンプライアンス…ハラスメントの恐怖

コンサルティングの現場で、労務管理に次いで管理職からの徒労を聞くのが、ハラスメント(で訴えられる)恐怖です。特に、近年上場企業の中間管理職がこの恐怖に委縮し、マネジメントがろくにできていないことを自戒しています。

ここで、しっかりと指導とハラスメントの線引きの原則を捉えておきましょう。ハラスメントは受け手が認識した場合、ハラスメントとなる怖さはあるが、指導とハラスメントは明確に違います。あくまでも、組織側が求めている役割に対しての差分を指摘し、成長を促すコミュニケーションの範疇であれば指導となるのです。この“範疇”が問題になるわけですが、主に感情的な叱責や人格否定、さらに、仕事とは関係のない事項に未達成原因を言及する場合にハラスメントとなります。指導とハラスメントの線引きを明確に認識しておくことが重要です。

4.部下育成…多様な部下属性

ダイバーシティの時代。年功序列、終身雇用の世界観ではなかった多様な部下が存在します。Z世代部下、年上部下などの年代から性別、国籍、雇用形態など、管理職は多様性を統合して集団として目標を達成する必要があります。結論、個人的な見解や感情を排して、どこまでもルールに基づく組織運営を徹底することです。

個人としての知識、経験を高めていくことを怠っていい、という主張ではありません。しかしながら、スキル経験の厚みや人間力で上に立とうとするから心労が絶えないのです。それぞれの要素で部下に劣っているものがあっても問題ありません。Z世代が特殊なのではなく、いつの時代も世代間の価値観の相違は当たり前だし、年上部下が常に年齢という尺度で年下上司を値踏みするのも常なのです。あなた個人だけに課せられた環境ではありません。

おわりに:より存在感を増す管理職を目指そう

人口動態の変化などから人的資本経営が叫ばれる中、より現場のマネジメントを行う管理職の希少性が増していくでしょう。前述の通り、ここから先、一定期間「なりたい」という人材は枯渇していく状況が予想されます。需給バランスが極端に崩れる中、ハードモードを構成している要素を冷静に読み解き対処する術を身につけ「なくてはならない人材」への道を邁進していってほしいものです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 


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