リーダーシップは映画からも学ぶことができます。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」では、今回、映画『十二人の怒れる男』からリーダーシップについて解説します。

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映画『十二人の怒れる男』は、シドニー・ルメットが監督し、ヘンリー・フォンダが主演を務めたサスペンス映画の傑作です。

映画では、集団が意思決定をする過程が緻密に描かれています。映画を考察していくことで、意思決定のためのリーダーシップについて学ぶことができるでしょう。

本記事では、映画『十二人の怒れる男』から読み取れるリーダーシップのあり方について解説します。

映画『十二人の怒れる男』のあらすじ

映画『十二人の怒れる男』は、ある殺人事件の陪審員として集められた12人の登場人物が繰り広げる密室劇です。以下、映画のあらすじを簡単に紹介します。

あらすじ

父親の殺害容疑で起訴された少年の罪を審議するため、裁判所の陪審員室にさまざまなバックグラウンドを持った12人の男が集められた。彼らは陪審員として、場にいる12人全員の意見を有罪か無罪かに統一させなければならなかった。

当初は全員が有罪を支持すると思われたが、最初の投票で8番の陪審員1人だけが無罪の立場を取る。8番の男が「十分な議論をせずに少年を有罪にするのは正しいことではない」と主張すると、他の陪審員も彼の主張を受け入れて少年の行動を議論し始めた。

8番の男が緻密な分析と論理的な推論によって裁判の証拠の矛盾を指摘したことで、他の陪審員も徐々に少年の無罪を支持するようになる。最終的には偏見から少年の有罪を主張していた陪審員も自身の意見を変え、全員が少年の無罪を支持するに至った。

この映画は、集団の意見を統一させるプロセスの複雑さを描いた作品です。その内容にはビジネスにおける意思決定やリーダーシップのあり方にも通ずるものがあり、組織マネジメントの教材としても広く活用されています。

映画におけるテーマ

組織マネジメントの観点から見ると、この映画には「集団における意思決定」「マイノリティ・インフルエンス」「自然発生的リーダーシップ」という3つのテーマがあります。

これらを考察することで、組織マネジメントやリーダーシップのあり方のヒントが見えてくるでしょう。

集団における意思決定

1つ目のテーマは「集団における意思決定」です。この映画は1人の男が異なる考えを持つ集団の意見をまとめ上げていく映画であり、そこには集団における意思決定の特性である集団凝集性が見られます。

集団凝集性とは、集団のメンバーを留まらせて1つにまとめるように働く力を表す概念です。そこにはメンバー個々の帰属意識やリーダーの求心力なども含まれます。

メンバーの結束力を高め、皆が納得する意思決定を行うためには、チームの集団凝縮性を高めることが重要です。

映画の中では、少年の無実を唯一主張した8番の男が、他のメンバーに疑問を投げかけ、皆の意見をまとめ上げていく様子が描かれました。これは8番の男の論理的な主張が求心力となり、集団凝縮性が生じた結果であると考えられます。

マイノリティ・インフルエンス

2つ目のテーマは「マイノリティ・インフルエンス」です。マイノリティ・インフルエンスとは、数的不利にある者が圧倒的多数の他者に対して影響を与える心理的効果のことを言います。

少数派の意見であっても、それが論理的に正しいと思わせることができれば、多数派の意見を塗り替えることが可能です。

マイノリティ・インフルエンスが発揮されるケースには、以下のような特徴があります。

・少数派の意見が一貫して頑なである
・少数派の意見が独断的ではなく、明確なエビデンスがある

映画の中では、8番の男が裁判の証拠の矛盾を論理的に主張することで、徐々に多数派の意見がひっくり返っていきました。この流れはマイノリティ・インフルエンスが働いた結果といえます。

自然発生的リーダーシップ

3つ目のテーマは「自然発生的リーダーシップ」です。映画に登場する12人の人物は全員が見ず知らずの他人であり、上下関係は存在しません。

しかし、少年の無罪を主張した8番の男は、議論において集団の意見をまとめる役割を担うようになりました。このように、集団の中で自然とリーダー的な振る舞いをとることを「自然発生的リーダーシップ」と言います。

通常、組織のリーダーは第三者による任命、もしくは集団の投票によって選出されることが一般的です。

しかし、自然発生的リーダーシップを発揮する人物は、チームとして行動するうちに自らの意思でリーダーとしての役割を担うようになります。その根底にあるのはチームをより良くしたい、より大きな成果を得たいという意思です。

映画では、8番の男が自然発生的に集団のリーダーとなっていく過程が描かれています。彼は、集団が誤った結論を出さないよう強い意志を持って行動した結果、自然とリーダーとして振る舞うようになったのです。

そして、この自然発生的リーダーシップは現代のビジネスにおいて非常に重要な要素と捉えられています。

組織がトップダウンではなく自然発生的リーダーを求める理由

自然発生的リーダーシップを発揮する社員は、強い主体性と責任感を持ち合わせていることが特長です。近年の組織マネジメントでは、組織の持続的な発展のためには個々の社員が主体的に仕事に取り組む姿勢が重要であると考えられています。

社員の主体性が求められる背景にあるのは、かつてないほどのスピードで変化する現代のビジネス環境です。直近の10年間で見ても、クラウド技術やAI技術の発展により企業を取り巻く環境は大きく変化しました。

このような環境下では、従業員にも自ら状況を判断して柔軟に対応する姿勢が求められます。トップダウンの組織は時代の変化に対応しにくく、企業間の競争に打ち勝っていけないでしょう。

自然発生的リーダーシップを育む方法

自然発生的リーダーシップは個人の特性によってのみ発現するものではありません。適切な組織マネジメントにより社員の主体性を育む環境を整えれば、自然発生的リーダーが現れます。

自然発生的リーダーシップを育むために必要な取り組みは権限の委譲です。リーダーやマネージャーが有していた権限を広く開放することにより、従業員がより自分の理想を実現しやすくなります。

また、挑戦しやすい風土を作り上げることも大切です。失敗を咎めたり良くない結果に対して懲罰を与えたりする組織では、誰もが仕事に対して消極的になります。

社員が失敗を恐れずにチャレンジできる組織であれば、リーダーとして大きな仕事を成し遂げようとする社員も現れるでしょう。

組織におけるリーダーシップに迷ったら映画を見てみよう

『十二人の怒れる男』は、その内容からさまざまなビジネスのヒントを得ることができる映画です。

主人公である陪審員8番の男の立ち居振る舞いは、リーダーシップのあり方を考える上でも参考になります。自身のリーダーシップに迷ったときは、映画から学ぶのも良いでしょう。

【この記事を書いた人】
識学総研 編集部/株式会社識学編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作中。3,000社以上に導入された識学メソッドも公開中です。
・コンサルタント紹介はこちらから https://corp.shikigaku.jp/introduction/consultant

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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