マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を考察するシリーズ。今回は、DX(デジタルトランスフォーメーション)導入を成功させるためのポイントを解説します。
現在、社内でDX推進の任を受けている方の中には、どう上手く進めていくのが良いのか悩まれている方がいるのではないでしょうか。ここでは「The DX人材」になるために日常の業務の中で確認しておきたいポイントや、心構えなどを解説します。DX人材になるためには必ずしもデジタルの専門知識が必要なのではなく、むしろ日頃の小さな気づきを解決するために、外部(ベンダー)などと協力する人材であることが重要です。そこで押さえておきたいヒントは、責任者(決定権者)に求められることの見極め、やるべきことを明確にする工程づくりの徹底、自己評価意識の否定、以上の3つとなります。
1.責任者に求められることの見極め
新たな仕事を進める際、何から始めればと悩む方は多いはずです。この時のポイントは、「何から始めれば」という疑念を払拭することです。多くの人は「何から始めれば」の確認をしようとしますが、この考えが失敗を招きます。
1つ目の要因:上司に何から始めればと確認すると、「それを考えるのがあなたの仕事です」と突き返されるから。
2つ目の要因:上司に確認して何から始めるか教えてもらっても、ゴールが明確でないことで、ゴールできたと自身で思っても上司から評価されない、またはゴールが明確でないため、都度動きを聞きに行く行為が続くことにより、上司から評価されないという結果が発生するため。
そのため、「何から始めれば」の前に、何を求められているかを明確にするのがポイントです。
この「何を求められているか」は「DX化の推進」という言葉ではありません。DX化といっても多岐にわたります。勤怠、稟議、契約チェック(法務業務)、〇〇の工程管理、給与計算、営業部門の進捗管理、営業~製造に移行がスムーズに行える管理ソフト導入、ハラスメント報告管理、プロジェクト進捗共有、在庫管理等の具体的な業務、ひいては「何から始めるのが適切か」の見極め「提案提出」といったものまであります。このゴールを上司に確認する、もしくは上司からも出てこない場合、上記を参考にして自身でゴール状態を提案し承認を得ることをお勧めします。
2.やるべきことを明確にする工程づくりの徹底
ゴールを明確にしたら「DX人材」として押さえておきたい次のヒントは、やるべきことを明確にする工程づくりの徹底となります。
まず、ここでのポイントは、外部(ベンダー)と上司と話し合い、(ア)予算、(イ)実行タイミング、(ウ)上司の承認範囲(もしくは自身で決められる範囲)をいつまでに押さえておくかを、明確にしておくことです。これは、工程(スケジュール)で明確にしておく際に重要です。なぜならこの3つをふわっとさせておくと、余計な確認事項が各工程の際に発生し、DX推進の妨げになります。
また、この各項目の押さえておく際のポイントとして次のようなことに注意しましょう。(ア)どれくらい予算が発生するのかわからないため、予算は決まっていない/決められないことが発生しやすいもの。そのため、(イ)実行タイミングをまずは適当でも出し、その手前の点を決める「実行タイミング正式確定」という点を、「予算確定」とセットにする工程を上司と組んでおくことをお勧めします。(ウ)上司の承認範囲(もしくは自身で決められる範囲)については、この(ア)予算、(イ)実行タイミングの確定後、上司と決めていくことがポイントです。
工程づくりは、ゴールの難易度にもよりますが基本は、(1)情報収集、(2)予算決定、(3)外部の相見積もり、(4)システムテスト運用、(5)承認、(6)システム構築、(7)運用ルール作成、(8)システム実行が良い例です。
まず、(1)情報収集ですが、2つの情報収集を必ず入れることが重要です。1つは外部への情報収集(市場調査)、もう1つは内部への情報収集(課題ヒアリング)、この2つを工程に入れておくと正式運用してからの見落としや習性が最小限になります。
(3)外部の相見積もりは、(2)予算と前段の実行タイミングを把握した上で「打ち合わせの実行」を鉄則としましょう。なぜなら外部(ベンダー)と打ち合わせに臨む際、この2つの権限を持っていないと判断されると、上司を入れて進ませてほしいといったもう1つの工程を求められることになります。もしくは、導入が期限通りできるかわからないので、外部(ベンダー)が持っているサービス導入期間と合わないから導入できるか約束出来ないといった状態が発生しやすくなります。これが原因で相見積もりの候補に入ってこず、結果、相見積もりできる業者が揃わず、DXを導入できませんといったことになりやすくなります。
(4)システムテスト運用は、導入が決まってからという外部も多く、すべてが対応可能にできるわけではありませんが、DX運用を成功させる確度が上がる要素です。そのため、求めているサービスの合致度が明確でない段階の場合、テスト運用ができる外部から優先度を高く選んでおくことが成功させるために重要だと捉えてください。
(7)運用ルール作成は、構築に比重が重くなり、よく抜けがちになる項目です。運用において、実働する者、それを管理する者をスケジュールにセットにして作成するのですが、システム実行する手前の重要工程ポイントとして、運用ルール作成を組み込んでおくと、運用がスムーズになります。
以上のように「DX人材」として評価されるときには、各工程の結果設定を徹底的に行うことが重要であり、その結果設定通りにゴールできなくても、新たに結果設定を修正していくことで、DXの導入成功に繋がります。
3.自己評価意識の否定
「DX人材」として評価を得ていく最後のヒントは、「自己評価意識の否定」になります。これはDXを成功に導く際の仕事の姿勢ということになります。
自己評価意識の否定とは、簡単に言うと「自分はわかっていると思うな!」というものです。社内でもノウハウがないことを取り組むにあたり、様々な知識、外部/内部の人間とふれあい、情報を取得していく「DX人材」は社内でも誰よりもDXについての知識が上がります。このような状況になった際、様々な情報を取得していく局面で対人の意見を聞いていくときに、「DX人材」側の意識が「この人はわかっていないな、的外れだな」と思って接すると、意識が上からの立ち位置になり、発する発言も相手の意見を論破する形になりやすく、有益な情報が得られないことが多くなります。そのため、「DX人材」として評価を得ていくために、どの局面でも意識が下からの立ち位置、つまり「教えてください」という立ち位置に徹することが、DXを成功に導く重要なヒントとなります。ちなみに、優秀な「DX人材」は、DXの運用がスタートできたときに周りの関わった人たちから「この人に任せて良かった」と思われた瞬間に上の立ち位置になります。
まとめ
以上がDXを成功に導く「DX人材」が押さえておくべきヒントです。DXは会社環境を変えていくという点において「社内ベンチャー」とも言えます。そういう意味で、会社の成長を促進させることができ、大きな権限も獲得できます。また、任命された仕事を果たしていくことで新たなキャリアにも繋がります。チャンスがあるのであれば、是非「DX人材」になることをお勧めします!
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