「心理的安全性」という言葉をご存じでしょうか? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」では、心理的安全性の構築は重要な経営テーマである、と説きます。その理由を知り、ビジネスに活かしましょう。

* * *

2015年にグーグル社が「心理的安全性を高めることによってチームのパフォーマンスが向上する」と発表したことから、「心理的安全性」という言葉が注目を集めるようになりました。

今回は、どのようなマネジメントをすれば職場の心理的安全性が高まるのか、識学講師の視点から解説していきます。

そもそも:心理的安全性とは?

心理的安全性とは、組織のなかで安心して過ごし、自分の意見や考えを伝えられる状態のことです。

1999年に組織行動論を研究するエドモンソンが提唱した心理学用語(*1)でしたが、2015年に入りGoogleが「心理的安全性」を企業に持ち出したことから、心理的安全性という言葉が重要視されるようになりました。

Googleが行った実験「Project Aristotle」では、チームの効果を最大まで高めるための因子を特定。数百におよぶ変数を35種類以上の統計モデルで解析した結果、「誰がチームのメンバーか」よりも「チームがどのように協力しているか」の方が重要だということがわかったのです。

Googleでは心理的安全性を下記のように説明しています。

「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
google re:Workより

このほかにも

・相互信頼:責任の転嫁が起こりづらくなる
・構造と明確さ:OKR(目標と主要な結果)により目標設定を明確にする
・仕事の意味:誰のために働くのかという個人の理念
・インパクト:組織の成長に自信の行動が寄与しているか

上記のような因子がよいチームを作るうえで必要になることがわかりましたが、この中で最も貢献度が高かった因子が「心理的安全性」でした。

ただし、上記の結果はあくまでもGoogleの実験結果であったことを私たちは認識しておく必要があります。

また、心理的安全性とは抽象度の高い概念であり、すべての企業が前に倣えで同じ施策を投じても効果が出ない可能性がある。そうした事実を踏まえて、心理的安全性について考える必要があるのです。

自己評価と他者評価が一致する職場は心理的安全性が高い

改めて、心理的安全性が高い職場とはどのような職場でしょうか。

この問いに対して、「穏やかな雰囲気がある」とか「自分の思いや感じた内容を素直に伝えられる関係性」などと答える人は多いでしょう。

弊社識学の結論を先に述べると、心理的安全性が高い職場は「自己評価と他者評価が一致する職場」です。

自己評価と他者評価が一致するとは具体的にどういうことか。

それは、仕事の結果に対する自分なりの評価と直属の上司の評価が100%一致する状態です。

皆さんの職場ではいかがでしょうか。仕事に対する自己評価と上司の評価は一致していますか。一致させるためにすり合わせを行ってはいませんか。

自己評価と他者評価が一致しないとすれば、その原因は評価基準が曖昧だからにほかなりません。同じ物差しで評価していないということです。それぞれの価値観を基準に仕事の結果を評価してしまっていると、両者の評価はずれてしまうのです。

価値観はその人が蓄えてきた知識、積み重ねてきた経験によって形成されます。同じ事象であっても、それぞれの価値観で見比べた場合、その評価が100%合致することはあり得ません。

お互いが理想とするゴール設定が異なっていれば、いくら時間と資金を投じても心理的安全性が高い職場は実現できません。

自己評価と他者評価が一致すればGoogleのその他指標項目も高まる

googleは、チームを勝たせるための因子として下記のようなものを提唱しています。

・相互信頼:責任の転嫁が起こりづらくなる
・構造と明確さ:OKR(目標と主要な結果)により目標設定を明確にする
・仕事の意味:誰のために働くのかという個人の理念
・インパクト:組織の成長に自信の行動が寄与しているか

これらはすべて、ゴール設定を明確にすることで解決する項目です。

ゴール設定が明確になれば、個人の果たすべき役割が明確になります。役割には責任が付随するため、責任の転嫁は起きません。個人の目標を達成すれば組織において貢献したことになる。すなわちgoogleの示すところの「インパクト」を満たすことになります。

つまり、自己評価と他社評価を一致させることは、ほぼすべてのチーム課題を解決できるといっても差し支えないくらい有効的なのです。

ゴールをメンバー全員で共有しよう

大切なことは、基準を明確に定義することです。誰が判断しても心理的安全性が高いか低いかの評価が一致する状態を整えることです。

それをしないまま、頻繁に飲み会や社内ゴルフコンペの開催、定期的な1on1ミーティングなどをしてしまいがちですが、効果はありません。

職場を構成するメンバーは今まで以上に多様化していますから、似た価値観の者同士で職場を構成できる確率は下がる一方です。この環境下で自分なりの居心地のよさを追求させると、各自が利己的になり、すり合わせを行ってもうまくいかず、感情的な軋轢に発展する確率が逆に高まってしまいます。

心理的安全性を向上させるためによかれと思って行うさまざまな施策が、逆に職場を荒廃させてしまうことになりかねません。

心理的安全性の構築は重要な経営テーマ

心理的安全性が高い職場ほど仕事の効率化が進んで成果がアップし、組織内の人間関係が深まります。

心理的安全性が高い職場の構築は重要な経営テーマです。これを追求するマネジメントは、今後一層求められます。

*1:実際アカデミアの世界で心理的安全性(Psychological Safety)が登場したのは、1965年のSheinらによる論文であったが、定義づけされたのは「Shared belief that the team is safe for interpersonal risk taking. Edmondson 1999」であった。

【この記事を書いた人】
池田泰司/中央大学国際経済学部を卒業後、商社でキャリアをスタートし、繊維部門の営業として25年従事。 その後、人事系コンサルティング会社を経て、識学と出会う。手探りのマネジメントをしていた経験から、原理原則を学べば課題を解決できると感じ、識学に入社。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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