部下を褒めて育てる、というのは、よく言われることだ。だが、それには罠がある、と、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」は説く。いったいどういうことなのだろうか?

* * *

部下の実力を最大限引き出すためにはどうすれば良いかを考え、プレッシャーを与えずにとにかく褒めるという方針を採用している経営者の方は少なくないでしょう。

しかし、それでは一時的に上手くいくことはあっても、組織の持続的な発展には結び付きません。

何を隠そう私自身が、褒めるマネジメント方法を採用し、ひどい目に遭った一人です。褒めることの裏側に潜む罠について、実体験をもとに解説します。

マネジメントに悩みとにかく部下を褒めた過去

私は大学を卒業した後、商社の繊維部門にてキャリアをスタートさせました。アパレル業界の特性は、変化が激しく不確実であることです。

ファッションには春夏秋冬のシーズンがあり、流行り廃りのトレンドがあります。景気動向や異常気象などによっても売り上げが大きく変動します。アパレルは、見えない未来に挑み続ける業界の代表と言えるかもしれません。

このような業界特性の下、私は管下のメンバー十数名を率いて、予算達成にもがき苦しむ生活を送ってきました。そこで求められるマネジメントは、「瞬発力」と、変化のスピードに対応できる「組織機動力」でした。

私のチームは、女性が9割を占めており、周囲からは「ハーレム」と冷やかされるほど華やかなチームでした。

ただ、「商品の可愛らしさ」を追求するデザイナー陣、「進捗の安定が第一」の生産チーム、「コストの安さが一番」と信じる営業チームと、ことあるごとに利害が対立するチーム間の運営に悩みが尽きないのが実情でした。

私は、常に主張が対立するメンバーたちをいかにスピーディーに、同じ方向に向かわせるかの答えを探し続けていました。

そこで私が取ったやり方は、褒めるマネジメントでした。「褒める」ことと「褒められること」で指示命令者と指示実行者との関係性を構築し、「褒められること」にメリットを感じるメンバーを「褒める」ことでまとめ上げるマネジメントを行ったのです。

とにかくメンバーを褒め続けました。ちょっとしたことに対しても、ありがとうとはっきり伝えました。一人ひとりの言動にアンテナを立てて平等に褒めることを愚直に実践するマネジメントに徹してきました。しかし、それこそが大きな間違いだったのです。

良かれと思って行ったマネジメントの果て

社内予算も順調に達成し続ける中、ある事件が発生しました。長年仕事を共にし、頼りにしてきた女性社員が、人事部に対して「私の上司はえこひいきばかりで、辞めたいです」と泣きながら直訴したのです。 

私はすぐに営業部や管理部の役員から呼び出しを受け、数回に及ぶ事情聴取を受ける羽目に。結局、その女性社員は他チームへ異動となり、私も外部のマネジメント研修に強制参加させられたことで、この一件は収束しました。

多少の揉めごとはあるにせよ、結果を出し続けるチーム運営を行ってきたと自負していた私にとっては、思いもよらぬ出来事でした。

平等に褒めてきたつもりでしたが、実際にはチームメンバーにえこひいきをしている上司と思われていたのです。良かれと思って行ってきたマネジメントが原因で、自らチームの生産性を下げる自体を招いてしまいました。

組織としての存在意義がなくなる

一般的に人は褒められることに喜びを感じます。人間には、自分の存在を周囲から肯定的に認められたいという根源的な欲求があるからです。私自身、周囲を褒めることができる自分に居心地の良さを感じ、褒めた相手の好反応で自分の存在意義を確かめていました。

当時の私は、年齢や利害関係、上司と部下の枠を超えた、人対人のフラットな関係の構築にこそ尊さを感じていました。個人としての存在意義を満たすことで心は豊かになりましたが、しかし、組織が組織としての存在意義を失っていることに気づくことはできなかったのです。

チームの和をまず重んじることで、不利益なことを言わなければいけない時にオブラートに包むような言動を繰り返していました。

結果を出さないのに褒められていると、その部下は褒められなければ頑張れなくなります。そうして、どんどん当たり前の基準が下がってしまうのです。私は私で、常にメンバーの言動を観察せざるを得ず、褒めることの平等性担保に必死でした。

第一線の現場から目を離すことができず、本来管理職として果たさなければならない役割が中途半端となる有様。結果、メンバーの居心地の良さと組織の持続的発展とは両立せず、業績はその後伸び悩むようになります。

「正しいマネジメント」に必要なものとは

「正しいマネジメント」を「メンバーの成長と組織の発展が持続的に両立する状態」と定義したとき、具体的には何が必要でしょうか?

この問いに対して、識学の視点から解説していきたいと思います。

位置関係の構築

一般的に大人は、「家庭」、「会社」、「友人」の、大きく3つのコミュニティーに属しています。この3つの内、生活の糧を得ることのできるコミュニティーは「会社」です。

よって、「家庭」や「友人」とは異なる関係性が存在します。それは上下関係です。この「上下」が意味するものは、「偉さ」とか「強さ」ではなく、「責任の大きさ」です。

会社には「指示命令者」と「実働者」としての責任がそれぞれ存在します。決してフラットな関係性は存在しないのです。

「パワハラ」や「セクハラ」、「モラハラ」が大きな社会問題となる昨今、部下に嫌われたくない、物言えぬ上司が数多くいらっしゃいます。

その上司は良かれと思って部下との関係性を縮め、フラットな関係を構築しようとしますが、そもそも会社にはフラットな関係は存在しないという事実に気付くことが必要です。

組織を構成する個々人が自らの役割を正しく認識することからマネジメントがスタートします。

成長環境の整備

成長には「背が伸びた」や「お酒が飲める年齢になった」など、様々な定義があります。

会社で働く上での成長を「できなかったことができるようになる」とした時、上司は部下にできていないことを認識させることが求められます。皆の解釈が一致するように目標を設定し、客観的に評価をするマネジメントが必須となるのです。

できていないことを正しく認識できた後は、それができるようにならなければなりません。具体的には、できなかったことを踏まえて次の目標を設定し、今までとは違い、行動を導くマネジメントをするのです。

このサイクルの習慣化が、メンバーの成長が持続する環境の整備となります。

組織に所属するメリットを醸成せよ

組織の持続的発展にはメンバーの定着が求められます。離職率が悪化し続ける組織に、持続的な発展は望めません。

人生100年時代を迎える今、企業より人の方が長生きします。今まで以上に転職をする人が増えていく世の中にあって、「人の定着」は大きな経営テーマです。「定着」することに対するメリットの醸成が求められます。

人の定着は組織の成長が作ります。「この組織にいるからこそ成長できる」という環境こそ組織に所属することのメリットです。メンバーの成長をコミットするマネジメントが、これからの上司には一層求められます。

良かれと思って行っているリーダーのマネジメントが、メンバーの成長を妨げ、組織の崩壊へと繋がる恐れもあります。私と同じミスを犯さないためにも、この記事が、読者の方のマネジメントを振り返る契機となれば幸いです。

【この記事を書いた人】
池田泰司/1991年に中央大学国際経済学部を卒業後、商社でキャリアをスタートし、繊維部門の営業として25年従事。その後、人事系コンサルティング会社を経て、識学と出会う。手探りのマネジメントをしていた経験から、原理原則を学べば課題を解決できると感じ2020年1月に識学に入社。

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いかがでしたか? ただ単純に褒めるのではなく、チームとしての成長を重視したマネジメントが必要だということがおわかりいただけたでしょうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

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