部下を注意するに際し、なかなか自分の思っていることが伝わらない、とお悩みの方も多いことだろう。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、部下に受け入れてもらう「注意」の仕方を学ぼう。

* * *

仕事の直しを指摘するときにどうすればよいか

部下がなかなかいうことを聞いてくれない。
何度も同じミスをする。
どうも真面目に捉えていない。

ビジネスパーソンに欠かせないのが、社内や客先とのコミュニケーションです。しかし、こんなふうに悩んでいるビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。

仕事上では、相手に注意をしたり、直してもらったりするシーンが出てきます。マネジャーともなれば、部下の指導をしなくてはなりません。パートナー企業に訂正依頼をすることもあるでしょう。

残念ながら「全部思ったように自由にやって大丈夫」といって、その結果を丸々受け入れられるほど、ほとんどの現場は甘くありません。社内やクライアントの要望により訂正するシーンは、いくらでも出てきます。では、直しを指摘するときにどうするか、です。

「何を言っても怒られたり馬鹿にされない」という安心感が重要

かつては厳しく「ダメ出し」をして、怒鳴ったり叱ったりするだけでよかった時代がありました。しかし、これがどんどん難しくなっています。

今はどの会社でも、全社員が「正社員としての教育」を受けているわけではありません。社内には、正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・外注のパートナーとさまざまな人が入り乱れ、さらにはプロとアマチュアの境が曖昧になりました。外国人スタッフもいるかもしれません。

正社員の部下にしても、下手に叱るとパワーハラスメントだと訴えられてしまうこともある状況です。

昨今、Googleが「クリエイティブな仕事のためには、心理的安全性が重要だ」と言い出して話題になりました。要するに、特に、クリエイティブに働くためには、「何を言っても怒られたり馬鹿にされない」という安心感が重要だというのです。

こんな「注意」に対する逆風が吹くなか、果たして

「どうやって部下を指導するか」
「そうは言っても、褒めているばかりじゃ無理だろう」

と頭を悩ませているマネジャーもいるのではないでしょうか。

「8割褒めて、2割注意する」注意するには話の順番を意識すること

そんな中、「ほめちぎる自動車教習所」が話題です。

「褒める」をはじめて、卒業生の検定合格率が増え、生徒が3倍になったばかりか、しっかり成果が上がっているーーつまり、卒業生の事故率が半減したというのです。以下はダイヤモンド・オンラインの記事の抜粋です。

運転技術の向上は、しっかりほめて認めてあげる。安全に関することは、しっかりと注意をする。そして、順番を大切にしています。まずは、「ほめる」ところから入っていく。
どんな小さなことでも、当たり前のことでも、まず「ほめる」。
シートベルトを締めたら、そこで「すごい、ちゃんとシートベルト締めたね」「おお!今の後方確認のタイミング、バッチリやね!」とほめる。
 そして、改善点があれば、「惜しいのが…」と続けていくのです。[1]

この記事では、「8割褒めて、2割注意する」が重要とも書いています。

思い出したのが、マレーシアのインターナショナル・スクールの先生たちです。やはり最初に先生たちが子どもを褒めまくるのでびっくりしました。

そして、よく見ていると、自動車学校と同様に、先生たちは日本の学校に比べてもかなり厳しい面を持っています。しかし、子どもは「先生は自分のためを思ってくれている」と主張していました。

どうやら、受け手が「自分のための注意だ」と認識するためには、順番が大事なのです。

上記のダイヤモンド・オンラインの記事を執筆したのは、西村貴好さん。彼は、「褒めること」をテーマにした活動をしており、「一般社団法人日本ほめる達人協会」の理事長でもあるそうです。

どれだけ正しいことでも、いきなり厳しいことを伝えると、相手の心の中に「知覚的防御」が生まれます。この人の言葉は私を傷つけると脳が判断して、意識の中に入っていかない、記憶に残らないようにしてしまうのです。いわゆる、「心のコップが下を向く」という状態です。[2]

つまり、「褒める」先生はおそらくテクニックとして「褒めて」いたのかもしれません。

注意する側の「人間力」が影響する

そうはいっても、「部下を叱らなければいけないシーンもあると思うんです。褒めてばかりでは仕事になりません」と言うビジネスパーソンもいそうです。

西村貴好さんが執筆した「ほめ下手だから上手くいく「ほめられない」を魅力に変える方法」には、こんな一説がありました。

「ほめる」「叱る」どっちが大事か、この問題よりも重要なポイントがあります。それが前述した、その言葉を「誰が言うか」ということ。[3]

つまり、最初に「心理的防御」が働いた相手からの言葉は受け取りにくくなり、「信頼できる」と感じた相手からの言葉は受け取れるということです。

あなたも、嫌いな上司から小言を言われると全く耳に入らないのに、恩義のある上司から言われた言葉は、なぜか真摯に受け止められる、そんな経験がないでしょうか。自分が言われた身になって考えてみると、「なるほど」となるかもしれません。

同じことを言われても普段の関係性や、相手をどう思っているかで受け取り方は大きく違います。それに、心にも思ってないことを口先で「褒め」ても、相手には大して伝わりません。

この「誰が言うか」に関しては、人間力における「誰が」という点と、関係性における「誰が」という2点があります。[4]

つまり、言う側の「人間力」が非常に重要になってきます。

見張られているのか、見守られているのか

この本にはもう一つ、非常に興味深い例が出てきます。

ある焼き鳥チェーン店では、かなり厳しくアルバイトを叱っているのですが、アルバイトの側からは

「この会社は、私たちを見張っているのではなく、見守ってくれている」

と賞賛されています。

筆者がこの会社を筆者が観察してみてわかったことは「ポジティブ・フィードバック」があることです。

アルバイトスタッフの行動に対して常に添えられている「評価」と「感謝」と「共感」の声がけ、ポジティブ・フィードバックです。[5]

つまり、普段の「注意する側」の態度により、部下の側が「見張られている」と感じるシーンと、「見守られている」と感じるシーンがあるというのです。順番や普段の声かけによって、ちょっとした注意の受け取り手への印象が大きく変わります。

これは私も経験があります。雑誌の編集部にいた頃に強く感じたのはこの「守ってもらっている」感じでした。

読者に誤りを指摘される前に、編集者や校閲部が助けてくれる。そんなポジティブなイメージでいると、職場は助け合いの場所に見えてきます。

先のインターナショナル・スクールでも、先生たちは挨拶を欠かさず、ちょっとした生徒の仕草を見つけて褒めていました。

私は「褒めるところを探すのがうまいなぁ」と思いましたが、これが「見守られている感」につながっていたのかもしれません。

しかし、「見守られている」感じにつなげるためには、普段からの密接なコミュニケーションと人間力が、欠かせないのです。

【参照】
[1][2]ダイヤモンドオンライン
「ほめちぎる自動車教習所」少子化でも生徒数3倍増の理由
https://diamond.jp/articles/-/231824
[3]-[5]「ほめ下手だから上手くいく「ほめられない」を魅力に変える方法」
西村貴好:一般社団法人日本ほめる達人協会理事長 (ユサブル)

この記事を書いた人
識学総研 編集部 株式会社識学内にある、コンテンツを企画・制作する編集部です。 『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作。

* * *

いかがだったでしょうか。「注意」に際しての順番は、密接なコミュニケーションと人間力が、重要だということがおわかりいただけたでしょうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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