空前の人手不足が続く中、企業が“できる人財”を採用することは困難な状況になっています。そこで、日本マクドナルドの「ハンバーガー大学」で学長や、「ユニクロ大学」部長を務めた有本 均氏の著書『全員を戦力にする人財育成術 離職を防ぎ、成長をうながす「仕組み」を作る』から、採用した人をできる人財に育てる方法を紹介します。

文 /有本 均

評価制度が果たす3つの役割

私たち、ホスピタリティ&グローイング・ジャパンはサービス業に特化した人財サービスを提供する企業として、創業から8年で3000社以上の顧客企業に対して研修を実施し、研修受講人数はのべ34万人以上に達しました。社員の成長を重視する企業がそれだけ多い、ということですが、このところ研修に加えて、評価制度の導入支援を依頼されることが増えています。

人財育成の50%は「教育」で、50%が「評価」だと私は考えています。顧客企業の多くが、育成を試みても期待したほど成長しているとは感じられない。そこで、教育だけでは十分でない、と気づいたからこそ、評価制度に関するご相談が増えているのだと思います。中には、そもそも評価制度がなかったという企業もありますし、制度はあるものの、うまくワークしない、という企業もあります。

そこで本章では、制度の導入の仕方と、制度をしっかりとワークさせる方法について解説します。

まず、あらためて「評価制度がなぜ必要なのか」「その本来の目的は何か」を考えてみましょう。

評価制度は、社員の業務貢献度をランク付け、もしくは点数付けをして、それを給与に反映させ、昇給させるなどの処遇に活かすものです。しかし、処遇すること、給与に差をつけることが目的なのではありません。本来の目的は(1)社員に成長してもらうこと、(2)仕事にやりがいを持ってもらうこと、(3)長く働きたいと思ってもらうこと、という3点に集約されるでしょう。それをまとめて一言で表すなら、「評価制度は人財育成のためにある」ということになります。

そのことを中心テーマとして、制度設計をする必要がありますし、これについて経営者は、強い覚悟を持って取り組まなければなりません。それが大前提になります。

社員の成長が第一の目的

社員に成長してもらう、という目的を達成するためには、まず働く人に「どうなってもらいたいか」、つまりは会社が望む人財像をはっきり定義する必要があります。グローイング・サイクルの「1基準を示す」に当たるところですが、その基準が高いレベルで実現できている、ということが成長しているということになります。

まずは、会社としての基準を作ること。人によって成長の捉え方は違うかもしれませんが、会社としての基準が決まれば、レベル感が合ってきます。人は誰しも、いい評価をされたら、もっと頑張ろうと思いますし、評価が悪ければ、次は挽回しよう、と考えるものです。

(2)仕事にやりがいを持ってもらう、という目的は、納得性の高い評価制度によって評価し、面談を通して適切なフィードバックをすることで、自ずと達成されるはずです。

ただし、昨今は、いい評価=昇格というような、従来型のステップアップを望まない層が生まれてきていることには注意が必要です。第2章でも触れましたが、例えばサービス業において「店長にはなりたくない」という若手が増えてきたように、やりがいが多様化しています。それについては、役職は上がらなくとも、頑張れば昇給するというような制度上の対応が求められます。

長く働いてもらうには?

(3)長く働きたいと思ってもらう、という目的を達成するためには、この会社でどういう風に成長していくか、キャリアアップしていくか、どのぐらい給料が上がっていくかなど、将来のビジョンについて社内でしっかり目標が持てる状態にすることが必要です。

経営者は強い覚悟を持って評価制度導入に取り組まなければならない、と書きましたが、その意味は、「制度をスタートしたら、止めることはできない」ということです。止めるということは、社員の成長支援を放棄するということ。そうなると、社員のモチベーションはどうなるでしょうか。当然下がっていくことでしょう。だからこそ、経営者には覚悟が必要なのです。

私たちは、すでに評価制度はあるものの、なかなかうまくワークしない、という課題を抱える企業の方々を対象にした「評価制度見直しセミナー」を実施していますが、そこでまず申し上げているのは、本来の目的は何かをしっかり再認識してほしいということです。繰り返しになりますが、評価制度の目的は、人財育成にあります。ここまでに述べてきた前提に当たる話については、ほとんどの方に「なるほど」と響いているようです。


有本 均(ありもと・ひとし)
株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン 代表取締役会長、グローイング・アカデミー学長。1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年生からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルド株式会社に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。2003年、株式会 社ファーストリテイリングの柳井正会長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」部長に就任。その後、株式会社バーガーキング・ジャパン代表取締役など、外食・サービス業の代表、役員を歴任する。2012年、株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。 日本マクドナルド、ユニクロ等を経験して得た「人財育成のノウハウ」を活かし、世界中のサービス業の発展を目指す。

『全員を戦力にする人財育成術 離職を防ぎ、成長をうながす「仕組み」を作る』
有本 均 著 ダイヤモンド社

           

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