さつま芋が日本に渡ってきたのは江戸時代初期で、普及したのは中期といわれています。享保の大飢饉をきっかけに、救荒食物として栽培が推奨されるようになりました。
次第に庶民に普及するとさまざまな料理法が考え出され、1789 年には、さつまいも料理のレシピを123つ紹介する『甘藷百珍』が発行されます。
今回ご紹介するのは、『甘藷百珍』の「奇品」部門の30番に載っている「衣かけ芋」です。芋の天ぷらにひと手間加えたアレンジレシピが2つ紹介されています。
①衣に醤油で味付けするアレンジと、②さつまいもとしょうがを、それぞれ細切りにして前者同様に醤油風味の衣で揚げるかき揚です。では、それぞれの作り方をご紹介しましょう。
■「衣かけ芋」の作り方
◎材料
さつま芋 中1本(半分はかき揚用)
ショウガ 1片
天ぷら粉 100g
水 100cc
醤油 大さじ2
天ぷら油 適量
【アレンジ①】
①小麦粉と水を混ぜて、醤油を加えて味付きの衣にする。
②芋を絡めて、油で揚げる。揚げ時間は3分が目安(竹串を刺して、すっと通ればOK)。
【アレンジ②】
①芋とショウガを千切りにしてアレンジ①で使って残った衣と合せる。
②たねを油に入れて、衣が薄く色づいたらひっくり返す。揚げ時間の目安は1分半~2分程度(箸で触った感触がカリッとしていればOK)。
■醤油風味が香ばしい芋の天ぷらが完成!
アレンジ①は、いつもの衣に醤油を加えるだけですが、揚げることで醤油の香ばしさが膨らみ、さつまいもの甘味を引き立てていました。
アレンジ②は、ほっこり甘いさつまいもに、ショウガと醤油の風味が加わり、なんともおもしろい味になりました。お酒のおつまみになりそうな味です。
最近は、レシピサイトでユニークなアレンジレシピをよく目にしますが、江戸時代の人たちも同じようなことをしていたんですね。食への探求心は、今も昔も変わらないようです。
※『江戸料理読本』(著者・松下幸子/ちくま学芸文庫)、『料理百珍集』(校註/解説・原田信男/八坂書房)
※分量や細かい作り方は原本に記載されていないため、筆者が作った方法でご紹介しています。
文/小野寺佑子
撮影/五十嵐美弥