永遠の都・ローマ。ヨーロッパきっての観光地として名高い地だが、ほとんどの観光客はホテルに滞在し、せいぜい数日見物して他の場所に移動してしまうだけだろう。じっくり腰を落ち着けて、暮らすように旅してみたい……この夏そんな憧れを叶えたのが、元・出版社勤務の中川豊さん(66歳)。ローマの中心部に部屋を借りて1か月、ゆったり気ままに見て回り、食べて回ったローマ(とその周辺)の旅の記録を、数回にわたって紹介いただきましょう。
前回の記事: 天才画家カラヴァッジョの作品を求めてローマの教会を巡る【イタリア・ローマを歩く 第3回】
前回はカラヴァッジョの作品を教会に訪ねてまわった。教会は、独特な聖なる雰囲気のなかで作品を鑑賞できるすばらしい場ではあるが、やはり作品探訪にあたって美術館は外せない。
カラヴァッジョの作品は、ローマでは複数の美術館に展示されている。そしてどの美術館も、「わが家」のあるナボーナ広場から歩いていける距離にある。
もちろんどの美術館にも、カラヴァッジョ以外にも見ておきたい作品が多数ある。1日に1つずつ美術館を訪れ、じっくり鑑賞することにした。
それでは、ローマの中心から歩いて訪ねた「カラヴァッジョのある美術館」を、お勧め順に1館ずつご紹介していこう。
■1:ドーリア パンフィーリ美術館
ナボーナ広場から徒歩約14分で、ヴェネチア広場近くのパンフィーリ宮殿に到着する。その豪華な宮殿の一角を解放した美術館が「ドーリア パンフィーリ美術館」である。
ここにはカラヴァッジョの初期作品2点を含む3点が揃っている。訪問当日は他に訪れる人も少なく、また観賞用の椅子も多く用意され、ゆっくり過ごすことができた。学芸員の対応も良かった。
学芸員によると、右側の「洗礼者ヨハネ」は、カピトリーナ絵画館にある作品の本人によるコピーとのことだ。
ここには他にも、フィリッポ・リッピ、ベラスケス、ラファエッロ、ティツィアーノなど大御所の作品が、何気なく展示されているので、それらも合わせてゆっくり鑑賞したい。宮殿に併設されたカフェも洗練されて心地よい。音声ガイドは入場料に含まれている。(ただし日本語音声はナシ)
■2:バルベリーニ宮国立古典美術館
ナボーナ広場から徒歩25分。クイナーレの丘を息を切らせながら登ると、バロックを代表する建物バルベリーニ宮に到着する。ここにある国立古典美術館にカラヴァッジョの作品は3点あるが、訪れた時は「瞑想する聖フランチェスコ」が出張中だった。
他にも、ラファエッロの傑作「フォルナリーナ」など、ルネッサンスからバロックまで幅広い作品を揃えていて、長くいても飽きることのない美術館である。
■3:コルシーニ宮国立古典美術館
ナボーナ広場から徒歩約14分。テヴェレ川を渡ったトラステヴェレ側に、コルシーニ宮殿がある。ここにも国立の古典美術館があり、カラヴァッジョの作品がある。残念ながら「洗礼者ヨハネ」は出張中だったが、ルーベンスなどの名画も多数展示されており、静寂の中でじっくり楽しめた。
コルシーニ宮から通りを挟んだ向かい側には、ラファエッロの壁画のあるファルネジーナキージ荘がある。ここの窓からの景色がすこぶる美しかった。
近くには、ラファエッロの恋人・フォルナリーナが住んでいたと言われる家もあった。
■4:カピトリーナ美術館
ナボーナ広場から徒歩約15分。古代彫刻の宝庫であるカピトリーナ美術館には、カラヴァッジョは2点あるが、「女占い師」は出張中だった。この美術館地下からのフォロロマーノの眺めが素晴らしかった。
■5:ボルゲーゼ美術館
ナボーナ広場から徒歩40分。6点ものカラヴァッジョ作品を一気に見られる美術館である。
ここの第8室が「カラヴァッジョの部屋」。ゆっくり鑑賞したいが、人が多く、椅子も無い。ボルゲーゼ美術館にはベルニーニの彫刻など傑作が多数あり、だいたいいつも混雑している。この時はインターネットで入館予約してから出かけたが、正解だった。
■6:ヴァチカン絵画館
ナボーナ広場から徒歩約29分。ヴァチカン博物館の一角にあり、カラヴァッジョの作品は1点ある。
博物館は入り口から異常な混みようで、システィーナ礼拝堂などは身動きもできないような状況だった。それと比べれば絵画館はひっそりとしており、ゆっくり作品を鑑賞できた。
ここもネットで入館予約してから来たが、博物館前の長蛇の列を見ると、予約しておいて良かったと感じる。もし現地でチケット売場に並ぶと、2時間は覚悟が必要とか。
以上、今回はカラヴァッジョが見られるローマの美術館を紹介した。実際に行ってみて、雰囲気、見やすさ、混雑度など、お勧め順に紹介してみたが、いかがだろうか。
ローマの真ん中に部屋を借りたおかげで、どの美術館にも歩いていけるのがうれしかった。気に入った美術館で一日ゆっくり過ごせるのも、部屋を借りて「暮らすように旅する」ことの魅力である。
(データは2016年7月時点のものです。)
写真・文/中川豊
1949年生まれ。メディア プロデューサー。出版社を定年退職後、現職。1971年インドへの旅以来、中近東、アフリカ、南米など約60カ国を旅する。近年は仏、伊、布哇を中心に「暮らしているかのような旅」を続ける。
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