数において劣勢の織田信長(演・染谷将太)は、今川方にいる松平元康を取り込むべく、元康の伯父・水野信元と母・於大の説得工作を試みる。

数において劣勢の織田信長(演・染谷将太)は、今川方にいる松平元康を取り込むべく、元康の伯父・水野信元と母・於大の説得工作を試みる。

27歳の織田信長に人生の岐路が訪れた。大国駿河の領主・今川義元が本腰を入れて尾張攻略に乗り込んで来たのである。勝ち目のない戦に信長はどう挑むのか? 

* * *

ライターI(以下I):いよいよ信長(演・染谷将太)のターニングポイントが近づいてきました。

編集者A(以下A):〈よいか、もはや議は尽くした。打つべき手も打った。大高城、鳴海城、これらの城を足がかりに一気に尾張へ攻めこむべきと思うがどうじゃ?〉――。今川義元(演・片岡愛之助)の決意は並々ならぬものがあります。

I:〈尾張を落とせば三河、遠江と合わせ、今川家は日の本屈指の大大名となられましょう〉という台詞も飛び出しました。

A:ひと昔前は、今川義元が上洛して天下を目指していたといわれていましたが、近年では、尾張の大高城や鳴海城を押さえるための出陣だったという説が浸透しています。『麒麟がくる』では、織田と今川の小競り合いについて、村木砦の戦いを描くなどしっかりフォローしていますからわかりやすいですね。

I:キーマンとして、松平元康(演・風間俊介)の登場です。

A:義元がえらく元康を推している台詞がありました。〈元康を大事に思って元服にも手を貸し、三河岡崎城主の子であったことに配慮し、今日まで育ててきた。先の初陣もわしの命を受け見事に戦こうてみせた。三河武士の頭領にふさわしき器とわしは見ておる〉――。

I:織田信秀の高橋克典さん、斎藤道三の本木雅弘さん、明智光安の西村まさ彦さん、そして片岡愛之助さんの今川義元。本当に脇を固める配役陣の演技がすごすぎて……。

A:それが大河ドラマの醍醐味ですよね。

I:個人的には義元が猫を抱いていたのがツボでした。さて、脇役陣もすごいのですが、今週も〈女軍師・帰蝶〉の活躍がみられました。

A:まさか菊丸(演・岡村隆史)をも巻き込む形で桶狭間にかかわってくるとは思いませんでしたが、なんだかスリリングな展開になってきましたね。

I:元康の祖母だという源応尼(演・真野響子)が登場しました。元康の母・於大の方の母にあたる人になんですね。

A:1983年の大河ドラマ『徳川家康』では、八千草薫さんが演じていました。今川家にあって幼少時の家康の教育係的な存在だった人ですね。

I:そうした面々に加えて、元康の伯父・水野信元と母・於大の方を動かして元康を今川方から織田方に寝返りさせようというのですから、帰蝶の女軍師ぶりも様になってきました。さて、今回は菊丸が、於大の方からの手紙を携えて、元康のもとを訪ねるなど、間者らしい働きをしていました。

A:〈今川をお討ちください〉と元康をそそのかしていましたね。戦国時代はこういう細かい情報戦略が重要だったのでしょう。信長側では梁田政綱が登場しています。梁田政綱も桶狭間合戦にあたって、義元の動向を信長に注進したということで、信長から称賛されたという説がありますね。

I:信長がいかに情報に価値を見出していたかを示す際に紹介されるエピソードですね。

A:本当だったら面白いですが、本当かどうかはまだわからないみたいですね。

猫を抱く東海最強の武将、今川義元(演・片岡愛之助)。

猫を抱く東海最強の武将、今川義元(演・片岡愛之助)。

朝倉義景の描写についての一考察

I:さて、越前にいる光秀(演・長谷川博己)がやきもきしている様子でした。

A:今川と織田が一触即発という情勢の中で、子供たちに学問を教えている現状にイライラしていたのかもしれません。 朝倉義景(演・ユースケ・サンタマリア)に対して怒りを向ける場面がありました。

I:光秀にしたら、いてもたってもいられないという心境だったと思います。

A:光秀の気持ちもわかりますが、義景からしてみたら、長年小競り合いを続けて来た織田・今川の争いの延長線上としか感じていなかったのではないでしょうか。公家と蹴鞠に興じてはいましたが、義景は美濃の土岐や尾張の斯波ほど軟弱ではないですよ。

I:第18話での朝倉義景と初対面の際には、〈金をくれてやろうぞ〉と持ちかけられたのに光秀は断りました。融通がきかないといえばきかない。まじめといえばまじめなわけです。そこが少し気になっています。

A:そういえば、第2話で道三から侍大将の首をふたつ獲れといわれた時にも、律儀にもきちんと首をふたつぶら下げながら戦っていました。

I:そういう生真面目な性格が、奔放な信長と最後の最後で決裂するきっかけになったのではないでしょうか。なんかそう思えてきました。

A:かと思えば、越前から尾張を目指して出奔してしまう。光秀の眼前でどんな桶狭間の合戦が展開されるのでしょうか。染谷将太の信長と片岡愛之助の今川義元。どんな演出で展開されるのか、注目したいと思います。

織田対今川の戦いを目前に、遠く越前で地団太を踏む光秀(演・長谷川博己)。

織田対今川の戦いを目前に、遠く越前で地団太を踏む光秀(演・長谷川博己)。

●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。

●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』も好評発売中。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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