時代劇で描かれる鍛冶屋が真っ赤に溶けた金属を金槌で打つシーンをよく目にするが、これは鍛造という作業。打つことで、金属の中の空隙をつぶして結晶を微細化し、分子の配列を整えるのだ。丈夫な金属を作り上げるための大事な工程である。こうした鍛造の作業は、時間と手間がかかるが、新潟県三条の地で150年続く刃物の老舗・外山刃物では、機械と職人の手作業を組み合わせながら鍛造を行ない、鉄やステンレスを使った剪定鋏などの刃物作りに精を出している。本品はそんな同社が開発した秀品だ。
「年を取って腰が痛い、体が硬くなって前屈がつらい。そんな人のために全長21cmの足専用爪切り鋏を作りました」と、代表取締役の外山秀久氏。
作り方は、2本の太い金属棒から始まり、全80工程を経て鋏へと形成される。特に職人技が光るのは、切れ味のよしあしを決める「裏研ぎ」と「水砥ぎ」だ。刃の内側を特殊な機械で研ぎ、刃の重なりを一点にする「裏研ぎ」。そして、機械を使わず職人が手研ぎで行なう「水砥ぎ」で鋭利な刃を仕上げるのだ。最終段階では、動きがスムーズか、一丁一丁職人の感触を頼りに「合い刃どり」という調整が行なわれる。また、カーブした刃先は指の形にフィットして柄が長くても扱いやすい。
【今日の逸品】
秀久作・足用つめ切り鋏
外山刃物
8,690円(消費税8%込み)