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文/鈴木拓也

制度を活用しチームで取り組むことで、介護と仕事は両立できる|『これで安心!働きながら介護する』

超高齢化社会を迎えた日本では、親の介護のために離職する人の数は年間約10万人。そのなかには、自身が健康を害してしまったり、経済的に立ち行かなくなってしまう人が少なくないという。

共倒れになりかねない状況を防ぐには、介護が必要となったときに、「今の仕事と両立しながらできないか?」という視点を持つことだろう。

制度面でも整備が進み、仕事と介護を両立させるハードルは以前よりも下がっている。必要な情報を知り、活用できる制度や相談できる機関を積極利用することで、不必要に辛い境遇に疲れ果てることは避けられる。
書籍『これで安心!働きながら介護する』(川上由里子著/技術評論社)は、そうした仕事・介護両立の道しるべとなる情報が詰まったガイドブックだ。「いざ介護」となったときに有用な1冊として、どのような事柄が書かれているか、その一部を紹介したい。

■知っておきたい改正育児・介護休業法

2017年に改正された育児・介護休業法には、「仕事と介護の両立支援制度」(介護休業制度)が定められており、種々のサポートが受けられる。

本書の著者でケアコンサルタントの川上由里子さんは、「職場の制度も組み合わせることで、『仕事を続けながら介護を行ってみよう』という意識も生まれます」と、その中身をあらかじめ把握することをすすめる。
介護休業制度には、例として次のようなサポートがあるという。

・介護休業:要介護状態にある対象家族1人につき、通算93日まで連続して取得できる。3回を上限として分割取得が可能。原則として利用2週間前までに書面で事業主に申し出る。ハローワークで手続きすることで、休業開始前の賃金の67%の支給を受けられる。

・介護休暇:要介護状態にある対象家族1人につき、1年度に5日まで、2人以上の場合は1年度に10日まで、1日単位、または半日単位で取得できる(基本的に無給)。

・時間外労働・深夜業の制限:労働者が請求した場合、1か月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働、および深夜業をさせてはいけない。請求により残業の免除が受けられる。
このほか、短時間勤務や転勤の配慮、不利的取り扱いの禁止が定められている。

介護休業は最長3か月と、決して長期にわたるものではない点に留意したい。川上さんは、あくまでもこの制度は「介護初動の準備期間」として考えるべきものと述べている。

■介護はチームで支える

「親の介護」は、ひとり寝る間も惜しんで、つきっきりで世話をするような印象があるかもしれないが、実は「チームで支える意識」が重要だという。

川上さんは、「家族のみならずケアマネジャーや介護・医療の専門職と連携しながらチームで支えることをイメージしてください」とアドバイスしている。

ここで大事になってくるのが、介護と働き方をシミュレーションし、何ができて何ができないか、チームで相談しながら明確にすることだという。

そのためにやっておくべきことの1つに、「両立プランシート」の作成がある。これは担当するケアマネジャーが作成するケアプラン(週間サービス計画表)をもとに、活用する公的制度・職場の制度を書き込んだもの。以下の例のように、チームの一員として自分のできる役割や割ける時間・費用が見えてくる。

【例】
・週2回、始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げを活用し、朝食を一緒に摂りながらデイサービスの準備送迎を手伝う。
・月1回、半日単位の介護休暇を使い、病院の受診送迎の付き添いを行う。
・2週間に1回、介護理由での休暇を活用し、介護者である父のリフレッシュのため、留守番見守りを担当。父の傾聴も心がける。(本書138pより)

くわえて、業務上で周囲に配慮したいこと、してほしいことなども確認。なんでも1人でやろうと思わず、勤務先の人事担当者も関わってのプラン作りも考慮に入れる。

■頑張りすぎず適度な距離を保つ

多くの場合、介護は「長期戦」になる。川上さんは、「完璧を目指して頑張りすぎないように」し、仕事への取組み、家族や周囲の人たちとの向き合い方は、60%ぐらいの力の入れ具合で続けるよう諭す。

また、意外と大事なのが「適度な距離を保つ」。過剰な介護は依存関係をもたらし、自立を損なうリスクをはらんでいる。一方で、地域・職場や介護者の会を通じて同じ境遇の人たちとの仲間づくりも意識する。介護の当初は、やるべきこと、注意すべき点がいっぱいあって大変だが、仲間の存在は励みなる。

そして、生活を介護一色にしないためにも、施設でのショートステイ、介護保険施設への入所も検討し、自分の趣味や息抜きの時間を犠牲にしないようにする。言うまでもなく、介護する人が心身の健康を損なっては、できることもできなくなるからだ。

*  *  *

著者の川上さん自身も、親の介護を経験してきた1人。だが、本書は個人的な体験談よりも、制度の利用方法や住環境の整備など、客観性に即した情報に重きを置いた内容となっており、汎用性は非常に高い。特に介護を始めたばかりの人には、手放せない1冊となるだろう。

【今日の介護に役立つ1冊】
『これで安心!働きながら介護する』

https://gihyo.jp/book/2019/978-4-297-10829-8

(川上由里子著、本体1,480円+税、技術評論社)

『これで安心!働きながら介護する』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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